5
ー/ー
「いいんですか、僕なんかで……」
俺の目の前で正座してるコタローが、心配そうな顔で聞いてきた。
「それに……」やっぱり俺のお願い、聞いてくれないのかなあ、なんてこっちも不安になるし。
「強くなりたい。って単純な理由で僕は教えたくないんです」
分かってるさ、この手のはゲームとかで散々聞いた。武道ってのは己を強くするのが目的じゃないんでしょ。
だから俺もうなづいた。コタローにはウソついちゃうことになるかもしれないけど。
「ならば、僕の得意としている神速歩法とか、どうでしょうか?」
「しんそくほほう?」もちろん初めて聞く言葉だ。
コタローはクスッと笑って「百聞は一見にしかず。実際にお見せしましょう」だって。
そーいや、初めて会った時は全然気づかなかったけど、コタローのやつ、やっぱり履物持ってなかった。つまりずっと裸足のまま。
そう、家の中じゃなくて、外でもはだしで歩いてるの。
普通ならこの手の和装って草履とか下駄とか履いてそうなのにね、初めて会った場所が暗かったから、最初は全然分からなくって。
で、血マメ潰れてたのが分からなくて最初どうしたんだろって思ったんだけど、うん、足元見たら土ぼこりまみれのはだしの足だったから、思わず俺も驚いちゃって「もしかして、ずっとはだしで歩いてたの?」って聞いちゃった。
コタローもきょとんとした目で「変ですか……?」って。そりゃ当たり前だろーが。
まあとにかく、家に姉貴がいない時は泊まってもいいってことで契約成立。俺も寂しくないしね。
けど……
よくよく考えてみたら、ワーウルフの時の俺ってめっちゃ足速いぜ?
だから神速習うっていっても、現時点でコタローにも勝てるんじゃないかな?
「甘い考えですよそれは」
あいつ、俺の心を読んでるかのように図星でぴしゃりと返してきた。
なんでも、俺の場合は「走る」でもってコタローが教えてくれるのは「歩法」。つまりは神のような速さで歩く……なんかおかしくね?
ですよね、そう思いますよね。ってコタローは早速修行しましょうと来た。
場所はアパート裏のちょっとした広場。もちろん今は夜だ。っていうか人気なんか全然無いからまさに打ってつけの場所。
あいつは背負っているボロっちい布袋から木刀を取り出した。この袋にはちょっとした生活用品とか入れてるって話だけど、プライバシーもあるからのぞいたことはない。
けど何度も言うように、コタローってすげえボロい風体なんだよな。いわゆる和装のサムライっていうか剣士な格好してるんだけど……
濃いめの緑色の上着は結構汚れててあちこち糸がほつれてる。
袴は下の部分が擦り切れててボロボロだし……まあ個人的にはワイルドで好きなんだけどね。
まだ血マメが潰れたケガは治ってないから、左足の裏には包帯を巻いたまま。
風呂は入ったけど、服だけは絶対洗濯しないでって何度も言われた、つーか拒まれた。下着のふんどしも一張羅だっていうし。いつか俺の服でも貸してあげようかな、無理かな?
コタローはぺたぺたと俺との間合いを広げた。数メートルってとこかな。
「では」ニコッと微笑んだその直後。
……いや、刹那って言ったほうが合ってるかも!
コタローのやつ、俺の首元に木刀の刃先をぴたりとつけていたんだ。
こんな感じです。って、笑顔はそのまんま。
ちょっと待てよオイ! ほんの一瞬だぞ!?
あいつはまるで瞬間移動でもしたかのように、一瞬で目の前にいたんだ。
「走ることも確かに重要ですが、僕の場合はこの一瞬で間合いを詰めることに重きを置いてるんです」
「お、俺にも習得できる……かな?」
「タケル次第です」
シンプルな答えだった。けど頑張らなきゃな。
いや、頑張るったって……なんのために?
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
「いいんですか、僕なんかで……」
俺の目の前で正座してるコタローが、心配そうな顔で聞いてきた。
「それに……」やっぱり俺のお願い、聞いてくれないのかなあ、なんてこっちも不安になるし。
「強くなりたい。って単純な理由で僕は教えたくないんです」
分かってるさ、この手のはゲームとかで散々聞いた。武道ってのは己を強くするのが目的じゃないんでしょ。
だから俺もうなづいた。コタローにはウソついちゃうことになるかもしれないけど。
「ならば、僕の得意としている神速歩法とか、どうでしょうか?」
「しんそくほほう?」もちろん初めて聞く言葉だ。
コタローはクスッと笑って「百聞は一見にしかず。実際にお見せしましょう」だって。
そーいや、初めて会った時は全然気づかなかったけど、コタローのやつ、やっぱり履物持ってなかった。つまりずっと裸足のまま。
そう、家の中じゃなくて、外でもはだしで歩いてるの。
普通ならこの手の和装って草履とか下駄とか履いてそうなのにね、初めて会った場所が暗かったから、最初は全然分からなくって。
で、血マメ潰れてたのが分からなくて最初どうしたんだろって思ったんだけど、うん、足元見たら土ぼこりまみれのはだしの足だったから、思わず俺も驚いちゃって「もしかして、ずっとはだしで歩いてたの?」って聞いちゃった。
コタローもきょとんとした目で「変ですか……?」って。そりゃ当たり前だろーが。
まあとにかく、家に姉貴がいない時は泊まってもいいってことで契約成立。俺も寂しくないしね。
けど……
よくよく考えてみたら、ワーウルフの時の俺ってめっちゃ足速いぜ?
だから神速習うっていっても、現時点でコタローにも勝てるんじゃないかな?
「甘い考えですよそれは」
あいつ、俺の心を読んでるかのように図星でぴしゃりと返してきた。
なんでも、俺の場合は「走る」でもってコタローが教えてくれるのは「歩法」。つまりは神のような速さで歩く……なんかおかしくね?
ですよね、そう思いますよね。ってコタローは早速修行しましょうと来た。
場所はアパート裏のちょっとした広場。もちろん今は夜だ。っていうか人気なんか全然無いからまさに打ってつけの場所。
あいつは背負っているボロっちい布袋から木刀を取り出した。この袋にはちょっとした生活用品とか入れてるって話だけど、プライバシーもあるからのぞいたことはない。
けど何度も言うように、コタローってすげえボロい風体なんだよな。いわゆる和装のサムライっていうか剣士な格好してるんだけど……
濃いめの緑色の上着は結構汚れててあちこち糸がほつれてる。
袴は下の部分が擦り切れててボロボロだし……まあ個人的にはワイルドで好きなんだけどね。
まだ血マメが潰れたケガは治ってないから、左足の裏には包帯を巻いたまま。
風呂は入ったけど、服だけは絶対洗濯しないでって何度も言われた、つーか拒まれた。下着のふんどしも一張羅だっていうし。いつか俺の服でも貸してあげようかな、無理かな?
コタローはぺたぺたと俺との間合いを広げた。数メートルってとこかな。
「では」ニコッと微笑んだその直後。
……いや、刹那って言ったほうが合ってるかも!
コタローのやつ、俺の首元に木刀の刃先をぴたりとつけていたんだ。
こんな感じです。って、笑顔はそのまんま。
ちょっと待てよオイ! ほんの一瞬だぞ!?
あいつはまるで瞬間移動でもしたかのように、一瞬で目の前にいたんだ。
「走ることも確かに重要ですが、僕の場合はこの一瞬で間合いを詰めることに重きを置いてるんです」
「お、俺にも習得できる……かな?」
「タケル次第です」
シンプルな答えだった。けど頑張らなきゃな。
いや、頑張るったって……なんのために?