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もしかして……彼氏?

ー/ー



休日、雲一つない快晴。こんな素晴らしい日に、遊びに行かないなんてありえない。
そんな日に、私は


「天兄、下手。私がやるから見てて」


「はぁ?これはアームが悪いだけだろ」


兄とゲームセンターに来ている。


最近家の近くにショッピングモールができ、その中にゲームセンターがあると友達から聞いたので、今日は来た。大きめのショッピングモールだから、ゲームセンターもそこそこ広い。色んなバリエーションの景品があって、好みが合いにくい兄妹でも難なく行けている。
今取ろうとしているのは、唯一家族全員の好みが同じであるレッサーパンダの巨大ぬいぐるみ。首にリボンが結ばれていて、なんとも可愛らしい。巨大なぬいぐるみを目の前に、命をかけているかのように葛藤する私たちは、周りからどう見えているだろう。


「あぁクッソ。折角ボーナスもらったのに無くなりそう」


「だから私がやるって。一発で取ってあげる」


「ほんとかー?」


100円を入れ、レバーを動かす。ちょんちょんと微調整しながら「ここだっ」と降下ボタンを押した。
テロテロテロと音楽が鳴りながら下に伸びるアームをジッと見つめる。アームはレッサーパンダの頭を掴み、上に持ち上げた。


「おおっ来たか⁉」


するとすぐに裏切られ、アームは上がる途中でレッサーパンダを落とした。
落ちた拍子に跳ねたそれは、少しだけ出口に近く。


「あ゙ー無理だ―」


「一発で取るっつったじゃん!!」


「ごめんそれは舐めてた!」


きゅるっとした目が、何とも「取って…?」とでも言っているかのように見え、また私たちは葛藤を始めた。
十数分レッサーパンダと睨みあっている。


「アーム弱いしレッサーパンダ重いし絶対取れる気がしない」


「いやちょっとずつ動かして行けばなんとか……」


「白鳥何してんの」


ふと声が聞こえ、横に目をやる。


「…内海くんッ⁈」


プライベートでは隣の家でも中々会わないからか、すごく動揺してつい兄の後ろに隠れてしまった。


「あのもしかして…彼氏さん……?」


「違う!天翔は私の兄!彼氏じゃない!神に誓って!!」


咄嗟に誤解を解きたくて、つい大きめな声で言ってしまった。


言ってから後悔……


私が手で口を塞ぐように覆っていると、内海くんと目が合った。
内海くんが何か言いかけた瞬間、兄が手を叩く。


「ん、内海ってお隣さんか!」


兄の頭の上にピコーンと電球が光ったように言った。
その後こちらを見て一瞬ニヤリと変に口角を上げ、すぐに内海くんの方を向く。


「丁度良いところに!俺は白鳥天翔。内海…なんて言うのか?」


「晴怜です」


「晴怜、これよかったら取ってくれないか?」


出会ったばかりで呼び捨て……。


内海くんはレッサーパンダのぬいぐるみを見つめ、少し間があってから「やります」と言って100円入れた。
慣れているようなレバーを動かす手はまるでプロみたい。微調整無しですいすいと動いていたアームがピタっと止まり、内海くんはボタンを押した。開いたアームはぬいぐるみのリボンの隙間に入る。そのまま頭を掴み、落ちるかと思いきやリボンが落ちるのを阻止しているようで、アームはぬいぐるみを掴んだまま出口の上まで来て、開いた瞬間ぬいぐるみを出口に落とした。


「と、取った……」


兄は驚きすぎて言葉が出ない様子。


「内海くんすごいね!一発で取っちゃった」


「たまたまアームが強くなっただけだよ。はい」


そう言いながらレッサーパンダを抱え、こちらにレッサーパンダを差し出す。


「えっいいの?内海くんのお金だけど……」


「欲しかったんでしょ?貰ってよ」


眩しくてかっこいい笑顔に思わず失神してしまいそうだ。
ぬいぐるみを抱いて、さっきまで内海くんが持っていたと考えたら口角が上がってしまう。どう戻そうとしても戻れそうにない。
こんなに嬉しいことは今までになかったからかな。


「内海くんからの最初のプレゼント……」


誰にも聞こえないぐらいの声で、そう呟いた。
声に出てしまうくらい、嬉しいんだ。



「晴怜」


ふと兄が声を出した。


「な、なんですか?」


「連絡先、交換しないか??」








「天兄なんで連絡交換したの?」


太陽が少しずつ地平線に近づいて、赤みが増した空を眺めながら訊いた。


「んーチョットね、男の感が働いたっていうかー」


つまり、兄に私が内海くんの事が好きってバレたってこと……?


「家隣でしょ?運命じゃん」


私の肩をツンツンと突きながらからかってくる兄に一発蹴りを入れた。


「い゙ッッッでェッ」


「天兄が悪い」


「でもいいじゃんか…アイツに藍萌の事好きか訊けるぞ?」


「そういう反則はしたくない」


「頼もしいなぁ……」


抱えたレッサーパンダを一回撫でる。ふわふわで柔らかい。安心できるような気持ちよさ。


「今日からそれと寝んのか?」


「……うん」


「そぉう。甘酸っぱい青春できていいねぇ」


その言葉で、兄の方を見た。


「……まだ、気にしてる?」


兄は両手を絡ませて伸びをする。一息吐いて、ぬいぐるみを見つめた。


「気にしてるか……そうだな。もう普通に恋愛はできないや」


寂しげのある兄の表情に、なんて声をかければいいのかわからなくなった。そんな私を気遣ったのか、兄はまた笑みを戻して私の肩に手を乗せた。


「だから俺は、愛する妹の恋は応援するよ。女の中で唯一信頼できるヤツだからな!」


「……お母さんは?」


「母さんは…まあほどほどに」


「お母さんかわいそ」


「あ、おい絶対母さんに言うんじゃないぞ。また鬼が出る」


「どうしよっかな~」


「クッじゃあ俺は晴怜に藍萌が毎日ぬいぐるみと一緒に寝てるっていつか言っちゃおうかな~~」


「それはダメ!!」


兄の笑みは、心から笑えている笑みなのだろうか。


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休日、雲一つない快晴。こんな素晴らしい日に、遊びに行かないなんてありえない。
そんな日に、私は
「天兄、下手。私がやるから見てて」
「はぁ?これはアームが悪いだけだろ」
兄とゲームセンターに来ている。
最近家の近くにショッピングモールができ、その中にゲームセンターがあると友達から聞いたので、今日は来た。大きめのショッピングモールだから、ゲームセンターもそこそこ広い。色んなバリエーションの景品があって、好みが合いにくい兄妹でも難なく行けている。
今取ろうとしているのは、唯一家族全員の好みが同じであるレッサーパンダの巨大ぬいぐるみ。首にリボンが結ばれていて、なんとも可愛らしい。巨大なぬいぐるみを目の前に、命をかけているかのように葛藤する私たちは、周りからどう見えているだろう。
「あぁクッソ。折角ボーナスもらったのに無くなりそう」
「だから私がやるって。一発で取ってあげる」
「ほんとかー?」
100円を入れ、レバーを動かす。ちょんちょんと微調整しながら「ここだっ」と降下ボタンを押した。
テロテロテロと音楽が鳴りながら下に伸びるアームをジッと見つめる。アームはレッサーパンダの頭を掴み、上に持ち上げた。
「おおっ来たか⁉」
するとすぐに裏切られ、アームは上がる途中でレッサーパンダを落とした。
落ちた拍子に跳ねたそれは、少しだけ出口に近く。
「あ゙ー無理だ―」
「一発で取るっつったじゃん!!」
「ごめんそれは舐めてた!」
きゅるっとした目が、何とも「取って…?」とでも言っているかのように見え、また私たちは葛藤を始めた。
十数分レッサーパンダと睨みあっている。
「アーム弱いしレッサーパンダ重いし絶対取れる気がしない」
「いやちょっとずつ動かして行けばなんとか……」
「白鳥何してんの」
ふと声が聞こえ、横に目をやる。
「…内海くんッ⁈」
プライベートでは隣の家でも中々会わないからか、すごく動揺してつい兄の後ろに隠れてしまった。
「あのもしかして…彼氏さん……?」
「違う!天翔は私の兄!彼氏じゃない!神に誓って!!」
咄嗟に誤解を解きたくて、つい大きめな声で言ってしまった。
言ってから後悔……
私が手で口を塞ぐように覆っていると、内海くんと目が合った。
内海くんが何か言いかけた瞬間、兄が手を叩く。
「ん、内海ってお隣さんか!」
兄の頭の上にピコーンと電球が光ったように言った。
その後こちらを見て一瞬ニヤリと変に口角を上げ、すぐに内海くんの方を向く。
「丁度良いところに!俺は白鳥天翔。内海…なんて言うのか?」
「晴怜です」
「晴怜、これよかったら取ってくれないか?」
出会ったばかりで呼び捨て……。
内海くんはレッサーパンダのぬいぐるみを見つめ、少し間があってから「やります」と言って100円入れた。
慣れているようなレバーを動かす手はまるでプロみたい。微調整無しですいすいと動いていたアームがピタっと止まり、内海くんはボタンを押した。開いたアームはぬいぐるみのリボンの隙間に入る。そのまま頭を掴み、落ちるかと思いきやリボンが落ちるのを阻止しているようで、アームはぬいぐるみを掴んだまま出口の上まで来て、開いた瞬間ぬいぐるみを出口に落とした。
「と、取った……」
兄は驚きすぎて言葉が出ない様子。
「内海くんすごいね!一発で取っちゃった」
「たまたまアームが強くなっただけだよ。はい」
そう言いながらレッサーパンダを抱え、こちらにレッサーパンダを差し出す。
「えっいいの?内海くんのお金だけど……」
「欲しかったんでしょ?貰ってよ」
眩しくてかっこいい笑顔に思わず失神してしまいそうだ。
ぬいぐるみを抱いて、さっきまで内海くんが持っていたと考えたら口角が上がってしまう。どう戻そうとしても戻れそうにない。
こんなに嬉しいことは今までになかったからかな。
「内海くんからの最初のプレゼント……」
誰にも聞こえないぐらいの声で、そう呟いた。
声に出てしまうくらい、嬉しいんだ。
「晴怜」
ふと兄が声を出した。
「な、なんですか?」
「連絡先、交換しないか??」
「天兄なんで連絡交換したの?」
太陽が少しずつ地平線に近づいて、赤みが増した空を眺めながら訊いた。
「んーチョットね、男の感が働いたっていうかー」
つまり、兄に私が内海くんの事が好きってバレたってこと……?
「家隣でしょ?運命じゃん」
私の肩をツンツンと突きながらからかってくる兄に一発蹴りを入れた。
「い゙ッッッでェッ」
「天兄が悪い」
「でもいいじゃんか…アイツに藍萌の事好きか訊けるぞ?」
「そういう反則はしたくない」
「頼もしいなぁ……」
抱えたレッサーパンダを一回撫でる。ふわふわで柔らかい。安心できるような気持ちよさ。
「今日からそれと寝んのか?」
「……うん」
「そぉう。甘酸っぱい青春できていいねぇ」
その言葉で、兄の方を見た。
「……まだ、気にしてる?」
兄は両手を絡ませて伸びをする。一息吐いて、ぬいぐるみを見つめた。
「気にしてるか……そうだな。もう普通に恋愛はできないや」
寂しげのある兄の表情に、なんて声をかければいいのかわからなくなった。そんな私を気遣ったのか、兄はまた笑みを戻して私の肩に手を乗せた。
「だから俺は、愛する妹の恋は応援するよ。女の中で唯一信頼できるヤツだからな!」
「……お母さんは?」
「母さんは…まあほどほどに」
「お母さんかわいそ」
「あ、おい絶対母さんに言うんじゃないぞ。また鬼が出る」
「どうしよっかな~」
「クッじゃあ俺は晴怜に藍萌が毎日ぬいぐるみと一緒に寝てるっていつか言っちゃおうかな~~」
「それはダメ!!」
兄の笑みは、心から笑えている笑みなのだろうか。