風紀委員会の委員会室は一階の生徒会室の隣にある。
専用の部屋をもらえる委員会は少なく、その一つが風紀委員会だ。
しかも一番広い空き教室を割り当てられている。
「巡回当番が帰ってくるまであと四十分くらいかな」
スマホを確認して先輩は十人くらい座れそうな会議用テーブルのパイプ椅子を引いた。
俺と先輩の他には誰もいない。
「スズノも座って。あ、鈴乃屋君って呼んだほうがいい?」
「いや、どっちでも……」
俺は素直に座る気分にはなれなかった。
少し距離を取った位置に立ったまま、とりあえず、思いついた質問を口にする。
「な、なんで俺のこと――」
「知ってるかって?」
先輩は最後まで聞かずに言葉をかぶせてくる。このレスポンスの速さは、確かにショータっぽい。
「あのさ。風紀委員で巡回して、あたし何度もあの教室行ってるんだよ。下校時刻ですよー、帰ってくださいーって。でもスズノ、下向いたまんまゲームやりながら帰るから」
「あ、それでゲームのこと――」
「そーゆーこと。あたしも巡回開始時間ぎりぎりまでやってるからさ。けっこうあっさり、君のことはアカ|(アカウント名)と結び付いたよ。てか、なんのひねりもないんだもん。推理もへったくれもないね」
ケラケラと笑う先輩。
品のある笑い方じゃないけど、厭味のない、可愛い笑い方だと思った。
まあ、美少女だからってのが理由の大半な気がするけど。
なので、若干馬鹿にされた気分になりながらも、俺は会話を続けることにした。
荷物をテーブルに乗せて、先輩の隣に腰を下ろす。
「ひねる必要とか別にないでしょ。逆に、先輩はなんでショータなんですか?」
「あたし? あたしはね、ほら」
先輩は胸のポケットから生徒手帳を取り出すと、身分証明書の部分を開いて見せてくれた。
「吉荘珠湖……キショータマコ?」
「そーゆーこと。あたしもひねってるわけじゃないけど、男の子っぽいアカになるからカモフラージュになるんだよね」
「正直、ずっと男だと思ってました」
「多少は意識してたからね。それに最初はスズノのことを警戒してたってのもある。ネカマかもしれないって」
「な、なんで……」
「あれ、もしかして気が付いてない? スズノって女の子の名前っぽいじゃん。だから最初は好きなアイドルとかアニメキャラの名前から付けたって思ってたよ」
正直に言おう。
気が付いてなかった。
「ああ、その様子だと素で気が付いてなかったみたいだね」
「俺、レトロゲームとか好きで。ネームエントリーが三文字しかできないことがあるから、それで」
「ははあ、なるほどね。うん、じゃあまあ、お互いの事情と誤解は解けた。本題に入ってもいい?」
そうだった。
俺はこの人の話を聞くために連れてこられたんだった。