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私が1番ってこと?

ー/ー



「お前さえいなければ……お前にいくらのお金をかけたと思っているんだ。このクソガキが!」

私はそれを眺めることしか出来なかった。
母からの暴言も暴力も全て。

(助けて、チトヤ……。痛い、熱い、辛い。チトヤ……。)

やな夢を見た。
私の過去の夢だ。
 
監禁生活一日目……いや、二日目か。
 チトヤは朝早くに仕事へと出かけたらしい。
 マツリが起きたころにはもういなかった。
 記憶の限りでは、明け方までずっと何作かの映画を見ていた気もする。
 
(9時かぁ。)
 
 いつもならこんな時間まで寝ていられたことに喜ぶのだろうが今はそうもいかない。
 チトヤの用意した朝ご飯を食べながらテレビをつける。
 ニュースはやっているが、マツリのことは全く取り上げられていない。
 安心するような、自分の存在感のなさに悲しさを感じるようなそんな感覚がする。
 スマホはしっかりチトヤに取り上げられているため誰かに連絡することはできない。
 まぁ、連絡したところでどうなるかは想像できる。
 そもそも、チトヤのおかげでまともな友達はほとんどいない。
 残っているのは、ほとんど連絡を取り合わない女友達くらいだ。
 
 「……暇だなぁ。」
 
 何もする気が起きない。
 食事をしっかりとっただけでも誰か褒めてほしい。
 歩き回ってこれ以上チトヤの秘密を知りたくない。
まぁ、歩く気力も起きないのだが。

「ただいま、マツリ。待ってた?」
「チトヤ……帰ってくるの早くない?いつもならまだ……。」
「マツリに会いたくて帰ってきちゃった。」
「か、帰ってきちゃったじゃないわよ。なんでそこまでして……。」
「可愛いマツリのためだよ。マツリは俺のお姫様だからね。」
「な、何よ……それ。」

 マツリは言葉を失った。
 なぜ、チトヤはそこまでしてくれるのだろう。
 マツリ中心に考えて、マツリ中心の生活をして。
 それに対してマツリは全く答えていないのに。

「マツリ、何食べる?あ、お風呂入る?」
「お腹すいた……。」
「了解。ご飯作るね。」

 チトヤはそう言って台所に立った。
 ニコニコとしていてご機嫌だ。
 マツリもそれを見て少し安心した。
 もし暴力を振るわれたらどうしようか。
 人間らしい生活をおくらせて貰えなかったら……。
 マツリはそう考えていたりもした。
 
 しかし、見たところチトヤはそんなことをするつもりは1ミリもないらしい。
 同棲していた頃と同じ。
 なんなら同棲していた頃よりも良い暮らしをマツリはおくらせてもらっている気がした。
ある意味すごく幸せだ。

「ねぇ、チトヤ。すごく1日が暇で……その。」
「あー、ゲーム機使っていいよ。」
「うん。いや、その……。」

マツリは少し口篭りながら言う。
今日一日、自分は仕事をしていなくて、家事も何もやっていない。
それなのに暇だからゲームをやらせろなんて言える立場では無い気もする。

「……マツリ、遠慮しなくていいよ。ちゃんと要望は言ってもらわないと。」
「その……スマホを返して欲しくて……。」
「なんだ、そんなことか。いいよ。はい。」
「え?」
「スマホあった方がいいもんね。」

チトヤはそう言いながらマツリのスマホを手渡す。
傷一つ付いていない、チトヤに渡した時と全く変わらない姿だ。

「え、あ……いいの?」
「うん。マツリはもっと自由にのびのびしてて欲しいからね。」

そう言って笑うチトヤはすごく楽しそうだった。
本当にダメになってしまいそうだ。
いや、もうダメになっても良い気がする。
こんなに良くしてもらっているのだ。
きっと、ここにいれば仕事がどうとか失敗がどうとかノロマだとか言われない。
ゲームして遅く起きて、焦げてないご飯を食べて、美味しいご飯におやつタイムまで用意される。
こんな良い暮らしがほかにあるだろうか。

マツリはそんなことを考えて、少し笑った。


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「お前さえいなければ……お前にいくらのお金をかけたと思っているんだ。このクソガキが!」
私はそれを眺めることしか出来なかった。
母からの暴言も暴力も全て。
(助けて、チトヤ……。痛い、熱い、辛い。チトヤ……。)
やな夢を見た。
私の過去の夢だ。
監禁生活一日目……いや、二日目か。
 チトヤは朝早くに仕事へと出かけたらしい。
 マツリが起きたころにはもういなかった。
 記憶の限りでは、明け方までずっと何作かの映画を見ていた気もする。
(9時かぁ。)
 いつもならこんな時間まで寝ていられたことに喜ぶのだろうが今はそうもいかない。
 チトヤの用意した朝ご飯を食べながらテレビをつける。
 ニュースはやっているが、マツリのことは全く取り上げられていない。
 安心するような、自分の存在感のなさに悲しさを感じるようなそんな感覚がする。
 スマホはしっかりチトヤに取り上げられているため誰かに連絡することはできない。
 まぁ、連絡したところでどうなるかは想像できる。
 そもそも、チトヤのおかげでまともな友達はほとんどいない。
 残っているのは、ほとんど連絡を取り合わない女友達くらいだ。
 「……暇だなぁ。」
 何もする気が起きない。
 食事をしっかりとっただけでも誰か褒めてほしい。
 歩き回ってこれ以上チトヤの秘密を知りたくない。
まぁ、歩く気力も起きないのだが。
「ただいま、マツリ。待ってた?」
「チトヤ……帰ってくるの早くない?いつもならまだ……。」
「マツリに会いたくて帰ってきちゃった。」
「か、帰ってきちゃったじゃないわよ。なんでそこまでして……。」
「可愛いマツリのためだよ。マツリは俺のお姫様だからね。」
「な、何よ……それ。」
 マツリは言葉を失った。
 なぜ、チトヤはそこまでしてくれるのだろう。
 マツリ中心に考えて、マツリ中心の生活をして。
 それに対してマツリは全く答えていないのに。
「マツリ、何食べる?あ、お風呂入る?」
「お腹すいた……。」
「了解。ご飯作るね。」
 チトヤはそう言って台所に立った。
 ニコニコとしていてご機嫌だ。
 マツリもそれを見て少し安心した。
 もし暴力を振るわれたらどうしようか。
 人間らしい生活をおくらせて貰えなかったら……。
 マツリはそう考えていたりもした。
 しかし、見たところチトヤはそんなことをするつもりは1ミリもないらしい。
 同棲していた頃と同じ。
 なんなら同棲していた頃よりも良い暮らしをマツリはおくらせてもらっている気がした。
ある意味すごく幸せだ。
「ねぇ、チトヤ。すごく1日が暇で……その。」
「あー、ゲーム機使っていいよ。」
「うん。いや、その……。」
マツリは少し口篭りながら言う。
今日一日、自分は仕事をしていなくて、家事も何もやっていない。
それなのに暇だからゲームをやらせろなんて言える立場では無い気もする。
「……マツリ、遠慮しなくていいよ。ちゃんと要望は言ってもらわないと。」
「その……スマホを返して欲しくて……。」
「なんだ、そんなことか。いいよ。はい。」
「え?」
「スマホあった方がいいもんね。」
チトヤはそう言いながらマツリのスマホを手渡す。
傷一つ付いていない、チトヤに渡した時と全く変わらない姿だ。
「え、あ……いいの?」
「うん。マツリはもっと自由にのびのびしてて欲しいからね。」
そう言って笑うチトヤはすごく楽しそうだった。
本当にダメになってしまいそうだ。
いや、もうダメになっても良い気がする。
こんなに良くしてもらっているのだ。
きっと、ここにいれば仕事がどうとか失敗がどうとかノロマだとか言われない。
ゲームして遅く起きて、焦げてないご飯を食べて、美味しいご飯におやつタイムまで用意される。
こんな良い暮らしがほかにあるだろうか。
マツリはそんなことを考えて、少し笑った。