逃げよう
ー/ー 真夜中。
外は真っ暗だし、一言もしゃべらない私にずっと話しかけ続けていたチトヤは別の部屋で寝ている。
チトヤの寝息を聞いて音を立てないように気をつけながら立ち上がった。
逃げるなら今がチャンスだと言い切れる。
そう思った私は玄関へとゆっくり歩く。
少しでも音を立てればチトヤが起きてくるだろう。
シーンっとした静かな部屋を出て短い廊下を行った先が玄関だ。
あと少し。
もう少しで玄関のドアを開くことができる。
あと少しなのだが、マツリは驚き固まってしまった。
「……へ?」
玄関のすぐ横の部屋。
物置に使っているといわれていて、扉が閉まっていたこともあり、中を見たことはなかった。
チトヤもこの部屋の中は入らないでと言っていたし、掃除もさせてはくれなかった。
それくらい徹底して中を見せてはくれなかった部屋だ。
そんな部屋の扉が珍しく開いていた。
何の明かりなのか電気は付いていないのに、中がうっすらと見えるくらいには明るい。
本当にうっすらとしか見えない。
しかし、そんなことではさすがのマツリも動じない。
何にそんな驚いたのかというと……。
「何してんの?」
「ひっ……。」
今までとはまた一味違った恐怖が襲う。
汗が背中を埋め尽くす。
チトヤは私の様子に気づいたようですぐにあぁっと言う。
「すごいだろ?俺の宝部屋だ。」
「……た、から?」
中にあったのは壁中びっしりと貼られたマツリの写真。
隠し撮りされているような写真が多い。
中にはチトヤと撮ったであろう写真もあるが、マツリだけが切り抜きされて飾ってある。
そしてところどころにおいてある人形にはマツリの顔が張り付けられている。
マツリが失くしたと思ってたものも、取られたものもすべてここにあった。
パッと見ただけでも恐怖だ。
「そう、宝。集めるのも楽しかったなぁ。マツリの怖がってる顔もかわいかったし。」
「いつから?」
「マツリが俺を知るずっと前。」
「私、ずっと悩んでるって相談してたよね?ストーカーとか盗撮も盗難も。」
「うん。だから、俺以外は排除したでしょ?」
「排除って……確かにストーカー被害みたいなのは減ったけど、それと同時に友達減って困ったって話も……。」
「俺だけいればいいじゃんって言ったじゃん。」
マツリはさっと青ざめた。
きっと逃げても何を言ってもだめだと確信した。
それくらい、チトヤは狂っている。
恐怖感が消え、絶望し始めているとチトヤはにっこり笑いながら部屋のドアを閉めた。
ストーカー被害にはずっと困っていた。
次から次へと現れるストーカーにどうして良いのか分からなくて悩んでいたのだ。
警察も、探偵も最終的には誰がしているのかわからないと言っていたが、きっとチトヤが手回ししていたんだろう。
いつも付き添ってくれていて、住む場所の紹介などをしてくれたのもすべて罠だったんだ。
自分の目が届く場所にいさせるために。
引っ越ししても意味がなかったのもこれで説明がつく。
基本的にはチトヤの紹介で住んでいたし、なんなら彼氏だからと引っ越し先は教えていたのだから。
「ほら、ここは寒いよ。中に入って温まろう。」
「……うん。」
「ココアはいる?あったかいの入れてあげる。」
「……ありがとう。」
チトヤが毛布とココアを持ってくる。
もう、優しいんだか何だかわからない。
混乱と不安と絶望という言葉だけが頭の中に浮かぶ。
「何か見るか?」
「……。」
「目、覚めちまったしこの映画でも見るか。」
「……。」
何かを言うほどの気力はない。
マツリはすごく疲れてしまったのだ。
ただ逃げようとしただけだったのだが、知りたくない現実を知ったと同時に自分の今の現状が分からなくなった。
(これからどうなるんだろう……。)
チトヤは相変わらず黙っているマツリに話しかけ続ける。
何が楽しいんだろうか。
話しかけながらもひたすら映画を見る準備を進めていて、何を考えているのかわからない。
怒っている様子も気にしている様子も全くない。
まるでさっきまでの出来事はすべてなかったことのような、そんな感じだ。
「…………私は、これからどうなるの?」
「守るって言ったじゃん。だからもう出ていこうとしないで。」
「……わかった。」
外は真っ暗だし、一言もしゃべらない私にずっと話しかけ続けていたチトヤは別の部屋で寝ている。
チトヤの寝息を聞いて音を立てないように気をつけながら立ち上がった。
逃げるなら今がチャンスだと言い切れる。
そう思った私は玄関へとゆっくり歩く。
少しでも音を立てればチトヤが起きてくるだろう。
シーンっとした静かな部屋を出て短い廊下を行った先が玄関だ。
あと少し。
もう少しで玄関のドアを開くことができる。
あと少しなのだが、マツリは驚き固まってしまった。
「……へ?」
玄関のすぐ横の部屋。
物置に使っているといわれていて、扉が閉まっていたこともあり、中を見たことはなかった。
チトヤもこの部屋の中は入らないでと言っていたし、掃除もさせてはくれなかった。
それくらい徹底して中を見せてはくれなかった部屋だ。
そんな部屋の扉が珍しく開いていた。
何の明かりなのか電気は付いていないのに、中がうっすらと見えるくらいには明るい。
本当にうっすらとしか見えない。
しかし、そんなことではさすがのマツリも動じない。
何にそんな驚いたのかというと……。
「何してんの?」
「ひっ……。」
今までとはまた一味違った恐怖が襲う。
汗が背中を埋め尽くす。
チトヤは私の様子に気づいたようですぐにあぁっと言う。
「すごいだろ?俺の宝部屋だ。」
「……た、から?」
中にあったのは壁中びっしりと貼られたマツリの写真。
隠し撮りされているような写真が多い。
中にはチトヤと撮ったであろう写真もあるが、マツリだけが切り抜きされて飾ってある。
そしてところどころにおいてある人形にはマツリの顔が張り付けられている。
マツリが失くしたと思ってたものも、取られたものもすべてここにあった。
パッと見ただけでも恐怖だ。
「そう、宝。集めるのも楽しかったなぁ。マツリの怖がってる顔もかわいかったし。」
「いつから?」
「マツリが俺を知るずっと前。」
「私、ずっと悩んでるって相談してたよね?ストーカーとか盗撮も盗難も。」
「うん。だから、俺以外は排除したでしょ?」
「排除って……確かにストーカー被害みたいなのは減ったけど、それと同時に友達減って困ったって話も……。」
「俺だけいればいいじゃんって言ったじゃん。」
マツリはさっと青ざめた。
きっと逃げても何を言ってもだめだと確信した。
それくらい、チトヤは狂っている。
恐怖感が消え、絶望し始めているとチトヤはにっこり笑いながら部屋のドアを閉めた。
ストーカー被害にはずっと困っていた。
次から次へと現れるストーカーにどうして良いのか分からなくて悩んでいたのだ。
警察も、探偵も最終的には誰がしているのかわからないと言っていたが、きっとチトヤが手回ししていたんだろう。
いつも付き添ってくれていて、住む場所の紹介などをしてくれたのもすべて罠だったんだ。
自分の目が届く場所にいさせるために。
引っ越ししても意味がなかったのもこれで説明がつく。
基本的にはチトヤの紹介で住んでいたし、なんなら彼氏だからと引っ越し先は教えていたのだから。
「ほら、ここは寒いよ。中に入って温まろう。」
「……うん。」
「ココアはいる?あったかいの入れてあげる。」
「……ありがとう。」
チトヤが毛布とココアを持ってくる。
もう、優しいんだか何だかわからない。
混乱と不安と絶望という言葉だけが頭の中に浮かぶ。
「何か見るか?」
「……。」
「目、覚めちまったしこの映画でも見るか。」
「……。」
何かを言うほどの気力はない。
マツリはすごく疲れてしまったのだ。
ただ逃げようとしただけだったのだが、知りたくない現実を知ったと同時に自分の今の現状が分からなくなった。
(これからどうなるんだろう……。)
チトヤは相変わらず黙っているマツリに話しかけ続ける。
何が楽しいんだろうか。
話しかけながらもひたすら映画を見る準備を進めていて、何を考えているのかわからない。
怒っている様子も気にしている様子も全くない。
まるでさっきまでの出来事はすべてなかったことのような、そんな感じだ。
「…………私は、これからどうなるの?」
「守るって言ったじゃん。だからもう出ていこうとしないで。」
「……わかった。」
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