落花情あれど流水意なし5 The love is one-side.
ー/ー 鮭茶漬けと先輩の頼んだサワーが来るまで、少しの間が空く。
テーブルはすっかり片され、僕のウーロンハイと先輩が呑んでるハイボールのジョッキだけになった。
話題は受付嬢の話から一周回って、また紀和さんの話に戻ってくる。
痴話喧嘩がしたかったという、紀和さんの啖呵が気に入ったようだ。
「『私と寝てる間はあんたは私の男』、なんてセリフ言われてみたいっ。あーっ、カッケーその彼女」
その時髪の毛掴まれてましたけどね。何妄想してんだか。
「それより僕がホストに向いてるって、意味がわかりませんよ。先輩じゃあるまいし」
「あはは、それ良く言われる。ホストに悪いよな。こんなおっさんと一緒にされて」
カラカラ笑う失礼な先輩を睨んでたら、追加オーダーの茶漬けとレモンサワーが届いた。
先輩は待ってましたとサワーに口をつける。ひと息でジョッキ半分カラにして、よく飲めるなぁ。
「合鍵までもらってたんだぁ。あ、その鍵どうした?」
「ちゃんと戻していきましたよ。昨日確かめに行ったらマジで引っ越してたし」
「ぶっ」
ですよね〜。そりゃ吹きますよね。僕だって笑っちゃたから。
笑いながら咳き込む先輩におしぼりを渡す。
呼吸を整えたかと思ったら、また思い出したように大声で笑い出した。
好きなだけ笑ってください。
「あー、笑った。その彼女、マジ最高」
笑ったせいで喉が乾いたとでも言うように、持っていたグラスを一息で空ける。もう追加しないでくださいよ。
「で、どこに泣く要素があるんだ」
今聞きますか、それ。ていうか、それが聞きたかったのか。
「ありませんよ。女と分かれたくらいで泣きますかって」
あいつの顔を思い出したからなんて言えるわけがない。
「拾ったペットが懐かなくて捨てられただけですから」
どーせ、見た目と学歴だけのオトコですよ、ええ。
「でもさ、昼間の顔は、何というか、切なげでハラハラ涙こぼして」
大げさにシナを作って泣き真似までしてみせた。
シクシクなんて泣いてませんから。乙女か僕は。
泣いてるとこ見られてたってだけで十分赤面モノなのに。ハラハラってナンですかソレ。
「あんな顔で泣くほど惚れてる相手には勝てないってか。どーりでウチの女子になびかないわけか」
そう言うと、先輩は店員へ向かって指でバッテンを作る。
「惚れてるって、止めてくださいよ恥ずかしい」
「え、違うのか」
「違って……ません、けど」
やば、認めてしまった。
何年も会ってないのに。
むしろ気持ちが強くなってる気がする。
「片思いしてるんですよ、ずーっと」
「おやまぁ、かわいそうに」
と、さっきと打って変わって心配げに眉を寄せ聞いてきた。
「ずーっとって、いつから?」
ぜんぜん可哀想なんて思っちゃいないの、丸わかりですけどね。
「今日も食ったなぁ、日向は。それにしてもそれだけ米食ってるのに太らないよな」
「若いんで、代謝が良いんですよ。先輩こそ、お酒を主食ですかってくらい飲みますね」
その内年相応に腹が出て、女の子にも相手されなくなればいい。
「主食か、巧いこと言うね。ま、アルコール代謝が高いのは確かかな。お陰で二日酔い知らず。オレの内蔵高スペックなんだよ」
店に来た時と変わらない顔でそう言うと、どれどれと伝票見て諭吉を一枚僕に渡し、先に座敷から出て身なりを整える。
「ションベン行ってくる」
どーぞごゆっくり。あれだけ飲めばそりゃ出るもんも出るでしょ。
アバウトだが食事分を僕が、飲み代は先輩が支払うことになっている。とは言え、大半は先輩が出してくれてる。
店を出てそのまま改札まで歩いて、さてこれからどうしよう。
さすがに5月とは言え、日が落ちたら肌寒いなぁ。
先を歩く先輩が地下鉄の入口を指さした。もう一件連れて行ってくれるようだ。
やったね。
「さっきの質問、実は幼馴染なんですよ、困ったことにその片思いの相手」
酒のせいで妙に正直になっている自分に乗っかることにした。
「初恋か、もしかして」
「……」
ここまで引きずるとは自分でも驚いてますよ。
初めて帰国した年だから、僕が10歳の時からかなぁ。神社の鳥居の前で始めて会ったんだ。
あの日はいい天気だったよなぁ。
「それで辛くて、似た女をとっかえひっかえ」
「してませんっ。……無意識に似てる子を目で追っちゃうことはあったかもですが」
「食事にでも誘えばいいじゃない。それともひどい振られ方でもしたのか」
何で同じことを言うんだろう。
「まさか。伝えてもないのに。無理なんだって、そんなこと言えない。関係が壊れそうで」
そう言うと先輩はひどく驚いた顔で振り返り、茶化して済まんかったとなぜか謝られた。
テーブルはすっかり片され、僕のウーロンハイと先輩が呑んでるハイボールのジョッキだけになった。
話題は受付嬢の話から一周回って、また紀和さんの話に戻ってくる。
痴話喧嘩がしたかったという、紀和さんの啖呵が気に入ったようだ。
「『私と寝てる間はあんたは私の男』、なんてセリフ言われてみたいっ。あーっ、カッケーその彼女」
その時髪の毛掴まれてましたけどね。何妄想してんだか。
「それより僕がホストに向いてるって、意味がわかりませんよ。先輩じゃあるまいし」
「あはは、それ良く言われる。ホストに悪いよな。こんなおっさんと一緒にされて」
カラカラ笑う失礼な先輩を睨んでたら、追加オーダーの茶漬けとレモンサワーが届いた。
先輩は待ってましたとサワーに口をつける。ひと息でジョッキ半分カラにして、よく飲めるなぁ。
「合鍵までもらってたんだぁ。あ、その鍵どうした?」
「ちゃんと戻していきましたよ。昨日確かめに行ったらマジで引っ越してたし」
「ぶっ」
ですよね〜。そりゃ吹きますよね。僕だって笑っちゃたから。
笑いながら咳き込む先輩におしぼりを渡す。
呼吸を整えたかと思ったら、また思い出したように大声で笑い出した。
好きなだけ笑ってください。
「あー、笑った。その彼女、マジ最高」
笑ったせいで喉が乾いたとでも言うように、持っていたグラスを一息で空ける。もう追加しないでくださいよ。
「で、どこに泣く要素があるんだ」
今聞きますか、それ。ていうか、それが聞きたかったのか。
「ありませんよ。女と分かれたくらいで泣きますかって」
あいつの顔を思い出したからなんて言えるわけがない。
「拾ったペットが懐かなくて捨てられただけですから」
どーせ、見た目と学歴だけのオトコですよ、ええ。
「でもさ、昼間の顔は、何というか、切なげでハラハラ涙こぼして」
大げさにシナを作って泣き真似までしてみせた。
シクシクなんて泣いてませんから。乙女か僕は。
泣いてるとこ見られてたってだけで十分赤面モノなのに。ハラハラってナンですかソレ。
「あんな顔で泣くほど惚れてる相手には勝てないってか。どーりでウチの女子になびかないわけか」
そう言うと、先輩は店員へ向かって指でバッテンを作る。
「惚れてるって、止めてくださいよ恥ずかしい」
「え、違うのか」
「違って……ません、けど」
やば、認めてしまった。
何年も会ってないのに。
むしろ気持ちが強くなってる気がする。
「片思いしてるんですよ、ずーっと」
「おやまぁ、かわいそうに」
と、さっきと打って変わって心配げに眉を寄せ聞いてきた。
「ずーっとって、いつから?」
ぜんぜん可哀想なんて思っちゃいないの、丸わかりですけどね。
「今日も食ったなぁ、日向は。それにしてもそれだけ米食ってるのに太らないよな」
「若いんで、代謝が良いんですよ。先輩こそ、お酒を主食ですかってくらい飲みますね」
その内年相応に腹が出て、女の子にも相手されなくなればいい。
「主食か、巧いこと言うね。ま、アルコール代謝が高いのは確かかな。お陰で二日酔い知らず。オレの内蔵高スペックなんだよ」
店に来た時と変わらない顔でそう言うと、どれどれと伝票見て諭吉を一枚僕に渡し、先に座敷から出て身なりを整える。
「ションベン行ってくる」
どーぞごゆっくり。あれだけ飲めばそりゃ出るもんも出るでしょ。
アバウトだが食事分を僕が、飲み代は先輩が支払うことになっている。とは言え、大半は先輩が出してくれてる。
店を出てそのまま改札まで歩いて、さてこれからどうしよう。
さすがに5月とは言え、日が落ちたら肌寒いなぁ。
先を歩く先輩が地下鉄の入口を指さした。もう一件連れて行ってくれるようだ。
やったね。
「さっきの質問、実は幼馴染なんですよ、困ったことにその片思いの相手」
酒のせいで妙に正直になっている自分に乗っかることにした。
「初恋か、もしかして」
「……」
ここまで引きずるとは自分でも驚いてますよ。
初めて帰国した年だから、僕が10歳の時からかなぁ。神社の鳥居の前で始めて会ったんだ。
あの日はいい天気だったよなぁ。
「それで辛くて、似た女をとっかえひっかえ」
「してませんっ。……無意識に似てる子を目で追っちゃうことはあったかもですが」
「食事にでも誘えばいいじゃない。それともひどい振られ方でもしたのか」
何で同じことを言うんだろう。
「まさか。伝えてもないのに。無理なんだって、そんなこと言えない。関係が壊れそうで」
そう言うと先輩はひどく驚いた顔で振り返り、茶化して済まんかったとなぜか謝られた。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
鮭茶漬けと先輩の頼んだサワーが来るまで、少しの間が空く。
テーブルはすっかり片され、僕のウーロンハイと先輩が呑んでるハイボールのジョッキだけになった。
話題は受付嬢の話から一周回って、また紀和さんの話に戻ってくる。
テーブルはすっかり片され、僕のウーロンハイと先輩が呑んでるハイボールのジョッキだけになった。
話題は受付嬢の話から一周回って、また紀和さんの話に戻ってくる。
痴話喧嘩がしたかったという、紀和さんの啖呵が気に入ったようだ。
「『私と寝てる間はあんたは私の男』、なんてセリフ言われてみたいっ。あーっ、カッケーその彼女」
その時髪の毛掴まれてましたけどね。何妄想してんだか。
「それより僕がホストに向いてるって、意味がわかりませんよ。先輩じゃあるまいし」
「あはは、それ良く言われる。ホストに悪いよな。こんなおっさんと一緒にされて」
カラカラ笑う失礼な先輩を睨んでたら、追加オーダーの茶漬けとレモンサワーが届いた。
先輩は待ってましたとサワーに口をつける。ひと息でジョッキ半分カラにして、よく飲めるなぁ。
「合鍵までもらってたんだぁ。あ、その鍵どうした?」
「ちゃんと戻していきましたよ。昨日確かめに行ったらマジで引っ越してたし」
「ぶっ」
ですよね〜。そりゃ吹きますよね。僕だって笑っちゃたから。
笑いながら咳き込む先輩におしぼりを渡す。
呼吸を整えたかと思ったら、また思い出したように大声で笑い出した。
好きなだけ笑ってください。
笑いながら咳き込む先輩におしぼりを渡す。
呼吸を整えたかと思ったら、また思い出したように大声で笑い出した。
好きなだけ笑ってください。
「あー、笑った。その彼女、マジ最高」
笑ったせいで喉が乾いたとでも言うように、持っていたグラスを一息で空ける。もう追加しないでくださいよ。
「で、どこに泣く要素があるんだ」
今聞きますか、それ。ていうか、それが聞きたかったのか。
「ありませんよ。女と分かれたくらいで泣きますかって」
あいつの顔を思い出したからなんて言えるわけがない。
「拾ったペットが懐かなくて捨てられただけですから」
どーせ、見た目と学歴だけのオトコですよ、ええ。
「でもさ、昼間の顔は、何というか、切なげでハラハラ涙こぼして」
大げさにシナを作って泣き真似までしてみせた。
シクシクなんて泣いてませんから。乙女か僕は。
泣いてるとこ見られてたってだけで十分赤面モノなのに。ハラハラってナンですかソレ。
シクシクなんて泣いてませんから。乙女か僕は。
泣いてるとこ見られてたってだけで十分赤面モノなのに。ハラハラってナンですかソレ。
「あんな顔で泣くほど惚れてる相手には勝てないってか。どーりでウチの女子になびかないわけか」
そう言うと、先輩は店員へ向かって指でバッテンを作る。
「惚れてるって、止めてくださいよ恥ずかしい」
「え、違うのか」
「違って……ません、けど」
やば、認めてしまった。
何年も会ってないのに。
むしろ気持ちが強くなってる気がする。
むしろ気持ちが強くなってる気がする。
「片思いしてるんですよ、ずーっと」
「おやまぁ、かわいそうに」
と、さっきと打って変わって心配げに眉を寄せ聞いてきた。
「ずーっとって、いつから?」
ぜんぜん可哀想なんて思っちゃいないの、丸わかりですけどね。
「今日も食ったなぁ、日向は。それにしてもそれだけ米食ってるのに太らないよな」
「若いんで、代謝が良いんですよ。先輩こそ、お酒を主食ですかってくらい飲みますね」
その内年相応に腹が出て、女の子にも相手されなくなればいい。
「主食か、巧いこと言うね。ま、アルコール代謝が高いのは確かかな。お陰で二日酔い知らず。オレの内蔵高スペックなんだよ」
店に来た時と変わらない顔でそう言うと、どれどれと伝票見て諭吉を一枚僕に渡し、先に座敷から出て身なりを整える。
「ションベン行ってくる」
どーぞごゆっくり。あれだけ飲めばそりゃ出るもんも出るでしょ。
アバウトだが食事分を僕が、飲み代は先輩が支払うことになっている。とは言え、大半は先輩が出してくれてる。
店を出てそのまま改札まで歩いて、さてこれからどうしよう。
店を出てそのまま改札まで歩いて、さてこれからどうしよう。
さすがに5月とは言え、日が落ちたら肌寒いなぁ。
先を歩く先輩が地下鉄の入口を指さした。もう一件連れて行ってくれるようだ。
やったね。
先を歩く先輩が地下鉄の入口を指さした。もう一件連れて行ってくれるようだ。
やったね。
「さっきの質問、実は幼馴染なんですよ、困ったことにその片思いの相手」
酒のせいで妙に正直になっている自分に乗っかることにした。
「初恋か、もしかして」
「……」
ここまで引きずるとは自分でも驚いてますよ。
初めて帰国した年だから、僕が10歳の時からかなぁ。神社の鳥居の前で始めて会ったんだ。
あの日はいい天気だったよなぁ。
初めて帰国した年だから、僕が10歳の時からかなぁ。神社の鳥居の前で始めて会ったんだ。
あの日はいい天気だったよなぁ。
「それで辛くて、似た女をとっかえひっかえ」
「してませんっ。……無意識に似てる子を目で追っちゃうことはあったかもですが」
「食事にでも誘えばいいじゃない。それともひどい振られ方でもしたのか」
何で同じことを言うんだろう。
「まさか。伝えてもないのに。無理なんだって、そんなこと言えない。関係が壊れそうで」
そう言うと先輩はひどく驚いた顔で振り返り、茶化して済まんかったとなぜか謝られた。