礼安と院、透の三人が一堂に会し、寮内の風呂に入浴。エヴァは経験したショックが大きすぎたために、「一人きりになりたい」と願った結果、陽が寮に送り届けた。人が死ぬ現場を目の当たりにした院と透も大きいショックを経験したが、レイジーを喪ったエヴァの心情を察した結果、その望みの通りにしたのだ。
院と透は、三人それぞれ体を洗う間に、山梨で経験した事のあらましを全て説明した。ただ、礼安の深い悲しみを誘わないように、刺激的すぎる内容は一切語ることはない。
その結果、礼安は泣いていた。その事実を一切経験していないのにも拘らず、高い感受性によって涙を流していたのだ。
「――そんなことがあったんだね」
「……正直、バカンスとは名ばかりの、戦いばかりの日々でした。その中で得られるものもありましたが、それ以上に……傷つくことが多く。今回の一件は――私たちは、正直そこまで力になれませんでした」
『怠惰』。それを司る彼女は、あまりにも勤勉であった。どれほど院たちが精力的に巨悪と立ち向かおうと、彼女の努力の前には霞むものがある。どれほど作戦が見抜かれようと、御庭番衆を始めとした忍者の育成だったり、善吉を玉座から引きずり落すために忍び刀に細工を施したり、多くのことを成した。
しのびの里に眠る勇敢な彼女が齎した真実は、これから先少しでも多くの人が現実と戦うために勇気を振りまいたのだ。
「――俺らは、例え変身しなくても十分に戦える術は身に着けた。それでも……救えない奴がいた。それが、どうしようもなく悔しくてよ」
偉大な先輩の背中が、どうしようもなく大きくて。どれほど一年次最強格と持て囃されようと、その準備の万全さが甘かった。
そして、未だ生存している善吉の存在。それが暗い影を落としているのだ。新天地、と語っていたが、どこに向かうかは一切明かさなかった。それに、いつ騒ぎを起こすかなども明かしていなかった。全てが不明瞭な中、巨悪が世にのさばっている。この現状が、どうしようもなくレイジーに申し訳が無かったのだ。
「――だからよ、俺らも……もっと強くならなきゃあいけねえ。そう考えたんだよ」
「もっと強ければ、多くの人を守れる。例え最悪の策に頼らなくとも、自分たちでどうにかできる、ちゃんとした英雄の姿を見せられる。ただでさえ、お父様にあれだけ入学式の際にお膳立てしていただきましたし、立派な英雄になりませんと」
三人仲良く、一つの広い浴槽に入り込む。お湯がそれにより溢れるものの、今この場にいるのは満たされない虚ろを抱えた存在三人。一人を除いて、『あらゆる欲望を満たせる』場と呼ばれる場所にいたのにも拘らず。
ただ、ただ虚ろなだけではない。その空っぽの部分には様々なものが詰め込める。未来ある若者三人衆であるからこそ、今はただ休むのみ。この次に、その空っぽを満たせばいい。
「――私に、できることがあったら何でも言ってね! 修行相手にでも、勉強相手にでもなれそうだから!」
「えっ貴女補習受けてませんでしたか」
「それがね? ちょっと分からないことが起こってて……」
その詳細を聞いた瞬間、礼安以外の二人仲良く、同じ決意を抱く。それは、学園長に全身全霊の
拳骨をお見舞いすることであった。