「私が不甲斐ないばっかりに、私の国は滅んでしまった。だから私は、自らの国の復活を、目指しているのです」
シズクがその目から、涙をこぼす。その拳に、涙が当たる。
「よし、なら俺も、協力しよう」
俺はシズクに対して、グッドポーズを作った。泣いている女性を無視できるほど、俺はドライではないのだ。
「いいのですか?」
シズクは、嬉しそうな顔をした。
「ああ、いいぜ」
「ありがとうございます。私一人でできるかなって、不安だったんです」
シズクは、頭を下げる。
「だが、こちらからもお願いがある」
「なんでしょう?」
シズクが、首を傾げた。本当に無邪気な、「なになに?」って言葉が聞こえてきそうなほどの、キュルンとした顔だった。
「その虹色のサイコロを、持って行ってくれ。俺の本体はそのサイコロで、そのサイコロを誰かが移動させてくれないと、俺は移動できないみたいなんだ」
俺の言葉に対して、シズクは頷く。
「もちろんです」
シズクは、二つのサイコロを手に持った。
そしてそれを、転がしてみる。
「昨日はこうすることで、サイさんが実体を持てたんですよね」
シズクは、そう告げる。
「ああ、そうだな」
俺はシズクのその動作により、再び実体を持てることを期待していた。
しかしそのサイコロは、コロコロと転がっただけだった。
「むむむ?」
何も起こらなかったということに対して俺は、疑問を感じる。
「どういうことだろう?」
分かんない。あたい、分かんない。
俺は、首を傾げた。
「きっと、条件があるのでしょう。たまにあるのですよね、条件を満たさないと効果を発動してくれないサイコロが」
そのシズクの言葉に対して俺は、疑問を呈してみる。
「この世界にはその虹色のサイコロみたいに、能力を発現できるサイコロがあるの?」
俺の問いに対して、シズクが頷く。
「はい、この世界では、様々な種類の色付きのサイコロが存在しているのです。かなりレアなその色付きのサイコロを扱う人間は、"サイコロ使い"と呼ばれております。そしてサイコロ使いは力の象徴として、この世界の要人になっていたりします」
「ふむふむ」
俺は頷く。
「なら、君は今日から、サイコロ使いになったってことだね」
俺の言葉に対して、シズクは微笑んだ。
「はい、そういうことになります」
シズクは嬉しそうだが、不安そうでもあった。
「ですが、この虹色のサイコロには、曰くもあるのです。過去それを振ったサイコロ使いが、現れた魔物に殺されたという曰くが」
俺は、顔をしかめる。
少なくとも、ブリドラではないだろう。心優しいブリドラが、人間を殺すはずがない。ならばこのサイコロの中に存在している、別の魔物の仕業ということになる。
てかよくこの子、さっき平然とサイコロ振ったなぁ。危険な魔物が出たらどうするつもりだったんだよ。
俺はその感想を、口に出さなかった。
「これらのサイコロは出た目によって、発現する能力が違うのか?」
「はい、そうです。二つのサイコロの出た目の合計により、発現する能力が決まります。だから、二つのサイコロが3と3を出しても1と5を出しても合計は6であり、同じ能力が発動します。そして原則その能力は、その出目の合計値が確率的に出にくいほど、強い能力となります」
俺は、後悔する。学生時代、数学の勉強が嫌いだからといって、授業中に眠っていたことを。
「確率的に、出にくい……?」
俺は、目をパチクリさせる。
シズクが、部屋に備え付けられてある紙に、文言を書いてくれた。
合計値 :それを出すための二つのサイコロの出目パターン
合計値2 :1/1
合計値3 :1/2、2/1
合計値4 :1/3、3/1、2/2
合計値5 :1/4、4/1、2/3、3/2
合計値6 :1/5、5/1、2/4、4/2、3/3
合計値7 :1/6、6/1、2/5、5/2、4/3、3/4
合計値8 :2/6、6/2、5/3、3/5、4/4
合計値9 :3/6、6/3、5/4、4/5
合計値10:4/6、6/4、5/5
合計値11:5/6、6/5
合計値12:6/6
「これが、各々の数字が出る確率です。つまり7が最も出やすくて、そこから2と12に近付くにつれて、出る確率は低くなっていくってことです」
俺はとても凛々しい顔で、頷いた。
「OK、簡単に理解できたぜ」
俺はシズクに対して、グッドポーズを見せた。