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第二百十四話

ー/ー



「――――以上、私のこれまでの歴史さ。ご清聴感謝するよ」
 善吉がふと振り向くと、息を切らし葵を電気ショックにて気を失わせたエヴァの姿があった。子供を利用した人間の屑を睨む彼女の瞳は、激情の炎が揺らめいていた。
「……おや、死んでないんだね? これはびっくり、子供を手に掛けるとは、君は鬼畜かな?」
「――お前が、それを言うか」
 エヴァは、人の域を逸脱した善吉に対して、完全に激昂していた。腰後ろに佩いたデュアルムラマサに手をかけ、すぐさま抜刀。善吉に刃を向ける。
 どれほどの魔力を流そうと、この支部全体に仕掛けられている罠によりうんともすんとも言わない。それでも、一対の刃物としての役割は果たせる。
 すぐさま飛び掛かるも、善吉の後ろ回し蹴りが炸裂。無防備であった頭部にクリーンヒットし、壁に叩きつけられる。
「――全く、ここは映画館だというのに。決闘場ではないんだよ?」
「……五月蠅い、五月蠅い五月蠅い五月蠅い!! お前が居なかったら、レイジーも苦しまなかった!! 山梨は平和だった!! お前と『教会』が全てを狂わせたんだ!!」
「レイジー……? ああ、先ほど元大人を躾けるために焼け死んだ、哀れな道化のことだね?」
「――――は??」
 実にあっさりと、最悪の事実が付きつけられるエヴァ。怒りが、やがて絶望へと変化する。すっかり青ざめて、デュアルムラマサを手から溢してしまう。
「あの元支部長はね……実にお笑いものだったよ。誰にも気づかれていないと思って、『教会』山梨支部支部長、忍びの里で頭目の二足の草鞋を履いていたわけだけど……やるならもっと忍んでほしいよね? バレバレすぎて、ウチの教祖も大笑いしていたよ」
 善吉もまた、薄ら笑いを浮かべながらリモコンのボタンを押す。すると、上映終了したはずのモニターに、エル・ドラドエリアでの一部始終が映し出された。そこには、しのびの里の元大人たちとたった一人で対峙する、かつての想い人の姿が。
 途中まで数的劣勢に立たされていたものの、英雄学園で培った力を元に成敗していく。しかし、あるタイミングを境に劣勢になっていくレイジー。徹底的に刺突させられていく中、当人がマグマの力を以って完全拘束、自分ごと焼き尽くして引き分けに持ち込んでいたのだ。その後少し遅れて、見知った存在がその場に現れるも、深く悲しんでいる様子であった。
「結局は、この世界に『生産性のない存在』はいても仕方ない。今こうして山梨を流転の最中に巻き込んだ理由も、昨今生産性のない存在が幅を利かせているからこそ。それなら、下らない思想を淘汰し、元あるべき人間の姿に戻すだけ。実に理に適っているだろう?? 悪いが、LGBTだのなんだの、心底無駄なものだと考えているのでね。男と女以外に誰がいるって言うんだい? 両性具有の稀有な存在なら話位は聞こうじゃあないか」
 極論ではあるが、善吉のような考えを持つ者はこの世界に少なからず存在する。いつの世も、偏った思考になった結果衰退した文明や国は存在する。
 それでも、エヴァにとって何より許せないことがあった。
「――それが、大勢の犠牲を伴ったものでも、か」
 ぼろぼろと、涙を流すエヴァ。善吉とカルマの身勝手によって、大切な存在を喪ったからこそ、この言葉に重みが生まれる。しかし、そんな言葉など無風だといわんばかりに眼前の存在、そして映像の向こうで亡骸と成り果てた存在を嘲笑する。
「大勢?? 馬鹿言え、世界規模で見たら大したことが無いだろう?? たかだか八十万の命を実験材料に使うだけで人の心理が動かされ改革が齎されるのなら、それは安いものだろ?? 実に少数の犠牲で、生産性が上がるのなら安いものだろう。これまでの歴史でも、そう言った犠牲を容認して人類は発展してきただろう」
「じゃあその少数の犠牲の中に、お前らのような権力者の輩≪クソ野郎≫が入っていないのはどういう了見だ」
 デュアルムラマサを力強く握り締めた結果、刀身にまでエヴァの血液が帯びる。自分の思考を実現させるために、自分以外を犠牲にし続ける、善吉や『教会』の根底がずっと許せない。甘い常套句で人を惑わせ、結果的にその人を貶める。
 心の底から、そんな自分本位な考えを宣う存在が、許せなかったのだ。
「――悲しいね。結局、君のような非生産的な存在と論議を交わすことは、最初から無意味だった。意見が対立するのなら、初めからそんな存在は摘み取っておくに限るんだ」
「逆だ、摘み取ることしか解決方法が分からない、そんなアンタが無能って訳だろ!!」
 エヴァに呼応し、封じられていたはずのデュアルムラマサが突如として輝きだし、使えない縛りが解かれる。そんな危険因子を排除するべく、チーティングドライバーと自らのライセンスを顕現、認証させる。
『認証、天下統一を成した将軍、徳川家康――多くの者が成し得なかった高みに辿り着いた男は、やがて日本全土の衆生を従える存在と成る……』
『認証、ムラマサ放浪記! 著名な妖刀を生み出した刀工が、各地を放浪した結果己の内に視えたものは如何に!?』
「おや、君はかの有名な刀工、千子村正か。こうやってぶつかり合うべくして、このマッチメイクは果たされたのかな」
 何も語ることはなく、それぞれが人の姿を超越する。
構築、開始(ビルド・スタート)!!」
「――変身」
『Crunch The Story――――Game Start』
 装甲を纏う者あれば、異形へと成り果てる者あり。この山梨の一件に終止符を打つべく、最後の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。



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「――――以上、私のこれまでの歴史さ。ご清聴感謝するよ」
 善吉がふと振り向くと、息を切らし葵を電気ショックにて気を失わせたエヴァの姿があった。子供を利用した人間の屑を睨む彼女の瞳は、激情の炎が揺らめいていた。
「……おや、死んでないんだね? これはびっくり、子供を手に掛けるとは、君は鬼畜かな?」
「――お前が、それを言うか」
 エヴァは、人の域を逸脱した善吉に対して、完全に激昂していた。腰後ろに佩いたデュアルムラマサに手をかけ、すぐさま抜刀。善吉に刃を向ける。
 どれほどの魔力を流そうと、この支部全体に仕掛けられている罠によりうんともすんとも言わない。それでも、一対の刃物としての役割は果たせる。
 すぐさま飛び掛かるも、善吉の後ろ回し蹴りが炸裂。無防備であった頭部にクリーンヒットし、壁に叩きつけられる。
「――全く、ここは映画館だというのに。決闘場ではないんだよ?」
「……五月蠅い、五月蠅い五月蠅い五月蠅い!! お前が居なかったら、レイジーも苦しまなかった!! 山梨は平和だった!! お前と『教会』が全てを狂わせたんだ!!」
「レイジー……? ああ、先ほど元大人を躾けるために焼け死んだ、哀れな道化のことだね?」
「――――は??」
 実にあっさりと、最悪の事実が付きつけられるエヴァ。怒りが、やがて絶望へと変化する。すっかり青ざめて、デュアルムラマサを手から溢してしまう。
「あの元支部長はね……実にお笑いものだったよ。誰にも気づかれていないと思って、『教会』山梨支部支部長、忍びの里で頭目の二足の草鞋を履いていたわけだけど……やるならもっと忍んでほしいよね? バレバレすぎて、ウチの教祖も大笑いしていたよ」
 善吉もまた、薄ら笑いを浮かべながらリモコンのボタンを押す。すると、上映終了したはずのモニターに、エル・ドラドエリアでの一部始終が映し出された。そこには、しのびの里の元大人たちとたった一人で対峙する、かつての想い人の姿が。
 途中まで数的劣勢に立たされていたものの、英雄学園で培った力を元に成敗していく。しかし、あるタイミングを境に劣勢になっていくレイジー。徹底的に刺突させられていく中、当人がマグマの力を以って完全拘束、自分ごと焼き尽くして引き分けに持ち込んでいたのだ。その後少し遅れて、見知った存在がその場に現れるも、深く悲しんでいる様子であった。
「結局は、この世界に『生産性のない存在』はいても仕方ない。今こうして山梨を流転の最中に巻き込んだ理由も、昨今生産性のない存在が幅を利かせているからこそ。それなら、下らない思想を淘汰し、元あるべき人間の姿に戻すだけ。実に理に適っているだろう?? 悪いが、LGBTだのなんだの、心底無駄なものだと考えているのでね。男と女以外に誰がいるって言うんだい? 両性具有の稀有な存在なら話位は聞こうじゃあないか」
 極論ではあるが、善吉のような考えを持つ者はこの世界に少なからず存在する。いつの世も、偏った思考になった結果衰退した文明や国は存在する。
 それでも、エヴァにとって何より許せないことがあった。
「――それが、大勢の犠牲を伴ったものでも、か」
 ぼろぼろと、涙を流すエヴァ。善吉とカルマの身勝手によって、大切な存在を喪ったからこそ、この言葉に重みが生まれる。しかし、そんな言葉など無風だといわんばかりに眼前の存在、そして映像の向こうで亡骸と成り果てた存在を嘲笑する。
「大勢?? 馬鹿言え、世界規模で見たら大したことが無いだろう?? たかだか八十万の命を実験材料に使うだけで人の心理が動かされ改革が齎されるのなら、それは安いものだろ?? 実に少数の犠牲で、生産性が上がるのなら安いものだろう。これまでの歴史でも、そう言った犠牲を容認して人類は発展してきただろう」
「じゃあその少数の犠牲の中に、お前らのような権力者の輩≪クソ野郎≫が入っていないのはどういう了見だ」
 デュアルムラマサを力強く握り締めた結果、刀身にまでエヴァの血液が帯びる。自分の思考を実現させるために、自分以外を犠牲にし続ける、善吉や『教会』の根底がずっと許せない。甘い常套句で人を惑わせ、結果的にその人を貶める。
 心の底から、そんな自分本位な考えを宣う存在が、許せなかったのだ。
「――悲しいね。結局、君のような非生産的な存在と論議を交わすことは、最初から無意味だった。意見が対立するのなら、初めからそんな存在は摘み取っておくに限るんだ」
「逆だ、摘み取ることしか解決方法が分からない、そんなアンタが無能って訳だろ!!」
 エヴァに呼応し、封じられていたはずのデュアルムラマサが突如として輝きだし、使えない縛りが解かれる。そんな危険因子を排除するべく、チーティングドライバーと自らのライセンスを顕現、認証させる。
『認証、天下統一を成した将軍、徳川家康――多くの者が成し得なかった高みに辿り着いた男は、やがて日本全土の衆生を従える存在と成る……』
『認証、ムラマサ放浪記! 著名な妖刀を生み出した刀工が、各地を放浪した結果己の内に視えたものは如何に!?』
「おや、君はかの有名な刀工、千子村正か。こうやってぶつかり合うべくして、このマッチメイクは果たされたのかな」
 何も語ることはなく、それぞれが人の姿を超越する。
「|構築、開始《ビルド・スタート》!!」
「――変身」
『Crunch The Story――――Game Start』
 装甲を纏う者あれば、異形へと成り果てる者あり。この山梨の一件に終止符を打つべく、最後の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。