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第二百十三話

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 ある時、都市伝説同然であった『義賊伝説』にまつわる事件が起こる。五斂子社の末端にあたる企業が犯罪まがいの営業を行っていたため、悪事を許さないダークヒーローであった忍者が成敗したのだ。その悪事を世にばら撒き、大した影響はないように思えた。
 しかし、善吉にとって「不確定要素」というものは、そこにあって当然という考えがありながら、何より嫌いな概念であった。忍者が存在する限り、いずれ自分たちの障害となりうる。そう考えた善吉は、伝説を明るみにすることで希少性、そして秘匿性を無くしてやろうと考えていた。
 だが、どれほど人員を割こうと、当時から常軌を逸した戦闘力、機動力、隠密力を持ち合わせていた忍者の尻尾を掴むことは叶わず、次第に五斂子社を支持する者の中にもその忍者の持つミステリアスさを好む者が現れた。
 ついに善吉は、我が子に洗脳を施し、忍者たちの元に近づき、徹底的にその忍者たちの弱みをあぶりだしにかかったのだ。いつか来るであろう、洗脳解除の時まで、親が事件に巻き込まれ死んだ、無辜の子供である……実にお涙頂戴と言わんばかりの、金の亡者と化した二十四時間テレビが好きそうなエピソードまで付け加え。
 子供に対して、一切の愛情を抱いていなかった善吉にとって、五月蠅い存在が居なくなって清々した、と言った様子であった。しかし、その異変に気付いた妻は、洗脳が解けたのか善吉に対して異を唱える。
 鬱陶しかったため、妻を自分の手で殺害した。洗脳を掛け直し、二度と自分の前に現れないよう念を押し、自殺させたのだ。一切死体の事後処理を行わなくてもいいように、社長が死んだ時と同じ液体火葬によるものだった。
 涙は無い。喪失感は無い。ただ、そこには邪魔者が居なくなった充足感のみ。自分で理解していない究極の外道が、山梨の実権を握っていたのだ。

 『教会』との交わりも、すぐに打ち解けた。その思想を理解すると、グレープ云々に関する事柄もとんとん拍子に進めさせ、現在の流転のシステムを確立。多くの子供たちを保育園などの育児施設にて大規模洗脳及び催眠を行い、流転の呪いをかける。子供たちを用いた非人道的なビジネスも、この段階から始まった。
 表向きでは、子供たちを守りたい、そんな実に聞こえのいい、「いい人」かつ「いい社長」としての姿を演じてきた存在は、人のことを何とも思っていない、結局自分の利益以外の何も考えていない存在であった。
『――君は、実に私と同じ香りがするよ』
『そうかい? お褒めいただき感謝するよ』
 カルマとの邂逅は、実にあっさりとしたもの。チーティングドライバーの受け渡しも、何も支障がない。『邪魔者を複数人消す』という改革への道筋も、これまでの非情な行いによって即クリア。これに関しては、カルマも思わず苦笑していた。
『しかし、多くの人を私の元に勧誘してきたが……君は清々しいほどの外道だね。面白いくらいにさ』
『外道だなんて、そんなことはないよ。あくまで、私は人間がこうするであろうあり方をそのまま実行しているだけに過ぎない。人間の悪意は底知れない、なら私がその悪意を更なる悪意を以って制するのみ。そして残るのは秩序のみ。実に美しいと思わないか』
『ふゥん……でも、一つ疑問だな。何で……私の元に下ることを容認したのかな? 自分より上に誰かがいることは不満じゃあないのかな』
 そのカルマの問いに対し、善吉は微笑を以って答えた。
『別に、上に誰かがいることは不満じゃあない。その存在が、『無能』でないならいいのさ。無能が上に立つことほど、無駄なことはない。さらに――君たちはこの県の『伝説』に関して、嫌っているようだし……そこを応援したいな、と考えた次第さ。うちの会社、伊達に人員はいないからね』
 一貫した考えに、頷くのみで理解したカルマ。二人は、そのまま流れるような動作で大した成果を上げられなかった笑顔の従業員を殺害し、笑顔で血に塗れるのだった。



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 ある時、都市伝説同然であった『義賊伝説』にまつわる事件が起こる。五斂子社の末端にあたる企業が犯罪まがいの営業を行っていたため、悪事を許さないダークヒーローであった忍者が成敗したのだ。その悪事を世にばら撒き、大した影響はないように思えた。
 しかし、善吉にとって「不確定要素」というものは、そこにあって当然という考えがありながら、何より嫌いな概念であった。忍者が存在する限り、いずれ自分たちの障害となりうる。そう考えた善吉は、伝説を明るみにすることで希少性、そして秘匿性を無くしてやろうと考えていた。
 だが、どれほど人員を割こうと、当時から常軌を逸した戦闘力、機動力、隠密力を持ち合わせていた忍者の尻尾を掴むことは叶わず、次第に五斂子社を支持する者の中にもその忍者の持つミステリアスさを好む者が現れた。
 ついに善吉は、我が子に洗脳を施し、忍者たちの元に近づき、徹底的にその忍者たちの弱みをあぶりだしにかかったのだ。いつか来るであろう、洗脳解除の時まで、親が事件に巻き込まれ死んだ、無辜の子供である……実にお涙頂戴と言わんばかりの、金の亡者と化した二十四時間テレビが好きそうなエピソードまで付け加え。
 子供に対して、一切の愛情を抱いていなかった善吉にとって、五月蠅い存在が居なくなって清々した、と言った様子であった。しかし、その異変に気付いた妻は、洗脳が解けたのか善吉に対して異を唱える。
 鬱陶しかったため、妻を自分の手で殺害した。洗脳を掛け直し、二度と自分の前に現れないよう念を押し、自殺させたのだ。一切死体の事後処理を行わなくてもいいように、社長が死んだ時と同じ液体火葬によるものだった。
 涙は無い。喪失感は無い。ただ、そこには邪魔者が居なくなった充足感のみ。自分で理解していない究極の外道が、山梨の実権を握っていたのだ。
 『教会』との交わりも、すぐに打ち解けた。その思想を理解すると、グレープ云々に関する事柄もとんとん拍子に進めさせ、現在の流転のシステムを確立。多くの子供たちを保育園などの育児施設にて大規模洗脳及び催眠を行い、流転の呪いをかける。子供たちを用いた非人道的なビジネスも、この段階から始まった。
 表向きでは、子供たちを守りたい、そんな実に聞こえのいい、「いい人」かつ「いい社長」としての姿を演じてきた存在は、人のことを何とも思っていない、結局自分の利益以外の何も考えていない存在であった。
『――君は、実に私と同じ香りがするよ』
『そうかい? お褒めいただき感謝するよ』
 カルマとの邂逅は、実にあっさりとしたもの。チーティングドライバーの受け渡しも、何も支障がない。『邪魔者を複数人消す』という改革への道筋も、これまでの非情な行いによって即クリア。これに関しては、カルマも思わず苦笑していた。
『しかし、多くの人を私の元に勧誘してきたが……君は清々しいほどの外道だね。面白いくらいにさ』
『外道だなんて、そんなことはないよ。あくまで、私は人間がこうするであろうあり方をそのまま実行しているだけに過ぎない。人間の悪意は底知れない、なら私がその悪意を更なる悪意を以って制するのみ。そして残るのは秩序のみ。実に美しいと思わないか』
『ふゥん……でも、一つ疑問だな。何で……私の元に下ることを容認したのかな? 自分より上に誰かがいることは不満じゃあないのかな』
 そのカルマの問いに対し、善吉は微笑を以って答えた。
『別に、上に誰かがいることは不満じゃあない。その存在が、『無能』でないならいいのさ。無能が上に立つことほど、無駄なことはない。さらに――君たちはこの県の『伝説』に関して、嫌っているようだし……そこを応援したいな、と考えた次第さ。うちの会社、伊達に人員はいないからね』
 一貫した考えに、頷くのみで理解したカルマ。二人は、そのまま流れるような動作で大した成果を上げられなかった笑顔の従業員を殺害し、笑顔で血に塗れるのだった。