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第二百四話

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 『教会』の教祖たる存在に、情け容赦なく抹殺されたはずの王漣組先代組長、王漣治馬王漣治馬(オウレン ハルマ)。まさに死ぬ前、最後に会ったときそのままの着物姿、そして姿形であった。
 年齢としては、若干老衰も見えてくる八十歳ほど。全盛期ではないため、基本的な動作は高価な杖頼り。腰が若干曲がっており、重ねた年月はともかくとして、豊富な経験はその見た目では計り知れない。
 しかし、それほどの存在を目の当たりにしても、灰崎は違和感を抱かざるを得なかった。
「――何で、この場にいるんですか、組長? 実は生きてました、にしては……少々できすぎた話のように思えますが」
「ほう、俺が生きていたとしてもその反応。実に……前より成長したな、廉治」
「そうですか、それは何よりです」
 じりじりと、ゆっくりと。しかし普通の人間であれば感知できないほどの速度で迫るも、灰崎はそこに感じられたどす黒い悪意を感じ取り、それ以上の歩幅で徐々に下がっていく。
「なぜ、遠ざかる?」
「――今の俺如きが組長と肩を並べられるとは、到底思ってないんで」
 本心は違う。しかしそれを悟られる前に、この状況をどうにかする方法を考え始めた。
(――絶対に、偽物だ。この県の……『教会』の生み出した闇は、もう一人の自分(ドッペルゲンガー)なんて容易に生み出せるほどに発展した。まずは俺にさせたいことを探って――)
 そう考えている内に、先ほどまで緩慢な動作であったはずの王漣が、たった一回の瞬きの間に眼前に迫っていたのだ。
「油断や迷いは、全てを鈍らせる。即断即決が最善策……そう教えたよな」
 杖での渾身の殴打(フルスイング)。咄嗟に防御したものの、人間の力ではないレベルで骨が軋む。圧倒的衝撃(スマッシュ)を受け取った灰崎は、何とか後方に着地するも、ぴりぴりと腕の神経が悲鳴を上げるほどの攻撃力であった。
「――やっぱり、アンタは偽物だ。全盛期の姿を知っている訳じゃあねえが……あの人は年老いた状態の場合、必ず俺ら組員が傍で支えていた。杖だけで動けねえわけではないが……八十の年月、その間の人の衰えは馬鹿にならねえ。八十で人外じみた力持っているだなんて、一般人一般人(パンピー)からしたら有り得無ェんだよ」
 お陰様で、灰崎の中にある迷いは一瞬にして立ち消えた。痛みは人を強くするとはよく言ったもので、灰崎は清志郎に完膚なきまでに敗北したあの時より、何かしらから常に学び続けているのだ。
 ただの一般人が、数多くの苦難を経て一人の戦闘者として格を上げてきたのだ。
「――俺は偽物のアンタを許さねえ。俺の動揺を誘おうとしたんだろうが……それが逆鱗に触れてるってことを認識してねえ。とびっきりのクソ下種野郎が内にいるんだろうが……俺は『お前』を絶対に許さねえ」
 そんな灰崎のむき出しの怒りに反応し、王漣の偽りの肉体をただの映像機として利用している、その向こう側の人物が狡猾に笑った。
「――少しくらい、騙されてくれても良かっただろうに。そのために、私がさんざ下らないヤクザの身辺調査を行ったんだからな」
「……言葉≪クチ≫には気をつけろよ、来栖・F・善吉(クソ野郎)。あまりこういった強い言葉は好みじゃあねえが……ブッ殺すぞ」
 チーティングドライバーを装着し、一瞬にしてお互い臨戦態勢を整える。そこで、二人きりの戦いが開幕するのだった。

「「変身」!!」



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 『教会』の教祖たる存在に、情け容赦なく抹殺されたはずの王漣組先代組長、王漣治馬|王漣治馬《オウレン ハルマ》。まさに死ぬ前、最後に会ったときそのままの着物姿、そして姿形であった。
 年齢としては、若干老衰も見えてくる八十歳ほど。全盛期ではないため、基本的な動作は高価な杖頼り。腰が若干曲がっており、重ねた年月はともかくとして、豊富な経験はその見た目では計り知れない。
 しかし、それほどの存在を目の当たりにしても、灰崎は違和感を抱かざるを得なかった。
「――何で、この場にいるんですか、組長? 実は生きてました、にしては……少々できすぎた話のように思えますが」
「ほう、俺が生きていたとしてもその反応。実に……前より成長したな、廉治」
「そうですか、それは何よりです」
 じりじりと、ゆっくりと。しかし普通の人間であれば感知できないほどの速度で迫るも、灰崎はそこに感じられたどす黒い悪意を感じ取り、それ以上の歩幅で徐々に下がっていく。
「なぜ、遠ざかる?」
「――今の俺如きが組長と肩を並べられるとは、到底思ってないんで」
 本心は違う。しかしそれを悟られる前に、この状況をどうにかする方法を考え始めた。
(――絶対に、偽物だ。この県の……『教会』の生み出した闇は、|もう一人の自分《ドッペルゲンガー》なんて容易に生み出せるほどに発展した。まずは俺にさせたいことを探って――)
 そう考えている内に、先ほどまで緩慢な動作であったはずの王漣が、たった一回の瞬きの間に眼前に迫っていたのだ。
「油断や迷いは、全てを鈍らせる。即断即決が最善策……そう教えたよな」
 杖での渾身の|殴打《フルスイング》。咄嗟に防御したものの、人間の力ではないレベルで骨が軋む。圧倒的|衝撃《スマッシュ》を受け取った灰崎は、何とか後方に着地するも、ぴりぴりと腕の神経が悲鳴を上げるほどの攻撃力であった。
「――やっぱり、アンタは偽物だ。全盛期の姿を知っている訳じゃあねえが……あの人は年老いた状態の場合、必ず俺ら組員が傍で支えていた。杖だけで動けねえわけではないが……八十の年月、その間の人の衰えは馬鹿にならねえ。八十で人外じみた力持っているだなんて、一般人|一般人《パンピー》からしたら有り得無ェんだよ」
 お陰様で、灰崎の中にある迷いは一瞬にして立ち消えた。痛みは人を強くするとはよく言ったもので、灰崎は清志郎に完膚なきまでに敗北したあの時より、何かしらから常に学び続けているのだ。
 ただの一般人が、数多くの苦難を経て一人の戦闘者として格を上げてきたのだ。
「――俺は偽物のアンタを許さねえ。俺の動揺を誘おうとしたんだろうが……それが逆鱗に触れてるってことを認識してねえ。とびっきりのクソ下種野郎が内にいるんだろうが……俺は『お前』を絶対に許さねえ」
 そんな灰崎のむき出しの怒りに反応し、王漣の偽りの肉体をただの映像機として利用している、その向こう側の人物が狡猾に笑った。
「――少しくらい、騙されてくれても良かっただろうに。そのために、私がさんざ下らないヤクザの身辺調査を行ったんだからな」
「……言葉≪クチ≫には気をつけろよ、|来栖・F・善吉《クソ野郎》。あまりこういった強い言葉は好みじゃあねえが……ブッ殺すぞ」
 チーティングドライバーを装着し、一瞬にしてお互い臨戦態勢を整える。そこで、二人きりの戦いが開幕するのだった。
「「変身」!!」