夏の話
ー/ー 夏。
「北から来ている大型の新しい怪異は、辺りを荒らしながら来てるけど、抵抗せずにいる地域も多いらしい」
外の様子を見てきたはねちゃんが森の外、少し離れた町の現状について語った。
「人間を捕まえている?」
「捕まえるだけならいいほうだよね」
そう言いながらはねちゃんが頭を振った。その表情で、捕まった旧き者たちの扱いの凄惨さがわかる。町の人が話しているのを耳にしたのだ。今は、小さな顔の者達は、新しい発明品の実験台になっているらしいのだ。――効率よく旧き者たちを集めるための発明品の実験台に。
「南に行けば。塀の向こうには私たちのような人間がいっぱいいるらしいけど」
私が提案する。塀の向こう側の世界が、どのような場所か想像もつかないけれど、少なくとも今こうして新しいもの達に怯えて暮らすよりは新天地を目指した方が建設的にも思える。
「それも噂話よ。あなたがここに運ばれてきたとき、町の人は南から来たんだって言ってただけ」
あしちゃんが続けた。それに、はねちゃんも向こう側に行けないくらいの塀、何か魔法のかかった塀を超えるだなんて、私たち三人の力がなくなるまで魔法を放出しないと無理よ。
「塀を乗り越えるなら、私はいけないわね~」
私たちの顔を代わるがわる見て、ひれちゃんが肩をすくめた。
ひれちゃんが動けないだけじゃない。人型の生き物が四匹も南の方に向かっている状態はすぐに大型の飛翔物体から観測されてしまうだろう。夜闇に紛れたとしても、夜行性のモンスターから比べて夜目が利かない私たちは動くことすらままならないかもしれない。
「今までの通り過ごすしかないわね」
「今まで以上に慎重に、ね。北の国の化け物たちがこれ以上侵略してこないことをいのるばかりだわ」
玄関に何か転がる音がした。私はそれを見に行って、果実がいくつも落ちているのを見つける。八百屋のおばさんの青い甘い実だった。これが届く時はいつも私たちの手を借りたいという相談だという事がいつもの決まり。
あしちゃんに甘い果物を渡す。あしちゃんはその中から、何か魔法のかかった紙を取り出した。
「あら病人の看護のお願いだわ。夜行ってくるわね」
町の人同士でも立ち止まって話す事がままならなくなってきた。街の中で聞き耳を立てている何匹もの耳がうろうろとしているから。北の方から来た新しいもの達に仕えて、自分たちの生活を安定させている住人がちらほらと出てきているらしい。
だから、外では小さな魔法が飛び交っている。魔法がわかる住人、魔女たちしかわからない魔法が。
それも見つかるのは時間の問題だ。
私たちはどうなるのか、不安がつのる日が続く。
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