春の話
ー/ー 何度目かの春がやって来た。
それぞれ得意な魔法が違う三人の魔女に育てられ、私は彼女たちと同じ魔女と呼ばれる存在になっていた。四人の魔女のうちの一人。町の人は私を森の小さな魔女と呼ぶ。
今まで何も考えずに過ごしてきたけれど、成長して、魔女と呼ばれるようになってから、自分たちの微妙な立場を実感することが多くなった。
私たちを取り巻く環境は日に日に変化している。
人間狩りが厳しくなっているのを薄々と感じる。北からやって来た新しい顔を持つ者たちが日々南下して小さな町を統治して回っているのだ。私たちのような細くて脆い存在を捕えて働かせたり、愛玩動物にして飼っていたりするらしい。
この国で小さな顔を持ち、二本の脚を持ち、二本の腕を持つ存在は珍しい。その珍しい存在が、珍しくも魔法を使うのだ。相手が興味を持たないはずがない。多くの人間、多くの魔女が捕まったと噂が流れている。
今はまだ森の近くの町にはその手が伸びていないものの、私たちは違う地域に住む魔女と細かくやり取りをしながら、森の中で細々と暮らしていた。
しかし、魔女であるからこそ、この怪異がはびこる北の地で暮らしていけるのも事実。私たちは魔女だから、自分たちが使う事の出来る魔法をお裾分けして、周囲の人間と助け合いながらどうにか生きている。
私たちの立場は微妙だ。
姿形を変える魔法をマスターした私は、町に出て日用品の買い物をする係になっていた。顔を大きくして足を何本も生やしたまま、野菜と果物を買う。すっかり昔からの常連となっている八百屋のおかみさんは私たちが何者なのかを知っている。
「私の事はみんなにバレているんでしょう?」
「バレてる。でも、アンタたちを捕えたり売ったりしないのは、私たちがあんたたち魔女にいっぱい助けられているからさ」
森の近くの町。住人は北から来た新しい者達と私たち、旧いもの達の間の立ち位置にいるものが多い。小さな頭に大きなたくさんの手。それか、巨大な足に三つの眼。あとは似たような人が色々だ。
でも、私たち森の魔女と彼らは共存してきただけあって、町の人は私たちに優しい。
「いつもありがとうね」
「よしなさいよ」
アンタ達には世話になってるからね。そうおばさんが話す。
だから、他の地域から圧力をかけられたり、危害を加えられない限りは私はアンタらを差別しない。でも違うやつもいる。
「北から、いろんな怪異がやってきてるよ。今までとは違う、大型で狡猾な怪異さ。いずれは私たちも征服されてしまうかもしれない」
おばさんがこっそりと言い、私に売り物の青くて甘い実を手渡した。
家に帰って、あしちゃんが遅かったわね、と私を抱きしめた。この家ではただいまの代わり。
「おばさんと話しこんじゃって。町でも、何か手に入れるのが難しいみたい。どこかで荷物が止まっているみたいなの」
私はあしちゃんに甘い果実をわたす。それをカットして空中に放るあしちゃん。果物は、ひれちゃんの部屋とはねちゃんの部屋に飛んで行った。
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