羽の魔女の魔法
ー/ー 魔法を教えるのが一番下手だったのははねちゃんだった。
ひれちゃんが洗った洗濯物を乾かすのに、羽の魔法も覚えたいと言った時、はねちゃんは怒ってひれちゃんの部屋に行こうとしたのを止めるのが大変だった。
「まったく、ひれの奴。ナギに自分の仕事をまかせるなんて……」
「い、一緒に洗濯してるから大丈夫だよ」
それに、魔法を憶えるのとても面白いよ。
「洗濯の魔法だけじゃなくて、水遊びの魔法だって覚えたんだから」
はねちゃんの前で、水の妖精たちを出してみる。その繊細な動きに、はねちゃんは感心して驚いていた。
「へぇ、うまいもんだな」
「結構、才能があると思わない?」
だから、はねちゃんんからも魔法を教わって、洗濯を一から最後までやれるようになりたいのよ、と私は提案する。
「そうしたら、はねちゃんも他に時間ができるでしょ。私は家にいて遊んでいるだけだけど、遊ぶのは結構、暇なのよ」
私が家の中で時間を持て余していることをはねちゃんは知っている。そのためか、私はすんなりと羽の魔法を教わることに成功したのだった。
「羽の魔法はね、ばーっとしてばさーっとなる魔法だから……」
「待って?」
「どうかしたか?」
「イメージが全然わかないんだけど……」
はねちゃんが、空のイメージや風のイメージを教えてくれる。空は透き通ってさーっとしているらしい。風は早くも遅くもある。地上から始まるうずまきはやがて力を持って私たちを、空へと運ぶ……。
はねちゃんには羽があるけれど、私には羽がない。それでも、彼女は空を飛ぶ方法を私に教えてくれた。
浮かび上がるのは、私の身体ではなく魂。ふわふわと浮いた霊魂をイメージする。私は空であり風でもある。それらと一体化した私は、身体ごと浮かんで飛ぶことができる。
実際にはねちゃんが言った言葉はざーっとかふわ~とかいう言葉だったけれど、ひれちゃんが私に教えてくれたイメージの仕方は、はねちゃんの魔法を憶えるのにも役立った。
「高く飛びすぎても、低く飛びすぎてもだめ」
「どうして低く飛んだらいけないの?」
「見つかったら、撃ち落とされるから」
「じゃあ、高いのはなんで?」
「焼け死ぬ」
羽の魔女が言うことは一理あったが、じゃあ、打ち落とされるのはいったい誰に打ち落とされるのだろう。
それを聞くと、はねちゃんは困ったような、悲しいような顔をして言った。
「ここには、空を飛ぶことを好ましくないと思っている人がいっぱいいるんだよ」
空を飛ぶという事は、空に影を落とすこと。何も遮るものがなければ、誰かに手ぶらであると言っているようなものだ。打ち落とされるような高さにいれば簡単に捉えられてしまう。
だから、あんたも低く飛びすぎてはだめ。焼け死なない程度に高く、そして早く飛ばなくちゃだめ。
「おかしいね、空は自由だと思っていたのに」
少なくとも、ひれちゃんの水槽に比べれば、空はうんと広いと思う。
「昔はね。でも今はもう、違うんだ」
はねちゃんが空を飛ぶときに、雲の多い空や天気が悪い日を選んでいるのを私は知っている。飛び立つときに人目を避けた森の奥まで行くことも。
私はまだ、この世界で私たちが虐げられる小さな存在であることを知らなかった。
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