特別ブラックジャック、そのルールまとめ。
一・トランプは全部で四十枚。一から十の数字を扱い、ジャックからキングまでの絵札をトラッシュした特別ゲームとなる。一ゲームごとに使っていたカードもまとめてシャッフルし、常時欠損はない状態となる。
二・エースは一、あるいは十一の数字として扱える。
三・プレイヤー側、ディーラーにはゲーム開始時、それぞれ二枚配られる。
四・ヒット(カードを一枚引く)、スタンド(それ以上引かない選択をする)、スプリット(配られたカードが同数の時のみ可能、カードを分け、ベット額を支払った後それぞれヒットできる)、ダブルダウン(同額ベッド額を支払い一枚だけ引く行為、最初のみ有効)は自由である。
五・ディーラーは、十六以下の数字の際、十七以上になるまで自動的にヒットし続ける。その際に後述するシックスアンダーを達成した時にも勝敗が計算される。
六・サレンダーの際、通常ならベッド額の半額が返還されるが、今回は四分の一しか戻ってこない。なお、イカサマ発覚の場合はチップ五千枚を相手に渡さなければならない。
七・今回は特別ルールとして、役の強さはバースト(二十一より上の数)が最弱、一から二十までの数<ブラックジャック<シックスアンダーとなる。シックストゥエイトやその他の役に付いては、今回は達成したとしても無効、ただのブラックジャック、あるいはその達成した数字、カード枚数の状況を見てシックスアンダー達成とみなす。
八・ブラックジャックの際、払い戻しは三倍となる。しかしシックスアンダー(手札が六枚になるまでヒットし、バーストしなければ勝利する特別役)での勝利は、今回特別にブラックジャック以上の勝利倍率であるベット額の五倍が支払われる。ただし、シックスアンダー同士の対決はヒットしたカード枚数が多く、かつ二十一に近いプレイヤーが勝者となる。
九・勝者は勝利ごとにベット上限額を上昇(千枚、二千五百枚、五千枚の順で上昇する)させることが出来る。一度敗北すると、ベット上限額は下限である千枚にまで下がる。
十・ディーラーに勝利した際、プレイヤーの中で最も数字が二十一に近い者が真の勝者となる。これは追加ルールである。
十一・一ターンに一度のみ配られる、特殊効果の付与されたカードを使用することで、状況を動かすことが出来る。お互いの特殊効果カードは、効果発動の時まで視認することが出来ない。これは追加ルールである。
これらのルールを元に、二人の第一ゲームが始まった。お互いに千枚のチップをベットし、カードが配られた。
ディーラー側が提示しているカードは九、信一郎サイドのトランプは九と四、紫サイドのトランプはエースと三であった。信一郎に配られた特殊効果カードは、「自分の数字が三マイナスされる」もの。
(うーん、正直特別効果は弱めかな。シックスアンダーを狙いに行く方が正しいかな)
「ヒット」
ディーラーによって配られたカードは、あろうことか八。これで二十一が達成したため、自動的にターンが終了する。通常なら諸手を挙げ喜べるだろうが、特別ルール内にあるシックスアンダーの強さは計り知れない。
紫も髪を弄りながら無言で一枚ヒットを宣言し、低い数字である二をドロー。そこから様子を見ながらヒットを仕掛けるのかと思いきや、提示したドロー数はなんと一息に三枚。
「あくまで長年の勘ではありますが――これでシックスアンダーを達成できるはずです」
「……マジで?」
冗談交じりにぼやき、配られた三枚を見ると、信一郎はたまらず肩をすくめてしまった。彼女の手元に配られたカードは、残った二枚のエースと、二。初手から実に美しいほどのシックスアンダーを決めてのけたのだ。
ディーラーが開示した手札は、九と八。合計数十七でゲームは強制終了。この第一勝負は紫の圧勝であった。
「――全く、勝負師の勘ってのは、一切鈍っていないようで何よりだよ。対戦相手として不足はないが……常人が見たらイカサマしているようにしか見えないって、その卓越した勝負師としての目と勘」
「自信のあるゲームでカードにイカサマをする理由は特にありません。特に……貴方相手である以上私がイカサマを仕掛けたとて実にあっさりと見抜くでしょう。貴方は――それほどの存在なのですから」
「まァね」
紫に勝利ボーナスとして五倍のチップが支払われ、五千枚払い戻し。合計一万四千枚となった。信一郎は二十一を達成していたが、このルールにおいて完全上位互換たるシックスアンダーに敗北し千枚を失うことに。
続く第二ゲームも、紫の勝負強さは尋常ではなかった。一連勝したためベット限度額が二千五百枚に更新されていた中、先ほどの勝利額の半額である二千五百枚をそのままベット。先ほどの勝利金をそのまま突っ込んでいるような、通常なら自爆行為そのもの。しかし紫の経験からくる自身を信じていた信一郎は、変わらず千枚をベット。
先ほど配られた特殊効果カードは使わずともトラッシュ、再度配られた結果信一郎の元に配られたのは「選択したカード一枚をトラッシュする。ただしシックスアンダーに必要な枚数は変動しない」というもの。そうして配られたトランプは五と六。紫は二と八であった。ディーラー側の提示カードは七であった。
(――とりあえず、引いてから全てを考える以外ないよね。今回は特殊効果カード結構強そうだし。『知ってはいた』けど、イカサマ本当にしてないんだ)
一枚ヒットすることを示し、ディーラーよりカードが配られる。今回は低い数字である三。これで合計数は十四であった。もう一枚ヒットの意を示す信一郎であったが、手持無沙汰なのか横髪を弄る紫から、ある一言が告げられる。
「……次、貴方は多分バーストします」
「――へえ」
提示されたカードは、八。その言葉の通り、信一郎の合計数字は二十二、惜しくもバーストしてしまった。
「なら、これの出番かもね」
特殊効果カード「一枚トラッシュ」を活用し、その八のカードをトラッシュ。次のカードを引きにかかる――――しかし。その手に渡ったカードは七。合計数二十一の成立によって、役としてはまあまあ強いもののシックスアンダー不成立となった。
対する紫は、一息に二枚引くことを宣言し、その通りにカードが紫の元に流される。それぞれ三と四。合計数字十七、カード合計枚数四枚となり、先を引くのが少々怖くなる数字になった。
「――いよいよ、このカードの出番でしょうね」
紫が提示した特殊効果カードに記されていた効果は、「合計数から五を引く」というもの。引いた合計数である四枚は変わらず、合計数が十二へと変動。そのまま二枚ヒットをコールし、渡されたカードは八とエース。これにより合計カード数六枚により、シックスアンダー成立。合計数も先ほど同様二十一であり、本来ならシックスカードになるだろうが、このルールにおいて完全なる最強のシックスアンダー成立であった。
「……バケモンみたいな引きするのな、凄いよ」
「――そこまで、褒められたものではないのです。ただ、『時の運』が私に傾いているだけですから」
呆れたように深い息を吐く紫であったが、実情は凄まじいもの。ベットした二千五百枚が、シックスアンダー成立によって五倍増し。所持チップ数が二万千五百枚に膨れ上がる。対する信一郎は二度目の敗北によりまたも千枚失い、合計枚数八千枚。少々負けが見えてきた中で、信一郎はある一つの仮説を抱くのだった。