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section05「目覚めのカウントダウン」

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『警告。第零収容体、封印解除まで残り——20秒』
 警告音と共に、鉄のような重低音が地下施設全体に響き渡る。
「第零収容体って……なにそれ……!」
 みゆきが耳を押さえ、半ばパニックになって叫ぶ。だが誰も、正確な答えを持ち合わせてはいなかった。
「一樹、お前……知ってるんだろ!? 何が“出てくる”んだ!?」
 凌空が声を張り上げる。
 一樹は振り返る。そこに浮かんだ表情は——笑みだった。だが、それはもう「一樹」ではなかった。
「ようやく来たか……“本当の僕”」
 その言葉を合図にするかのように、彼の瞳が淡い金に染まる。
 直後、彼の体を中心に空気が歪み、床がひび割れた。
『……解除完了。収容対象(S-000:ORIGIN)、目覚めを確認』
 ゴゴゴッ……という地鳴りとともに、施設の一角、分厚い隔壁の向こうで何かが“蠢いた”。
「逃げた方が……よくない……っ!!」
 舞香が即座に判断し、脱出口へ走るが、天井が崩落し、鉄骨が行く手を塞ぐ。
「閉じ込められた……!」
 一樹——いや、“何か”に取り込まれつつある彼は、ゆっくりと宙に浮かんでいた。
 その背後には、不可視の手がいくつも伸び、彼を包み込んでいた。
「僕の名前は一樹。でも、それはただの“器”だった。僕の本質は《ORIGIN》——起源の残滓」
 その言葉の意味を、誰もすぐには理解できなかった。
「起源って……何の……!?」
「異能だよ、凌空くん。僕たちが今使ってる“力”の原型。(ORIGIN)は“最初の異能”だった。でも不安定すぎて、“自我”を持った」
 結香が息を呑む。
「まさか……お前、異能そのものが人格を持ったってこと?」
「正確には——“異能の失敗作が意識を得た”と言った方がいいかな。だから、僕はずっと求めていたんだ。“完全な形”を。“適合者たち”の中で、最も純粋な意志を持つ“核”を」
 そして、その視線は——まっすぐに、希帆に向けられた。
「……君だよ、希帆。君の中には、俺が求める“再構成の鍵”がある。君は、希望という幻想にすら“共鳴”できる。だから——」
 その瞬間、凌空が飛び出した。
「ふざけるなッ!! 勝手に希帆を“鍵”呼ばわりすんなッ!!」
「止めて、凌空ッ!!」
 だが遅かった。
 凌空の放った拳は、一樹の“表層”に届く前に、見えない圧に弾かれる。
 そのまま鉄骨に叩きつけられ、呻き声を上げた。
「りょ、凌空ッ!!」
 希帆が駆け寄ろうとするが、今度はその前に結香が飛び出して阻止する。
「今近づいたら……あんたもやられる!」
「でも……でも……っ!!」
 凌空は、呻きながらも立ち上がろうとしていた。目の奥に宿るのは、怒りではなかった。
“悔しさ”だった。
(どうして……! どうしてあいつを、止めてやれなかった……!)
 過去に、彼らは何かを失った。
 忘れたままにしてきた記憶が、ここでようやく形を取り始めた。
「僕たちは実験体だった。でも、それでも……一緒に笑っていた。あの頃の俺たちは……!」
 その瞬間、コアが反応し、希帆の身体に淡い光が走った。
「これは……私の中に……!」
 希帆の記憶が、奔流のように溢れ出す。
《忘れてたのは、過去じゃない——感情だった》
《一緒に泣いた》
《一緒に笑った》
《あの時、あなたの手を離さなければ——》
 その共鳴に呼応するように、みゆき、拓巳、舞香、丈、結香たちにも同様の反応が広がる。
 彼らは知らず知らずのうちに(共鳴適合体)として再構成されていた。
 だが、その中心にいたのは——間違いなく、希帆だった。



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『警告。第零収容体、封印解除まで残り——20秒』
 警告音と共に、鉄のような重低音が地下施設全体に響き渡る。
「第零収容体って……なにそれ……!」
 みゆきが耳を押さえ、半ばパニックになって叫ぶ。だが誰も、正確な答えを持ち合わせてはいなかった。
「一樹、お前……知ってるんだろ!? 何が“出てくる”んだ!?」
 凌空が声を張り上げる。
 一樹は振り返る。そこに浮かんだ表情は——笑みだった。だが、それはもう「一樹」ではなかった。
「ようやく来たか……“本当の僕”」
 その言葉を合図にするかのように、彼の瞳が淡い金に染まる。
 直後、彼の体を中心に空気が歪み、床がひび割れた。
『……解除完了。収容対象《S-000:ORIGIN》、目覚めを確認』
 ゴゴゴッ……という地鳴りとともに、施設の一角、分厚い隔壁の向こうで何かが“蠢いた”。
「逃げた方が……よくない……っ!!」
 舞香が即座に判断し、脱出口へ走るが、天井が崩落し、鉄骨が行く手を塞ぐ。
「閉じ込められた……!」
 一樹——いや、“何か”に取り込まれつつある彼は、ゆっくりと宙に浮かんでいた。
 その背後には、不可視の手がいくつも伸び、彼を包み込んでいた。
「僕の名前は一樹。でも、それはただの“器”だった。僕の本質は《ORIGIN》——起源の残滓」
 その言葉の意味を、誰もすぐには理解できなかった。
「起源って……何の……!?」
「異能だよ、凌空くん。僕たちが今使ってる“力”の原型。《ORIGIN》は“最初の異能”だった。でも不安定すぎて、“自我”を持った」
 結香が息を呑む。
「まさか……お前、異能そのものが人格を持ったってこと?」
「正確には——“異能の失敗作が意識を得た”と言った方がいいかな。だから、僕はずっと求めていたんだ。“完全な形”を。“適合者たち”の中で、最も純粋な意志を持つ“核”を」
 そして、その視線は——まっすぐに、希帆に向けられた。
「……君だよ、希帆。君の中には、俺が求める“再構成の鍵”がある。君は、希望という幻想にすら“共鳴”できる。だから——」
 その瞬間、凌空が飛び出した。
「ふざけるなッ!! 勝手に希帆を“鍵”呼ばわりすんなッ!!」
「止めて、凌空ッ!!」
 だが遅かった。
 凌空の放った拳は、一樹の“表層”に届く前に、見えない圧に弾かれる。
 そのまま鉄骨に叩きつけられ、呻き声を上げた。
「りょ、凌空ッ!!」
 希帆が駆け寄ろうとするが、今度はその前に結香が飛び出して阻止する。
「今近づいたら……あんたもやられる!」
「でも……でも……っ!!」
 凌空は、呻きながらも立ち上がろうとしていた。目の奥に宿るのは、怒りではなかった。
“悔しさ”だった。
(どうして……! どうしてあいつを、止めてやれなかった……!)
 過去に、彼らは何かを失った。
 忘れたままにしてきた記憶が、ここでようやく形を取り始めた。
「僕たちは実験体だった。でも、それでも……一緒に笑っていた。あの頃の俺たちは……!」
 その瞬間、コアが反応し、希帆の身体に淡い光が走った。
「これは……私の中に……!」
 希帆の記憶が、奔流のように溢れ出す。
《忘れてたのは、過去じゃない——感情だった》
《一緒に泣いた》
《一緒に笑った》
《あの時、あなたの手を離さなければ——》
 その共鳴に呼応するように、みゆき、拓巳、舞香、丈、結香たちにも同様の反応が広がる。
 彼らは知らず知らずのうちに、《共鳴適合体》として再構成されていた。
 だが、その中心にいたのは——間違いなく、希帆だった。