目を開くと、そこは真っ暗な空間だった。
いつだったか、アッシュの時もここに来た。
あの時はオリジナルのアッシュが消えたのだ。
今度は俺が消えるということなのだろう。
「……まあ、良くやったとは思う」
「いきなり驚いた。どんだけ上から来るんだ」
後ろからの声に振り返る。
予想通り、自分と同じ顔があった。
いや、相手が本物なんだけどさ。
……俺にしても見慣れた顔なんだよ。
俺は苦笑するが、オリジナルは腕を組んで考え込んでいる。
? これで全て解決したと思ったんだけど……。
「これから俺は周囲からの評価を改善しないといけない」
「おい、何か失礼なことを考えていないか?」
まるで俺のせいで自分の評価が下がったかのような言い草だった。
なるほど。これが本来の『キース・クロス』か。
明らかに理屈っぽいし、皮肉屋みたいだ……俺とは似ても似つかない。
入れ替わったら、ティアナにすぐ見抜かれるわけだ。
「? 猿が急に人間になったら驚くだろう?」
「よし決まった! お前、失礼な奴だな!?」
ティアナの義兄とは思えない。
しかし、オリジナルは突然笑った。
「本当に感謝はしているよ、ありがとう。
俺だけじゃあ、ティアナは守り切れなかっただろう」
やはり、こいつはティアナのために自分の体を貸したのだ。
自分の人生の一部を俺に明け渡したとも言えるだろう。
「……ちゃんと返したぞ。
多少は傷ありでも、使えないほどじゃない」
まるでリサイクルショップのような物言いになってしまう。
だが、間違いなく五体満足だ。クレームは勘弁してほしい。
すると、オリジナルは一瞬だけ驚いたように目を見開いた。
しかしすぐに「確かに受け取った」なんて返してくる。
オリジナルは楽しそうに肩を揺らしながら笑っている。
俺は何となく気恥ずかしいような気分になってしまう。
「じゃあ、もう行くぞ」
「そうか……もう会うこともないだろうな」
俺が背中を向けると、どこかマイペースな声が聞こえてくる。
しかし、言動一つ一つに芯があるような気がした。
この調子じゃあ、ティアナも苦労するだろうな。
自分のことを棚に上げてから、俺は暗闇の中へと踏み出した。
オリジナルを振り返ることも、声を掛けることもしなかった。
何をやっても、それは未練のような気がして。