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第四部 94話 一騎打ち

ー/ー



「……ここは?」
「え? え?」

 俺は咄嗟に周囲を見回す。暗い?
 隣ではティアナが混乱した声を出していた。

 カラン、という乾いた音がした。
 見れば、足元には先ほど黒鬼が投げつけてきたナイフが落ちている。

 少しずつ目が慣れてきた。
 周囲は岩か? あちこちにある小さな明かりは松明?

「ひょっとして『ドワーフの大空洞』か? く――ッ!?」
「……正解」
 
 死角から迫った真赤の光にどうにか反応する。
 長刀を受けると、小さく頷く声が聞こえてきた。

 間違いない、青鬼だ。黒鬼が言ったのは本当だった。
 本当に、ティアナと一緒に青鬼のところへ飛ばされてしまった。

「……黒も良くやるもんだな。
 ちゃんと、標的を連れて来てくれた。遅刻したというのにな」

「……あのさ、ここどこ?
 実は迷子なんだ。出口まで案内してくれないかな」

 ひとまず、軽口で時間を稼ぐ。
 青鬼の言う通り、ここは『ドワーフの大空洞』で間違いないだろう。

 よく見れば、見覚えがある気がする……いや、間違いない。
 白鬼の方へと向かっていた時、一日目の夜に休んだ広場だ。

 ……だとすれば、そうか。
 青鬼はナタリーの予想通り、王都にいたんだ。

 なら、今はゼノ達の方へと戻ろうと急いでいた?
 そのために『ドワーフの大空洞』を移動中、か。

 考えてみれば、自然な流れだろう。
 鬼が王都からゼノのいた城まで移動するのに、この道を使わない理由はない。俺たちの後をまさに辿っているわけだ。

 そこに呼び出された。
 厄介な真似をしてくれる。

 ……あっちは大丈夫なんだろうな。

「相変わらず、ふざけた態度だな?」
「いや、迷子は事実だぞ。突然呼び出されたもので」

 ふん、と青鬼が鼻を鳴らす。
 その瞬間に姿が消えた。

「く、そ……!」
「……え?」

 俺は急いで隣のティアナに腕を伸ばした。
 この状態で狙うなら、他にないだろう。反応できないティアナが首を傾げる。

 ティアナの体を引いて抱え込むと、迫る背後からの横薙ぎをナイフで弾く。
 さらに、斬り上げられた脇差を障壁でどうにか防いだ。

「チ」
「……エル」

 青鬼が舌打ちと一緒に『帰った』。
 慌てる必要はないという判断だろう。

 そこで俺は頭上に声を掛けた。まさに今がチャンスだ。すぐに頷いた気配がして、エルはティアナのお腹の上に乗った。事前に打ち合わせた通りだ。

「兄さ……!」
 ティアナが何か言うが、途中で『聞こえなくなる』。

「お前」
「はは……」

 青鬼の殺気立った声が広場に響く。
 俺は逆に笑ってやった。

 それもそのはずだ。
 今、俺と青鬼にはティアナが見えていないし、その声だって聞こえない。

 エルの能力で、ティアナの姿を隠したのだ。
 ティアナ自身に一度触れれば、エルは周りからティアナを認識させないことができる。ナタリーの策だ。よくもまあ、味方ながら狡い手を考えるものだ。

 俺の意図に気付いたのだろう。
 青鬼が長刀と脇差の二刀を構える。

「……やってくれるな。先にお前を倒せ、というわけか」
「まぁ、それが筋ってものじゃないか?」



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「……ここは?」
「え? え?」
 俺は咄嗟に周囲を見回す。暗い?
 隣ではティアナが混乱した声を出していた。
 カラン、という乾いた音がした。
 見れば、足元には先ほど黒鬼が投げつけてきたナイフが落ちている。
 少しずつ目が慣れてきた。
 周囲は岩か? あちこちにある小さな明かりは松明?
「ひょっとして『ドワーフの大空洞』か? く――ッ!?」
「……正解」
 死角から迫った真赤の光にどうにか反応する。
 長刀を受けると、小さく頷く声が聞こえてきた。
 間違いない、青鬼だ。黒鬼が言ったのは本当だった。
 本当に、ティアナと一緒に青鬼のところへ飛ばされてしまった。
「……黒も良くやるもんだな。
 ちゃんと、標的を連れて来てくれた。遅刻したというのにな」
「……あのさ、ここどこ?
 実は迷子なんだ。出口まで案内してくれないかな」
 ひとまず、軽口で時間を稼ぐ。
 青鬼の言う通り、ここは『ドワーフの大空洞』で間違いないだろう。
 よく見れば、見覚えがある気がする……いや、間違いない。
 白鬼の方へと向かっていた時、一日目の夜に休んだ広場だ。
 ……だとすれば、そうか。
 青鬼はナタリーの予想通り、王都にいたんだ。
 なら、今はゼノ達の方へと戻ろうと急いでいた?
 そのために『ドワーフの大空洞』を移動中、か。
 考えてみれば、自然な流れだろう。
 鬼が王都からゼノのいた城まで移動するのに、この道を使わない理由はない。俺たちの後をまさに辿っているわけだ。
 そこに呼び出された。
 厄介な真似をしてくれる。
 ……あっちは大丈夫なんだろうな。
「相変わらず、ふざけた態度だな?」
「いや、迷子は事実だぞ。突然呼び出されたもので」
 ふん、と青鬼が鼻を鳴らす。
 その瞬間に姿が消えた。
「く、そ……!」
「……え?」
 俺は急いで隣のティアナに腕を伸ばした。
 この状態で狙うなら、他にないだろう。反応できないティアナが首を傾げる。
 ティアナの体を引いて抱え込むと、迫る背後からの横薙ぎをナイフで弾く。
 さらに、斬り上げられた脇差を障壁でどうにか防いだ。
「チ」
「……エル」
 青鬼が舌打ちと一緒に『帰った』。
 慌てる必要はないという判断だろう。
 そこで俺は頭上に声を掛けた。まさに今がチャンスだ。すぐに頷いた気配がして、エルはティアナのお腹の上に乗った。事前に打ち合わせた通りだ。
「兄さ……!」
 ティアナが何か言うが、途中で『聞こえなくなる』。
「お前」
「はは……」
 青鬼の殺気立った声が広場に響く。
 俺は逆に笑ってやった。
 それもそのはずだ。
 今、俺と青鬼にはティアナが見えていないし、その声だって聞こえない。
 エルの能力で、ティアナの姿を隠したのだ。
 ティアナ自身に一度触れれば、エルは周りからティアナを認識させないことができる。ナタリーの策だ。よくもまあ、味方ながら狡い手を考えるものだ。
 俺の意図に気付いたのだろう。
 青鬼が長刀と脇差の二刀を構える。
「……やってくれるな。先にお前を倒せ、というわけか」
「まぁ、それが筋ってものじゃないか?」