第四部 88話 青鬼とエリーナ
ー/ー「……!」
青鬼はその気配に気が付いて、大きく後ろに跳んだ。
先ほどまで立っていた場所に氷柱が突き刺さる。
すかさず、白い剣が青鬼の後を追ってきた。
今度は青鬼の姿が消える。
「意外な人が来たな」
手頃な樹の枝から周囲を見回した。
どこかにいるはずだ、と。
「……なるほど」
僅かな風を感じて、青鬼が戻る。
ついさっきまで自分が立っていた枝が樹ごと青白い炎で消滅した。
戻ると同時に、青鬼は軽く腰を落として長刀を抜き払う。
首を狙った一撃を避けながら、袈裟に下ろされた白い剣を受け流した。
さらに青鬼はスキルを使って移動する。
先ほどの炎の出どころを狙って、別の樹の枝から見下ろした。
「いたな」
予想通り、エリーナの背中を見つけると、青鬼は枝から勢いよく跳ぶ。
さらに長刀を頭上から叩き込んだ。
……しかし、風が青鬼の長刀を逸らした。
エリーナが青鬼の方を振り返る。その手を伸ばす。
風か電撃か……青鬼は触れてはいけないと知っていた。
青鬼はもう一度戻る。
今度はゆっくりとエリーナの方に歩いて行った。
「奇襲なんて酷いじゃないか」
獣道のような狭い道で向かい合って青鬼は呟く。
対するエリーナは口元を皮肉げに歪めて見せた。
「いやぁ、悪いね。王国の捕虜になってしまったからな。
仕方ないから従っているのさ。本当は心苦しいよ」
エリーナが嘯いた。
王国は強制などしていないし、すでに捕虜でもない。
青鬼も小さく笑う。
囁くように「それは悲しいな」なんて言って、エリーナへと走り寄る。
そのまま長刀を一閃した。
しかし、やはり風がいなす。
エリーナの氷柱が青鬼へと襲い掛かる。
今度は青鬼がその姿を消した。
「……ッ」
「……まいったな」
互いに決め手を欠いた状況。
それぞれが相手の攻撃を避け続ける状態が続いた。
エリーナの攻撃をいなしながら、青鬼は疑問を深めていく。
妙な胸騒ぎがしていた。
――おかしい。
――一つ一つの手に違和感はない。
――王都の防衛も。連合との連携も。主力の衝突も。
――ここへの奇襲だって納得だ。相手が違っただけ。
――だとしたら、奴らはどこにいる?
――ここに来ると踏んでいたが、来ない。
――ならば王都に潜んでいると? そうは思わない。
だから、ここが奇襲されると考えたのだ。
少なくとも『ナタリー・クレフ』が捨て石の新国に目を奪われるとは考えにくい。王都からの連絡も途絶えている。何かやっているのは間違いない。
だが、他に狙う場所なんて――
「……チ」
青鬼は思わず自分の甘さに舌打ちした。
――本拠地しかないだろう。
「ああ、クソ……どうかしているな」
青鬼が毒づいた。
どうしてこの森が本拠地などと思ったのか、と。
「おっと。何か気付いたのかな?」
エリーナが何気なく訊いた。
青鬼はさらに納得する。これは時間稼ぎだ、と。
――ティアナ・クロスを探す時間を与えないつもりだな。
――いや、すでに時間を稼がれたか。
「ああ、用事を思い出した。
まったく、『ナタリー・クレフ』が出てきてから、戦略的には敗北ばかりだな」
「ははは。
被害者の会でも開くか? ぜひ出席させてくれよ」
エリーナは言い終わるより先に、青鬼の足元から白い槍をいくつも放つ。
しかし、それよりも早く青鬼の姿が消える。
「それじゃ、お先に」
最後に森の奥から気軽な声を響かせて、青鬼は帰っていった。
青鬼はその気配に気が付いて、大きく後ろに跳んだ。
先ほどまで立っていた場所に氷柱が突き刺さる。
すかさず、白い剣が青鬼の後を追ってきた。
今度は青鬼の姿が消える。
「意外な人が来たな」
手頃な樹の枝から周囲を見回した。
どこかにいるはずだ、と。
「……なるほど」
僅かな風を感じて、青鬼が戻る。
ついさっきまで自分が立っていた枝が樹ごと青白い炎で消滅した。
戻ると同時に、青鬼は軽く腰を落として長刀を抜き払う。
首を狙った一撃を避けながら、袈裟に下ろされた白い剣を受け流した。
さらに青鬼はスキルを使って移動する。
先ほどの炎の出どころを狙って、別の樹の枝から見下ろした。
「いたな」
予想通り、エリーナの背中を見つけると、青鬼は枝から勢いよく跳ぶ。
さらに長刀を頭上から叩き込んだ。
……しかし、風が青鬼の長刀を逸らした。
エリーナが青鬼の方を振り返る。その手を伸ばす。
風か電撃か……青鬼は触れてはいけないと知っていた。
青鬼はもう一度戻る。
今度はゆっくりとエリーナの方に歩いて行った。
「奇襲なんて酷いじゃないか」
獣道のような狭い道で向かい合って青鬼は呟く。
対するエリーナは口元を皮肉げに歪めて見せた。
「いやぁ、悪いね。王国の捕虜になってしまったからな。
仕方ないから従っているのさ。本当は心苦しいよ」
エリーナが嘯いた。
王国は強制などしていないし、すでに捕虜でもない。
青鬼も小さく笑う。
囁くように「それは悲しいな」なんて言って、エリーナへと走り寄る。
そのまま長刀を一閃した。
しかし、やはり風がいなす。
エリーナの氷柱が青鬼へと襲い掛かる。
今度は青鬼がその姿を消した。
「……ッ」
「……まいったな」
互いに決め手を欠いた状況。
それぞれが相手の攻撃を避け続ける状態が続いた。
エリーナの攻撃をいなしながら、青鬼は疑問を深めていく。
妙な胸騒ぎがしていた。
――おかしい。
――一つ一つの手に違和感はない。
――王都の防衛も。連合との連携も。主力の衝突も。
――ここへの奇襲だって納得だ。相手が違っただけ。
――だとしたら、奴らはどこにいる?
――ここに来ると踏んでいたが、来ない。
――ならば王都に潜んでいると? そうは思わない。
だから、ここが奇襲されると考えたのだ。
少なくとも『ナタリー・クレフ』が捨て石の新国に目を奪われるとは考えにくい。王都からの連絡も途絶えている。何かやっているのは間違いない。
だが、他に狙う場所なんて――
「……チ」
青鬼は思わず自分の甘さに舌打ちした。
――本拠地しかないだろう。
「ああ、クソ……どうかしているな」
青鬼が毒づいた。
どうしてこの森が本拠地などと思ったのか、と。
「おっと。何か気付いたのかな?」
エリーナが何気なく訊いた。
青鬼はさらに納得する。これは時間稼ぎだ、と。
――ティアナ・クロスを探す時間を与えないつもりだな。
――いや、すでに時間を稼がれたか。
「ああ、用事を思い出した。
まったく、『ナタリー・クレフ』が出てきてから、戦略的には敗北ばかりだな」
「ははは。
被害者の会でも開くか? ぜひ出席させてくれよ」
エリーナは言い終わるより先に、青鬼の足元から白い槍をいくつも放つ。
しかし、それよりも早く青鬼の姿が消える。
「それじゃ、お先に」
最後に森の奥から気軽な声を響かせて、青鬼は帰っていった。
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