表示設定
表示設定
目次 目次




第四部 84話 配置完了

ー/ー



 まだ夜も明けきらないような早朝。
 ナタリーは『扉』を少しだけ開けて、ピノを飛ばした。

 すぐにピノは報告に戻って来た。
 単純な情報収集ではピノの能力は群を抜いている。

 ナタリーは地上の情報を得ると、すぐに作戦を構築していった。
 すでにゼノの位置まで把握しているようだ。

「うん。白鬼と黒鬼も一緒だね」
 確認するように要点を確認して、作戦を俺たちに伝える。

「まずはあたしたちは地上に出て、ゼノ達の近くに陣取ろう。
 次にクロードさんに襲撃を掛けてもらう」

「……流石に危険じゃないか?」

 俺が咄嗟に訊き返す。クロードを囮に使うことになる。
 しかし、ナタリーは首を左右に振った。

「そこはなるべく兵が多いと思わせる。
 目的は時間稼ぎなんだから、最悪でも逃げ回ってくれれば良い」

「あの人も苦労人だなぁ」

 ナタリーの言い草に俺は思わずぼやいてしまった。
 なんというか、仕事を押し付けられる中間管理職だ。

「で、意識がそちらへと向いた瞬間に仕掛ける」
「……なるほど。大筋は連合の時と同じだな?」

 ナタリーの作戦に俺が訊き返すと、すぐに頷きが返ってくる。
 連合の交流会と同じだ。あの時と違うのは相手はこちらを認識していないはず、というところか。

 さらにピノをこき使って、ナタリーはクロードと連絡を取ったらしい。
 ピノが過労死しそうだった。使い魔を過労死させるって、えげつない気がする。

 そうして、俺たちは『ドワーフの大空洞』から外に出た。
 予想通り、外は深い森だった。

『エルフの大森林』ということなのだろう。
『扉』は大きな樹の根本に隠されていたらしい。

 しかし、少し進むと城下町に入る。
 検問などがないことを考えると、『扉』は都市内に位置するということか。

 俺たちは薄汚れたローブで体を隠しながら、城下町を目立たないようにすすむ。幸い、早朝ということもあって都市内の警備は厳しくないようだった。

「……へえ」
 アリスが興味深そうに声を出した。

 都市の住居は樹を拡張する形で作られていた。
 足場を作り、屋根を作る。その様子はハーフエルフのイメージに合っていた。

 自然と見上げる形になる。しかし、アリスの目を引いたのは王城の方だろう。
 中心にある王城は高くて立派な城壁で囲まれていて、王都のものと遜色がない。

 それでも大きく違う点は、王城の中心を貫くように一際大きな樹が立っていたところだろう。樹を元に作られた住居と同じく、樹を元に作られた城なのだ。

「……あそこか?」
「……それが面白いことに違うのよ」
 
 俺が王城を示して言うと、ナタリーは悪戯っぽく笑う。
 目的地は王城ではないようだ。

 ナタリーの先導に従って、城下町を歩いていく。
 やがて王城から離れていき、最後は城下町の中心からも離れていった。

 辿り着いたのは、一軒の屋敷だった。
 外からは他の民家と違いはない。

 ナタリーはその家を視界に収めると、小さく笑って近くの樹の影へと身をひそめた。俺たちは後を追う。

「用心深いのが裏目に出たね。わざわざ離れにいるみたいだ。
 白鬼と一緒にいるから間違いない。あのお城にいるのは影武者かな」
 
「ああ、なるほど!
 白鬼の下っ端ってことだね。確かに影武者にはぴったりだ」

 ナタリーがそう言うと、アリスはぽん、と納得したように手を打った。
 そうか。白鬼部隊を使った影武者か……この場合は逆効果だが。

 最後にナタリーはミアをちらりと見る。
 ミアはすぐに頷いた。

「確かに、白鬼はあの屋敷にいるっすね」
「よし、後は後続の動きを待とう」

 ナタリーが頷いて、俺たちは身を潜めることになった。
 待っていると、王都の方が心配になってくる。

 ……今頃は既にぶつかり合っているだろう。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第四部 85話 S級冒険者たち


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 まだ夜も明けきらないような早朝。
 ナタリーは『扉』を少しだけ開けて、ピノを飛ばした。
 すぐにピノは報告に戻って来た。
 単純な情報収集ではピノの能力は群を抜いている。
 ナタリーは地上の情報を得ると、すぐに作戦を構築していった。
 すでにゼノの位置まで把握しているようだ。
「うん。白鬼と黒鬼も一緒だね」
 確認するように要点を確認して、作戦を俺たちに伝える。
「まずはあたしたちは地上に出て、ゼノ達の近くに陣取ろう。
 次にクロードさんに襲撃を掛けてもらう」
「……流石に危険じゃないか?」
 俺が咄嗟に訊き返す。クロードを囮に使うことになる。
 しかし、ナタリーは首を左右に振った。
「そこはなるべく兵が多いと思わせる。
 目的は時間稼ぎなんだから、最悪でも逃げ回ってくれれば良い」
「あの人も苦労人だなぁ」
 ナタリーの言い草に俺は思わずぼやいてしまった。
 なんというか、仕事を押し付けられる中間管理職だ。
「で、意識がそちらへと向いた瞬間に仕掛ける」
「……なるほど。大筋は連合の時と同じだな?」
 ナタリーの作戦に俺が訊き返すと、すぐに頷きが返ってくる。
 連合の交流会と同じだ。あの時と違うのは相手はこちらを認識していないはず、というところか。
 さらにピノをこき使って、ナタリーはクロードと連絡を取ったらしい。
 ピノが過労死しそうだった。使い魔を過労死させるって、えげつない気がする。
 そうして、俺たちは『ドワーフの大空洞』から外に出た。
 予想通り、外は深い森だった。
『エルフの大森林』ということなのだろう。
『扉』は大きな樹の根本に隠されていたらしい。
 しかし、少し進むと城下町に入る。
 検問などがないことを考えると、『扉』は都市内に位置するということか。
 俺たちは薄汚れたローブで体を隠しながら、城下町を目立たないようにすすむ。幸い、早朝ということもあって都市内の警備は厳しくないようだった。
「……へえ」
 アリスが興味深そうに声を出した。
 都市の住居は樹を拡張する形で作られていた。
 足場を作り、屋根を作る。その様子はハーフエルフのイメージに合っていた。
 自然と見上げる形になる。しかし、アリスの目を引いたのは王城の方だろう。
 中心にある王城は高くて立派な城壁で囲まれていて、王都のものと遜色がない。
 それでも大きく違う点は、王城の中心を貫くように一際大きな樹が立っていたところだろう。樹を元に作られた住居と同じく、樹を元に作られた城なのだ。
「……あそこか?」
「……それが面白いことに違うのよ」
 俺が王城を示して言うと、ナタリーは悪戯っぽく笑う。
 目的地は王城ではないようだ。
 ナタリーの先導に従って、城下町を歩いていく。
 やがて王城から離れていき、最後は城下町の中心からも離れていった。
 辿り着いたのは、一軒の屋敷だった。
 外からは他の民家と違いはない。
 ナタリーはその家を視界に収めると、小さく笑って近くの樹の影へと身をひそめた。俺たちは後を追う。
「用心深いのが裏目に出たね。わざわざ離れにいるみたいだ。
 白鬼と一緒にいるから間違いない。あのお城にいるのは影武者かな」
「ああ、なるほど!
 白鬼の下っ端ってことだね。確かに影武者にはぴったりだ」
 ナタリーがそう言うと、アリスはぽん、と納得したように手を打った。
 そうか。白鬼部隊を使った影武者か……この場合は逆効果だが。
 最後にナタリーはミアをちらりと見る。
 ミアはすぐに頷いた。
「確かに、白鬼はあの屋敷にいるっすね」
「よし、後は後続の動きを待とう」
 ナタリーが頷いて、俺たちは身を潜めることになった。
 待っていると、王都の方が心配になってくる。
 ……今頃は既にぶつかり合っているだろう。