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エピソードハゲ

ー/ー




 世界を救おうとした一人の男がいた。
 彼の名は、レオン・ストロングウィル。
 頭が良いほうではないが、とても真面目で正義感の強い少年。
 ルックスはよく女性に間違えられるほどキレイな顔立ちだ。
 髪色はブロンド。後ろで一くくりにしており、緑の目からはまるで金獅子といわんばかりの凄みと魅力を感じる。

 レオンが15歳の時に故郷の村が魔王軍によって、侵略されたことによって、彼ははじめて剣をふるった。
 気が付けば、モンスターを一振りで倒していたことにより、『彼こそ勇者』と噂は広まった。
 
 レオンが動けば、自然とパーティーもそろった。
 天才魔法少女のエレナ・パープル、巨大な斧を片手で振るう剛腕のローガン・ブロンソン、老いた僧侶のグレン・モチヅキ。
 一人の勇者が四人の勇者になったのだ。
 そして、王国に招かれると、年老いた王が言った。
「姫を……娘をさらった魔王を倒してくれ、そして姫を連れ戻してくれ」
「御意」
 そうなれば、魔王軍に対して、レオンたちの反撃は早く、そして、その強さを見せつけた。

 旅の途中、レオンはある伝説を聞いた。
 神殿に眠る聖剣『エクスキャリバー』
 その剣は人を選ぶという。驚いたことに人と話すことができるという。
 聖剣に選ばれなければ、剣の重みが重圧となり、手が折れてしまうのだとか……。
 レオンは躊躇せず、エクスキャリバーを両手で優しく包むとこう話しかけられた。
『少年、名は?』
「レオン、魔王を倒す男だ。俺に力を貸してくれ」
『いいだろう、おもしろそうだ』

 それから一年もしないうちにレオンたち勇者一行は、魔王城へ乗り込むことに成功した。
 魔王は漆黒の鎧をまとい、レオンより5倍ほどの身長と筋肉で力強さを誇っていた。
 黒い長髪からは二本の巨大な太い角が二本。
 口元にも犬歯のようなキバが。
 見えるはずのないオーラが、紫のような黒のような色を魔王からは感じ取れた。

「驚いたお前のような小僧が勇者だと? 笑わせる」
「魔王よ! アリサ姫を返せ!」
「勇者さま!」

 純白のドレスをまとった姫アリサが悲鳴をあげる。
 レオンはエクスキャリバーに力をこめる。
 魔法少女エレナが叫ぶ。
 「浮遊魔法をかけるわ!」
 「頼む!」
 エレナが詠唱しだすと、レオンの足元からは魔法陣が浮かびあがり、小さな翼がブーツに生えた。
 すると、レオンはまるで宙に階段があるかのようにピョンピョンと跳ね上がり、魔王に剣を振りかざす。
 もちろん、戦士のローガンも黙ってはいない。
 横から雄たけびをあげながら斧を振り回して、魔王の注意を自身に向けている。
 僧侶のグレンは防御魔法を展開。

 今まで通り……そうレオンは思っていた。
 だが、その夢は志は魔王の拳で砕かれた。
「なんだその貧弱な腕は? そして、そのメスのような顔、身体……お前はそんな肉体で我に歯向かうか」
「くっ……俺は負けない! アリサ姫を助け、必ずお前を倒して、世界を救う!」
「フン、少しは楽しめると思ったがな……」
 魔王が軽く手に力を入れただけ。
 それだけなのに、レオンの右腕は骨ごと砕け散った。
「ぐああああ!」
「レオン、待っておれ!」
 すぐにグレンが治療に入る。
 邪魔が入った! と言わんばかりに魔王は激昂する。
 雄たけびをあげながら、巨大な拳を一振りすれば、城を支える柱が粉々になる。

 エレナが得意とする火炎魔法で応対、その間戦士のローガンは脇腹目掛けて斧を全力で振るう。
 しかし二人の攻撃は魔王に傷1つ、つけない。
「お前ら、よくこんな力で我の城までたどり着けたな」
 魔王の目が深紅に光る。
 気が付いたときは全滅していた。

 レオンを含め四人のパーティーはかろうじて命だけは助かったが、満身創痍。
 助かったというより、魔王に遊ばれたようなものだ。
「おい、もう終わりか勇者レオンよ」
「まだだ、まだ終わらん!」
「よいだろう、ならば余興だ。十年だ」
「なにがだ!?」
「十年肉体を鍛え上げろ、その聖剣エクスキャリバーに、認められたくせにお前は貧弱だ。エクスキャリバーに見合う肉体を手に入れた時、また我に挑むがよい」
「貴様!」
「レオン、ここは一旦逃げるのよ!」
 エレナは自身も血を流しながらも、よろよろとレオンの腕をひっぱる。
「しかし、アリサ姫が……」
 そう言いかけた時はもう時すでに遅く、エレナの移動魔法で転移していた。
 見慣れた土地、レオンの育った村だった。
 
 四人は魔王の圧倒的な力に絶望し、各々が沈黙のまま帰路へと足を薦めた。
 残されたのはレオン一人。

 レオンは誓った。
「おい、エクスキャリバー」
『なんだレオン?』
「俺はしばらくこの村にこもる、だからお前は神殿にもどれ」
『わかった、時が来れば、また私を呼べ』

 それから十年の月日が流れた……。
 勇者の名は悪名に代わり、「落ちぶれた勇者」「姫を見捨てた男」「悪魔」様々な悪評が世界中に広まった。
 約束の十年がたってもレオンは姿を表すことはなかった。
 それから更に五年後……。
 
 一人の男が村から出てきた。
 巨木のような腕、身長は190センチほど、無精ひげにスキンヘッド。
 盗賊のような悪人面。
「俺が来た。もう安心しろ」
 そう、変わり果てた彼こそが、15年前に世界を救おうとした美青年の勇者レオン・ストロングウィルである。
 肉体だけを鍛え上げた彼は代償として、毛髪を失った。
 神殿で主をまっていたエクスキャリバーに再会する。
『待ちわびたぞ、レオン』
「ああ、また俺に力を貸してくれ」
 試しに世界で一番硬いオリハルコンを的に剣をふるった。
 確かにオリハルコンは真っ二つに割れた。だが、それだけではなかった。
 エクスキャリバーさえも粉々になってしまった。
「……」
『貴様! 許さんぞ!』
 破片と化した聖剣は未だ、会話をできるようだ。
「俺は強くなりすぎたのか?」
 そう言い残すと、彼は拳だけで魔王を倒すことを決意した。
 世界中から彼を見ては口々に言い伝えた。
「勇者がハゲたら武道家に転職した」と……。
   了


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 世界を救おうとした一人の男がいた。
 彼の名は、レオン・ストロングウィル。
 頭が良いほうではないが、とても真面目で正義感の強い少年。
 ルックスはよく女性に間違えられるほどキレイな顔立ちだ。
 髪色はブロンド。後ろで一くくりにしており、緑の目からはまるで金獅子といわんばかりの凄みと魅力を感じる。
 レオンが15歳の時に故郷の村が魔王軍によって、侵略されたことによって、彼ははじめて剣をふるった。
 気が付けば、モンスターを一振りで倒していたことにより、『彼こそ勇者』と噂は広まった。
 レオンが動けば、自然とパーティーもそろった。
 天才魔法少女のエレナ・パープル、巨大な斧を片手で振るう剛腕のローガン・ブロンソン、老いた僧侶のグレン・モチヅキ。
 一人の勇者が四人の勇者になったのだ。
 そして、王国に招かれると、年老いた王が言った。
「姫を……娘をさらった魔王を倒してくれ、そして姫を連れ戻してくれ」
「御意」
 そうなれば、魔王軍に対して、レオンたちの反撃は早く、そして、その強さを見せつけた。
 旅の途中、レオンはある伝説を聞いた。
 神殿に眠る聖剣『エクスキャリバー』
 その剣は人を選ぶという。驚いたことに人と話すことができるという。
 聖剣に選ばれなければ、剣の重みが重圧となり、手が折れてしまうのだとか……。
 レオンは躊躇せず、エクスキャリバーを両手で優しく包むとこう話しかけられた。
『少年、名は?』
「レオン、魔王を倒す男だ。俺に力を貸してくれ」
『いいだろう、おもしろそうだ』
 それから一年もしないうちにレオンたち勇者一行は、魔王城へ乗り込むことに成功した。
 魔王は漆黒の鎧をまとい、レオンより5倍ほどの身長と筋肉で力強さを誇っていた。
 黒い長髪からは二本の巨大な太い角が二本。
 口元にも犬歯のようなキバが。
 見えるはずのないオーラが、紫のような黒のような色を魔王からは感じ取れた。
「驚いたお前のような小僧が勇者だと? 笑わせる」
「魔王よ! アリサ姫を返せ!」
「勇者さま!」
 純白のドレスをまとった姫アリサが悲鳴をあげる。
 レオンはエクスキャリバーに力をこめる。
 魔法少女エレナが叫ぶ。
 「浮遊魔法をかけるわ!」
 「頼む!」
 エレナが詠唱しだすと、レオンの足元からは魔法陣が浮かびあがり、小さな翼がブーツに生えた。
 すると、レオンはまるで宙に階段があるかのようにピョンピョンと跳ね上がり、魔王に剣を振りかざす。
 もちろん、戦士のローガンも黙ってはいない。
 横から雄たけびをあげながら斧を振り回して、魔王の注意を自身に向けている。
 僧侶のグレンは防御魔法を展開。
 今まで通り……そうレオンは思っていた。
 だが、その夢は志は魔王の拳で砕かれた。
「なんだその貧弱な腕は? そして、そのメスのような顔、身体……お前はそんな肉体で我に歯向かうか」
「くっ……俺は負けない! アリサ姫を助け、必ずお前を倒して、世界を救う!」
「フン、少しは楽しめると思ったがな……」
 魔王が軽く手に力を入れただけ。
 それだけなのに、レオンの右腕は骨ごと砕け散った。
「ぐああああ!」
「レオン、待っておれ!」
 すぐにグレンが治療に入る。
 邪魔が入った! と言わんばかりに魔王は激昂する。
 雄たけびをあげながら、巨大な拳を一振りすれば、城を支える柱が粉々になる。
 エレナが得意とする火炎魔法で応対、その間戦士のローガンは脇腹目掛けて斧を全力で振るう。
 しかし二人の攻撃は魔王に傷1つ、つけない。
「お前ら、よくこんな力で我の城までたどり着けたな」
 魔王の目が深紅に光る。
 気が付いたときは全滅していた。
 レオンを含め四人のパーティーはかろうじて命だけは助かったが、満身創痍。
 助かったというより、魔王に遊ばれたようなものだ。
「おい、もう終わりか勇者レオンよ」
「まだだ、まだ終わらん!」
「よいだろう、ならば余興だ。十年だ」
「なにがだ!?」
「十年肉体を鍛え上げろ、その聖剣エクスキャリバーに、認められたくせにお前は貧弱だ。エクスキャリバーに見合う肉体を手に入れた時、また我に挑むがよい」
「貴様!」
「レオン、ここは一旦逃げるのよ!」
 エレナは自身も血を流しながらも、よろよろとレオンの腕をひっぱる。
「しかし、アリサ姫が……」
 そう言いかけた時はもう時すでに遅く、エレナの移動魔法で転移していた。
 見慣れた土地、レオンの育った村だった。
 四人は魔王の圧倒的な力に絶望し、各々が沈黙のまま帰路へと足を薦めた。
 残されたのはレオン一人。
 レオンは誓った。
「おい、エクスキャリバー」
『なんだレオン?』
「俺はしばらくこの村にこもる、だからお前は神殿にもどれ」
『わかった、時が来れば、また私を呼べ』
 それから十年の月日が流れた……。
 勇者の名は悪名に代わり、「落ちぶれた勇者」「姫を見捨てた男」「悪魔」様々な悪評が世界中に広まった。
 約束の十年がたってもレオンは姿を表すことはなかった。
 それから更に五年後……。
 一人の男が村から出てきた。
 巨木のような腕、身長は190センチほど、無精ひげにスキンヘッド。
 盗賊のような悪人面。
「俺が来た。もう安心しろ」
 そう、変わり果てた彼こそが、15年前に世界を救おうとした美青年の勇者レオン・ストロングウィルである。
 肉体だけを鍛え上げた彼は代償として、毛髪を失った。
 神殿で主をまっていたエクスキャリバーに再会する。
『待ちわびたぞ、レオン』
「ああ、また俺に力を貸してくれ」
 試しに世界で一番硬いオリハルコンを的に剣をふるった。
 確かにオリハルコンは真っ二つに割れた。だが、それだけではなかった。
 エクスキャリバーさえも粉々になってしまった。
「……」
『貴様! 許さんぞ!』
 破片と化した聖剣は未だ、会話をできるようだ。
「俺は強くなりすぎたのか?」
 そう言い残すと、彼は拳だけで魔王を倒すことを決意した。
 世界中から彼を見ては口々に言い伝えた。
「勇者がハゲたら武道家に転職した」と……。
   了