俺たちは次の日も『ドワーフの大空洞』を進んでいた。
目的地が近くなってきたようで、ナタリーとミアは何やら話し合っている。
「……ぴ」
「ピノ?」
そこで、どことなく急いだ様子でピノが戻って来た。
先行して様子を窺っていたのだ。
ナタリーはピノと何度かやり取りをした後、珍しく真剣な様子で俺たちを振り返った。
「……正面から鬼が近づいてきている。
こちらに気付いた様子はないけど、一度やり過ごさなきゃいけない」
全員が息を呑む。鬼は王都に集まっている、という予想だが、全くいないということもないだろう。想定内の事態ではある。
ナタリーは俺たちに行先を指示する。迷いはない様子だった。
ピノに調べさせた上で、周辺の地形を頭に入れているのだろう。
少し引き返した後、俺たちは脇道へと入った。
しばらく進むと、小部屋のような場所に出る。
奇妙な部屋だった。
まるで実験室のような、鍛冶場のような。
この部屋からはいくつもの通路が伸びていて、入り組んでいるようだ。
確かに隠れること、逃げることにうってつけだろう。
全員で息を潜めて待つ。
何かあれば入り組んだ通路へと逃げ込むつもりだった。
やがて足音が聞こえてきた。
話し声も聞こえる。数は多くない。
入って来るかとも思ったが……鬼たちはこの部屋の前を通り過ぎて行った。
全員で胸を撫でおろす。
戦闘になっても負けないだろうが、今見つかることは避けたかった。
改めて、小部屋を見回した。
よく見ると、雑多に武器や道具が置いてある。
高価そうな武器が落ちていたり、使い道が分からない道具も転がっている。
さらに目を凝らすと、見覚えがあるものもあった。
業物らしい長刀と脇差。
大きな黒い金棒もある。
「鬼の資金源になっていた武器……黒鬼印の作成場所かな」
ナタリーが呟いた。
ここはきっと黒鬼の工房だ。
あまり考えずにここまで来たが、これから黒鬼とも戦うことになるのだろう。
一度も戦ったことがない相手だ。
……全ての鬼の生みの親。
「行こう」
ナタリーの言葉で進軍を再開する。