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第四部 79話 入口

ー/ー



 ナタリーの後に続いて、森の中を進む。
 記憶は鮮明に戻ったらしい。足取りに迷いはなかった。

 メンバーは全員……と言いたいところだが、ソニア婆さんだけは置いて来た。
 どうしても付いていくと聞かなかったが、流石に体力的に難しい。

 そこでナタリーが得意の口八丁で説得した。
 今頃はナタリーの言葉を信じて、健気にティアナの囮役をしているはず。

 まるで、ティアナと一緒に潜伏しているかのように振舞っているのだ。
 いや、実際のところ、青鬼から見ると時間の無駄だから有効な手なんだけど……ナタリーの恐ろしいところである。

 何せ「実際に青鬼が来たらどうするんだ?」と訊けば「いや、実際は来ないでしょ」なんて答えるのだ。

 先にゼノのところに行くよ、と。
 ……要するに無駄な囮である。

 一時間ほど歩いただろうか。
 聞いていた話では、そろそろ『扉』に着く頃だ。

「……ぴ」

 小さく鳴いて、先行していたピノがナタリーの元へと戻って来た。
 ナタリーの肩に乗ると、いくつか相談をする。

「見張りはいないみたい。
 ……正直、ひょっとしたらいるかもとは思っていたんだけど」

 ナタリーの言葉に安心して、俺たちはさらに先へと急ぐ。
 意外とあっさり目的地まで辿り着いた。

「……これは知らないと気付かないっすねぇ」
「でも、ナタリーは昔見つけたんでしょ?」
「流石というか……目敏い?」

 ミアが呟くと、アリスと加奈が応じる。
 そこは崖の割れ目の奥に隠されているような空間だった。

 大の大人が少し身を縮めれば入れる程度の隙間。
 しかも、ご丁寧に木々で隠されている。

「あれ? 行き止まりだぞ」
「この割れ目の中に入って……登るのよ」
「? 登る?」

 先行した俺が首を傾げると、ナタリーが答える。
 だが、その意味は分からない。それでも上を見上げた。

 すると、確かに崖の割れ目は上まで続いている。
 しかし、せいぜい俺の三倍くらいの高さまでだ。

 一見、何もないように見える。
 それでも、ナタリーは俺に小さく頷いた。

「……マジか」

 言われた通りに登ってみると、巧妙な死角になっている通路があった。
 通路は緩やかに下っていて、そのまま進めば崖の割れ目の奥に進めるようだ。

 要するに、一見は行き止まりに見えるが、実は段差になっていたということらしい。こんなもの、普通は気付かないだろ。どこまで穿った見方だよ。

 俺は登りやすいように、ロープだけ設置すると先に進んだ。
 すぐに広場のような空間に出る。広場の壁には目的の『扉』が見えた。

 何の模様か、簡単な装飾が施されている。
 この向こう側が『ドワーフの大空洞』ということだろう。



 全員が広場に入る。
 ナタリーに促されて、グレイが一歩前に出た。

「これで開かなかったら笑えるな?」
「……グレイが自分を王族だと勘違いしたことになる」

 俺が呟いたら、隣にいたセシルが小さく笑う。
 思わず俺も噴き出してしまった。

「あのキャラで自称王子様かぁ」
「……大丈夫。開けば本当に王子様」
「あ、そうか。開けば良いんだな……開けば」
「……うん。友達として陰ながら応援してあげよ。自称は辛い」

『扉』の前で緊張するグレイを他所に俺とセシルが盛り上がっている。
 他のメンバーは笑いを堪えているように見えた。

「「せーのっ、王子様頑張ってー」」

「お前ら後で覚えてろよッ!?」

 俺とセシルの小さな声援にグレイが半ばキレた様子で言い返す。
 ナタリーが「急ぎなさいよ」と言って、グレイは『扉』に触れた。

 すると、分かってはいたが『扉』はちゃんと開いた。
 グレイはキッと俺たちを睨む。開いても微妙な空気感だった。



 中に入ると、そこはすでに洞窟の中と言って良かった。
 なるほど。段差を登った後の下り坂で、すでに地下まで下りていたのか。

「この空間が大陸中に張り巡らされていると考えるとすごいな」
「予想以上に『扉』も隠されていますしね……」

 俺が中を見回しながら言うと、ティアナが返してくれた。
 大峡谷の陰や崖の中だ。簡単には見つからないだろう。

 中は薄暗く、少し湿度が高かった。
 奥へと続く一本道は先が見通せず、一定間隔で松明が置かれている。

 火を灯しながら進むということだろう。
 ナタリーは少しの間、道の先を見つめていたが、やがて全員に声を掛けた。

「ゆっくりと進もう。あ、絶対に『扉』は閉じないでね。
 後でピノに案内してもらって、後続にも使ってもらうから」



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 ナタリーの後に続いて、森の中を進む。
 記憶は鮮明に戻ったらしい。足取りに迷いはなかった。
 メンバーは全員……と言いたいところだが、ソニア婆さんだけは置いて来た。
 どうしても付いていくと聞かなかったが、流石に体力的に難しい。
 そこでナタリーが得意の口八丁で説得した。
 今頃はナタリーの言葉を信じて、健気にティアナの囮役をしているはず。
 まるで、ティアナと一緒に潜伏しているかのように振舞っているのだ。
 いや、実際のところ、青鬼から見ると時間の無駄だから有効な手なんだけど……ナタリーの恐ろしいところである。
 何せ「実際に青鬼が来たらどうするんだ?」と訊けば「いや、実際は来ないでしょ」なんて答えるのだ。
 先にゼノのところに行くよ、と。
 ……要するに無駄な囮である。
 一時間ほど歩いただろうか。
 聞いていた話では、そろそろ『扉』に着く頃だ。
「……ぴ」
 小さく鳴いて、先行していたピノがナタリーの元へと戻って来た。
 ナタリーの肩に乗ると、いくつか相談をする。
「見張りはいないみたい。
 ……正直、ひょっとしたらいるかもとは思っていたんだけど」
 ナタリーの言葉に安心して、俺たちはさらに先へと急ぐ。
 意外とあっさり目的地まで辿り着いた。
「……これは知らないと気付かないっすねぇ」
「でも、ナタリーは昔見つけたんでしょ?」
「流石というか……目敏い?」
 ミアが呟くと、アリスと加奈が応じる。
 そこは崖の割れ目の奥に隠されているような空間だった。
 大の大人が少し身を縮めれば入れる程度の隙間。
 しかも、ご丁寧に木々で隠されている。
「あれ? 行き止まりだぞ」
「この割れ目の中に入って……登るのよ」
「? 登る?」
 先行した俺が首を傾げると、ナタリーが答える。
 だが、その意味は分からない。それでも上を見上げた。
 すると、確かに崖の割れ目は上まで続いている。
 しかし、せいぜい俺の三倍くらいの高さまでだ。
 一見、何もないように見える。
 それでも、ナタリーは俺に小さく頷いた。
「……マジか」
 言われた通りに登ってみると、巧妙な死角になっている通路があった。
 通路は緩やかに下っていて、そのまま進めば崖の割れ目の奥に進めるようだ。
 要するに、一見は行き止まりに見えるが、実は段差になっていたということらしい。こんなもの、普通は気付かないだろ。どこまで穿った見方だよ。
 俺は登りやすいように、ロープだけ設置すると先に進んだ。
 すぐに広場のような空間に出る。広場の壁には目的の『扉』が見えた。
 何の模様か、簡単な装飾が施されている。
 この向こう側が『ドワーフの大空洞』ということだろう。
 全員が広場に入る。
 ナタリーに促されて、グレイが一歩前に出た。
「これで開かなかったら笑えるな?」
「……グレイが自分を王族だと勘違いしたことになる」
 俺が呟いたら、隣にいたセシルが小さく笑う。
 思わず俺も噴き出してしまった。
「あのキャラで自称王子様かぁ」
「……大丈夫。開けば本当に王子様」
「あ、そうか。開けば良いんだな……開けば」
「……うん。友達として陰ながら応援してあげよ。自称は辛い」
『扉』の前で緊張するグレイを他所に俺とセシルが盛り上がっている。
 他のメンバーは笑いを堪えているように見えた。
「「せーのっ、王子様頑張ってー」」
「お前ら後で覚えてろよッ!?」
 俺とセシルの小さな声援にグレイが半ばキレた様子で言い返す。
 ナタリーが「急ぎなさいよ」と言って、グレイは『扉』に触れた。
 すると、分かってはいたが『扉』はちゃんと開いた。
 グレイはキッと俺たちを睨む。開いても微妙な空気感だった。
 中に入ると、そこはすでに洞窟の中と言って良かった。
 なるほど。段差を登った後の下り坂で、すでに地下まで下りていたのか。
「この空間が大陸中に張り巡らされていると考えるとすごいな」
「予想以上に『扉』も隠されていますしね……」
 俺が中を見回しながら言うと、ティアナが返してくれた。
 大峡谷の陰や崖の中だ。簡単には見つからないだろう。
 中は薄暗く、少し湿度が高かった。
 奥へと続く一本道は先が見通せず、一定間隔で松明が置かれている。
 火を灯しながら進むということだろう。
 ナタリーは少しの間、道の先を見つめていたが、やがて全員に声を掛けた。
「ゆっくりと進もう。あ、絶対に『扉』は閉じないでね。
 後でピノに案内してもらって、後続にも使ってもらうから」