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第四部 69話 にっこり

ー/ー



 その日の内に俺たちはミアと一緒に王都へと向かった。
 組合長とラルフが来た以上は任せて問題ないという判断らしい。

「……フェリスさん達も来るみたいだから、大丈夫だとは思うけれど、もう少しゆっくりしても良かったんじゃないか?」
「そーだよ、疲れたよ」

 馬車の中で俺がナタリー訊くと、すぐにアリスが神妙に頷いた。
 いや、お前は体力を鍛えてるところだからちょうど良いんだけど。

「いや、すぐに移動しないと危ないよ」
 しかしナタリーはだらだらと欠伸をしながらも、きっぱり答える。

「? 危ない?」
 俺はよく分からずに首を傾げた。

「……うん。今回の一件で、敵の狙いは決まったの。
 理由は分からないけれど、新国と鬼の狙いはティアナよ」

 俺が思わず息を呑むと、ナタリーは続けた。ティアナは今も隠れている。
 ひょっとして新国に連れていきたいのかな、なんて見当違いなことも言う。

 もっとも、運命と鍵に関する知識がないのだから、仕方ない。
 いや、その知識がないのに、良くここまで本質を見ていると言うべきか。

「あの状況で、あたしたちを狙う理由はそれしかない。
 ……だとすれば、ティアナを守るべきなのは間違いないよ」

 その点に異論はない。
 俺は頷いた。

「じゃあ、そのために有効な手段は?
 ……簡単よ、ティアナの居場所を特定させなければ良い」

 なるほど。確かにあのままレンブラントにいれば、鬼たちは襲撃の計画を立てやすい。少なくとも、青鬼はいつでも仕掛けることはできる。

「だけど、結局ティアナはあたしたち……特にキースとは一緒に行動してもらうしかない。そこで移動よ。私たちの正確な現在位置を特定させない」

 確かに青鬼は俺たちがレンブラントにいるのか、あるいは王都にいるのか判断ができないだろう。青鬼が目視するか、王都やレンブラントを見張るしかないのだ。

「あ……」
 そこまで考えて、気が付いた。思わずミアを見る。

「そう。そういう意味でも師匠はお手柄なの。
 鬼の貴重な情報源だったはずの白鬼に対策を立てられる」

 言いながら、ナタリーは隣のミアに軽く触れた。
 ミアはナタリーと同じようにだらだらしている。

 だが、もしも白鬼が近づけばすぐに伝えてくれるだろう。
 白鬼が俺たちの位置を把握したら、俺たちもそれを知ることが出来るのだ。

「他に気を付けるのは下っ端の鬼くらい。
 ……白鬼がいない間は居場所をころころと変えてやろ?」

 ナタリーがにっこりと笑う。
 うわぁ、性格悪い顔だなぁ。

 白鬼の奇襲はミアがいれば防げる。
 白鬼が目を離した隙に移動すれば、正確な居場所は把握されにくい。

 確かにティアナの居場所が分からなければ、青鬼は奇襲もできない。
 ナタリーの言う通り、後は下っ端の鬼が俺たちを監視するしかない。

 ……あるいは、青鬼が正面から来るか。

「だから、今は王都に行くのが正解。
 レンブラントにはまだ潜伏している鬼もいるかもしれない」

 俺は頷くしかない。
 鬼たちはナタリーのこういう能力を警戒しているのだ。
 だから最優先で殺しに来た。

「いや、でも……疲れたんだよ?」
 今まで黙って聞いていたアリスが呟くように言った。

 いや、お前は一体何を聞いていたんだ?



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 その日の内に俺たちはミアと一緒に王都へと向かった。
 組合長とラルフが来た以上は任せて問題ないという判断らしい。
「……フェリスさん達も来るみたいだから、大丈夫だとは思うけれど、もう少しゆっくりしても良かったんじゃないか?」
「そーだよ、疲れたよ」
 馬車の中で俺がナタリー訊くと、すぐにアリスが神妙に頷いた。
 いや、お前は体力を鍛えてるところだからちょうど良いんだけど。
「いや、すぐに移動しないと危ないよ」
 しかしナタリーはだらだらと欠伸をしながらも、きっぱり答える。
「? 危ない?」
 俺はよく分からずに首を傾げた。
「……うん。今回の一件で、敵の狙いは決まったの。
 理由は分からないけれど、新国と鬼の狙いはティアナよ」
 俺が思わず息を呑むと、ナタリーは続けた。ティアナは今も隠れている。
 ひょっとして新国に連れていきたいのかな、なんて見当違いなことも言う。
 もっとも、運命と鍵に関する知識がないのだから、仕方ない。
 いや、その知識がないのに、良くここまで本質を見ていると言うべきか。
「あの状況で、あたしたちを狙う理由はそれしかない。
 ……だとすれば、ティアナを守るべきなのは間違いないよ」
 その点に異論はない。
 俺は頷いた。
「じゃあ、そのために有効な手段は?
 ……簡単よ、ティアナの居場所を特定させなければ良い」
 なるほど。確かにあのままレンブラントにいれば、鬼たちは襲撃の計画を立てやすい。少なくとも、青鬼はいつでも仕掛けることはできる。
「だけど、結局ティアナはあたしたち……特にキースとは一緒に行動してもらうしかない。そこで移動よ。私たちの正確な現在位置を特定させない」
 確かに青鬼は俺たちがレンブラントにいるのか、あるいは王都にいるのか判断ができないだろう。青鬼が目視するか、王都やレンブラントを見張るしかないのだ。
「あ……」
 そこまで考えて、気が付いた。思わずミアを見る。
「そう。そういう意味でも師匠はお手柄なの。
 鬼の貴重な情報源だったはずの白鬼に対策を立てられる」
 言いながら、ナタリーは隣のミアに軽く触れた。
 ミアはナタリーと同じようにだらだらしている。
 だが、もしも白鬼が近づけばすぐに伝えてくれるだろう。
 白鬼が俺たちの位置を把握したら、俺たちもそれを知ることが出来るのだ。
「他に気を付けるのは下っ端の鬼くらい。
 ……白鬼がいない間は居場所をころころと変えてやろ?」
 ナタリーがにっこりと笑う。
 うわぁ、性格悪い顔だなぁ。
 白鬼の奇襲はミアがいれば防げる。
 白鬼が目を離した隙に移動すれば、正確な居場所は把握されにくい。
 確かにティアナの居場所が分からなければ、青鬼は奇襲もできない。
 ナタリーの言う通り、後は下っ端の鬼が俺たちを監視するしかない。
 ……あるいは、青鬼が正面から来るか。
「だから、今は王都に行くのが正解。
 レンブラントにはまだ潜伏している鬼もいるかもしれない」
 俺は頷くしかない。
 鬼たちはナタリーのこういう能力を警戒しているのだ。
 だから最優先で殺しに来た。
「いや、でも……疲れたんだよ?」
 今まで黙って聞いていたアリスが呟くように言った。
 いや、お前は一体何を聞いていたんだ?