その日の内に俺たちはミアと一緒に王都へと向かった。
組合長とラルフが来た以上は任せて問題ないという判断らしい。
「……フェリスさん達も来るみたいだから、大丈夫だとは思うけれど、もう少しゆっくりしても良かったんじゃないか?」
「そーだよ、疲れたよ」
馬車の中で俺がナタリー訊くと、すぐにアリスが神妙に頷いた。
いや、お前は体力を鍛えてるところだからちょうど良いんだけど。
「いや、すぐに移動しないと危ないよ」
しかしナタリーはだらだらと欠伸をしながらも、きっぱり答える。
「? 危ない?」
俺はよく分からずに首を傾げた。
「……うん。今回の一件で、敵の狙いは決まったの。
理由は分からないけれど、新国と鬼の狙いはティアナよ」
俺が思わず息を呑むと、ナタリーは続けた。ティアナは今も隠れている。
ひょっとして新国に連れていきたいのかな、なんて見当違いなことも言う。
もっとも、運命と鍵に関する知識がないのだから、仕方ない。
いや、その知識がないのに、良くここまで本質を見ていると言うべきか。
「あの状況で、あたしたちを狙う理由はそれしかない。
……だとすれば、ティアナを守るべきなのは間違いないよ」
その点に異論はない。
俺は頷いた。
「じゃあ、そのために有効な手段は?
……簡単よ、ティアナの居場所を特定させなければ良い」
なるほど。確かにあのままレンブラントにいれば、鬼たちは襲撃の計画を立てやすい。少なくとも、青鬼はいつでも仕掛けることはできる。
「だけど、結局ティアナはあたしたち……特にキースとは一緒に行動してもらうしかない。そこで移動よ。私たちの正確な現在位置を特定させない」
確かに青鬼は俺たちがレンブラントにいるのか、あるいは王都にいるのか判断ができないだろう。青鬼が目視するか、王都やレンブラントを見張るしかないのだ。
「あ……」
そこまで考えて、気が付いた。思わずミアを見る。
「そう。そういう意味でも師匠はお手柄なの。
鬼の貴重な情報源だったはずの白鬼に対策を立てられる」
言いながら、ナタリーは隣のミアに軽く触れた。
ミアはナタリーと同じようにだらだらしている。
だが、もしも白鬼が近づけばすぐに伝えてくれるだろう。
白鬼が俺たちの位置を把握したら、俺たちもそれを知ることが出来るのだ。
「他に気を付けるのは下っ端の鬼くらい。
……白鬼がいない間は居場所をころころと変えてやろ?」
ナタリーがにっこりと笑う。
うわぁ、性格悪い顔だなぁ。
白鬼の奇襲はミアがいれば防げる。
白鬼が目を離した隙に移動すれば、正確な居場所は把握されにくい。
確かにティアナの居場所が分からなければ、青鬼は奇襲もできない。
ナタリーの言う通り、後は下っ端の鬼が俺たちを監視するしかない。
……あるいは、青鬼が正面から来るか。
「だから、今は王都に行くのが正解。
レンブラントにはまだ潜伏している鬼もいるかもしれない」
俺は頷くしかない。
鬼たちはナタリーのこういう能力を警戒しているのだ。
だから最優先で殺しに来た。
「いや、でも……疲れたんだよ?」
今まで黙って聞いていたアリスが呟くように言った。
いや、お前は一体何を聞いていたんだ?