すぐに本物のラルフがやって来た。
どうやら周到に足止めをされていたらしい。
翌日には責任者として『組合長』も到着する。
そうなると、いよいよ事件は収束していった。
「……状況は分かった。捕まえた鬼たちはどうしている?」
「今のところは大人しくしています。ただ、口を割るとは思えないですね」
組合長の言葉にラルフが応じた。鬼たちは捕虜扱いになるのだろう。
成り行きで先ほどの丘に集合している。
「で? ラルフ? 言い訳はあるか?」
「……ないですね」
ラルフが肩を竦めると、組合長は軽く舌打ちをした。
自分も鬼に好き放題やられたという自覚があるのだろう。
「? そう言えば、ミアはどうした!? まだ来てねぇのか?」
「あ、来てますよ」
組合長が声を荒げた。
ナタリーがすぐに答える。
「なんだ、それなら良い。で、どこにいる? 情報収集にでも出てるのか?」
「あ、それが……」
ミアが目覚めたという連絡を受けて、俺たちは借りていた民家へと向かった。
近いからと、家主の好意でベッドを借りたのだ。
「おい、ミア!」
「ふあぁ……あ、おはようございます」
ばーん、と扉を開け放って、組合長がミアへと詰め寄った。
対するミアは暢気な声で応じる。
「聞いたぞ、不用意に白鬼に触れるなんてどういうつもりだ!?」
「いやぁ……ナタリーに触られるよりは良いかと思って」
「お前が意識を失っても駄目だろうが!」
組合長がさらに詰め寄る。白鬼の能力は共有されている。
注意を払うべきなのは間違いない。組合長の怒りはもっともだった。
意識を失うリスクはもちろん、今回のラルフのような不意打ちが繰り返されるかも知れないからだ。
「本当に?」
「当たり前だ!」
しかし、ミアは含みを持たせるように聞き返した。
その場の全員が首を傾げる。
「本当そうっすか?」
「?」
ミアは繰り返す。
その時、ナタリーが何かに気付いた様子で顔を上げた。
「師匠、それって……」
「あたしも白鬼に触ったっすよ?」
一瞬遅れて、他のメンバーも理解が追いついた。
接触することで能力を発動するのは、何も白鬼だけじゃない。
「スキル『引力』『斥力』で、白鬼の場所は分かるっす」
「!」
ミアがにやりと笑って見せた。
組合長が息を呑んだ。
あの一瞬で、コイツは白鬼と自分の能力を互いに発動すれば良いと判断したんだ。自分が意識を失ってもどうにかなる、と。
何より、自分の姿を奪われるというリスクと白鬼の居場所という情報の価値を全て計算に入れて。
「……よくやった」
組合長が口の端を高く持ち上げた。一気に機嫌が良くなったようだ。
びっくりするほどの掌返しである。
実際、鬼の居場所は喉から手が出るほどに欲しい情報だった。