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第四部 64話 出し惜しみなし

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 改めて青鬼を観察する。
 右手には長刀、左手には脇差を握っている。

 相変わらず小柄で、気負わない様子だった。
 昔と違うとすれば、その真赤に輝く魂くらいだろう。

「黒から俺の能力を聞いたな?」
 最初に口を開いたのは青鬼だった。

「……何やら値段がお高いようで」
 俺の口からはつい軽口が出てしまう。

 それを受けて、青鬼は獰猛に口を歪めて見せた。
 腰を低く落として、臨戦態勢に入る。

「そうだ。俺の能力はコストが高い。使うだけで命を削る。
 節約する必要があったのさ……だが、使えないわけではない」

「……っ」

 その瞬間、青鬼の姿が消えた……後ろだ。
 周囲に目を遣り、俺は冷静に判断を下して腰を低く落として右に転がった。

 すぐ真上を長刀が通り過ぎていく。
 俺はすぐに魔弾剣を背後に飛ばす。

「…………」
 青鬼が消える。戻ったか。
 
「!?」
 だが、青鬼は元の場所にいなかった。

「上よ!」
「……ッ!」

 エルの言葉で見上げると、まさに青鬼が交差した長刀と脇差を払おうとしているところだった。

 ――二回連続での瞬間移動。
 ――最終的に元の位置に戻れば良いということか。

 不用意には受けられない。あの二刀は業物だ。
 リックならともかく、ただのナイフではすぐに壊れるだろう。

「この……!」

 俺は逆に地面を蹴って跳び上がる。
 空中の青鬼に肉薄すると、その右手首を蹴りつけた。

 長刀が動きを止める。残りは脇差だ。
 こちらには魔弾をぶつける。脇差の軌道も逸れた。

「乱暴だな」
 青鬼が口を歪めて嗤う。

 目の前には青鬼。
 空中で二刀を使い切った。

 俺は温存したナイフを払う。同時に魔弾剣を放った。
 狙いはどちらも首……しかし、青鬼が消える。

 すぐ真下で青鬼が両刀を構えていた。
 嫌らしい笑みを浮かべている。

 足場を作る暇もない。
 俺はそこへと落ちるしかなかった。

 青鬼が素早く二刀を鞘に納める。
 さらに左腰の長刀に手を添えて、腰を低く落とした。

 頭上の俺へと居合を放とうと――

「ち」

 ――舌打ちと一緒に消えた。

 青鬼がいた場所に火球が二つぶつかった。
 見れば、青鬼は最初に消えた場所まで戻っている。

「キース! 無事?」
「しぶといようで何よりっす!」

 アリスとミアが声を掛けてきた。
 馬車を安全な位置まで運んだのだろう。

 そのまま加勢に来てくれたのだ。これで三対一。流石に有利なはずだ。
 青鬼は忌々しそうにこちらを睨んでいる。

「あ! あれって……?」
「見覚えがあるかも」
 アリスと加奈が一方を指さした。

 目を向けると、一頭の馬がこちらへと向かっていた。
 乗っているのは……。

「ラルフさん?」
 遠目に見えたのは王国のS級冒険者『ラルフ・コーネル』に見えた。

「……四対一は流石に無謀だな」
 青鬼は小さく呟くと、その姿を消した。



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 改めて青鬼を観察する。
 右手には長刀、左手には脇差を握っている。
 相変わらず小柄で、気負わない様子だった。
 昔と違うとすれば、その真赤に輝く魂くらいだろう。
「黒から俺の能力を聞いたな?」
 最初に口を開いたのは青鬼だった。
「……何やら値段がお高いようで」
 俺の口からはつい軽口が出てしまう。
 それを受けて、青鬼は獰猛に口を歪めて見せた。
 腰を低く落として、臨戦態勢に入る。
「そうだ。俺の能力はコストが高い。使うだけで命を削る。
 節約する必要があったのさ……だが、使えないわけではない」
「……っ」
 その瞬間、青鬼の姿が消えた……後ろだ。
 周囲に目を遣り、俺は冷静に判断を下して腰を低く落として右に転がった。
 すぐ真上を長刀が通り過ぎていく。
 俺はすぐに魔弾剣を背後に飛ばす。
「…………」
 青鬼が消える。戻ったか。
「!?」
 だが、青鬼は元の場所にいなかった。
「上よ!」
「……ッ!」
 エルの言葉で見上げると、まさに青鬼が交差した長刀と脇差を払おうとしているところだった。
 ――二回連続での瞬間移動。
 ――最終的に元の位置に戻れば良いということか。
 不用意には受けられない。あの二刀は業物だ。
 リックならともかく、ただのナイフではすぐに壊れるだろう。
「この……!」
 俺は逆に地面を蹴って跳び上がる。
 空中の青鬼に肉薄すると、その右手首を蹴りつけた。
 長刀が動きを止める。残りは脇差だ。
 こちらには魔弾をぶつける。脇差の軌道も逸れた。
「乱暴だな」
 青鬼が口を歪めて嗤う。
 目の前には青鬼。
 空中で二刀を使い切った。
 俺は温存したナイフを払う。同時に魔弾剣を放った。
 狙いはどちらも首……しかし、青鬼が消える。
 すぐ真下で青鬼が両刀を構えていた。
 嫌らしい笑みを浮かべている。
 足場を作る暇もない。
 俺はそこへと落ちるしかなかった。
 青鬼が素早く二刀を鞘に納める。
 さらに左腰の長刀に手を添えて、腰を低く落とした。
 頭上の俺へと居合を放とうと――
「ち」
 ――舌打ちと一緒に消えた。
 青鬼がいた場所に火球が二つぶつかった。
 見れば、青鬼は最初に消えた場所まで戻っている。
「キース! 無事?」
「しぶといようで何よりっす!」
 アリスとミアが声を掛けてきた。
 馬車を安全な位置まで運んだのだろう。
 そのまま加勢に来てくれたのだ。これで三対一。流石に有利なはずだ。
 青鬼は忌々しそうにこちらを睨んでいる。
「あ! あれって……?」
「見覚えがあるかも」
 アリスと加奈が一方を指さした。
 目を向けると、一頭の馬がこちらへと向かっていた。
 乗っているのは……。
「ラルフさん?」
 遠目に見えたのは王国のS級冒険者『ラルフ・コーネル』に見えた。
「……四対一は流石に無謀だな」
 青鬼は小さく呟くと、その姿を消した。