表示設定
表示設定
目次 目次




第四部 63話 ピエロ

ー/ー



「……向こうだな」

 ナタリー達がいるはずの場所に当たりを付けると、俺は小さく呟いた。
 すぐに障壁を蹴って、元来た道を戻るように駆ける。

「おーい! キースー!」
「?」

 不意に掛けられた声に振り返る。
 見れば『小惑星』ミア・クラークが俺の障壁を足場に後を追ってきた。

「ミア!?」
「キース達も来てたっすねぇ」

 ミアはへらっと笑い、俺の後ろについた。
 一瞬だけ驚いたものの、考えてみればここは組合の本拠地みたいなものだ。

 有力な組合員は優先的に動員されているのだろう。
 鉢合わせるのは不思議じゃない。

「……単独行動っすか?」
「ああ、ナタリーとアリスに合流したい」

 背後のミアに頷いた。
 相変わらず話が早いというか、勘が良いというか。

「なるほど……。あれっすか?」
「そうそう! あれだ! 良かった、ひとまず無事か」

 しばらく跳んでいると、ミアが地上の一点を指さした。
 目を向けると、確かに俺たちの馬車がこちらへ走ってくる。

「? あれ? あれって……」
「え? おい、嘘だろ!?」

 ミアと俺が慌てて声を荒げる。
 無理もないだろう、馬車の進行方向に『青鬼』が突然現れたのだ。

 相変わらず、あいつの能力だけは不意打ちすぎる。
 すでに左腰の長刀に手を伸ばしていた。

 下の馬車でナタリーとアリスがぎゃーぎゃーと何かしら喚いているのがここまで聞こえてくる。

 しかし、無理もないだろう。
 恐らくこのままでは真っ二つだということだ。

「……緊急事態っすね」
「? ミア?」

 背後から聞こえた声に首を傾げる。
 ちらり、と背後を振り返るより先に地面目掛けて俺は背中を蹴り飛ばされた。

「おい!? 何すんだ!?」
「緊急事態っす」

 俺の叫びにミアが頷いた。
 緊急事態なら何をしても良い訳じゃないぞ?

 しかもあいつ、スキル『斥力』まで使ってやがる。
 俺は青鬼の背中へと上空から突っ込んでゆく。

 ミアのせいでややこしい状況になった。
 馬車が青鬼へと突っ込み、俺も青鬼へと突っ込んでいる。

「アリス! 何とかして!?」
「無茶言わないでよ!」
「あはは、これは死んだんじゃない?」

 ナタリー、アリス、加奈、と喚いた。
 距離が近くなったのでよく聞こえた。いや、声も大きいんだけどさ。

「ははッ」
 青鬼が楽しそうに嗤い、長刀を馬車へと一閃する。

「「風よ、吹き飛ばせ!」」
「!?」

 だが、完璧なタイミングでアリスと加奈が風の魔法を放つ。
 一瞬だけ馬車が宙を浮いた。青鬼の長刀が空を切る。
 
 そのまま馬車が青鬼を飛び越えた。
 ナタリーが「やったー!」と叫ぶ声がする。

 さらに数舜後、真下を馬車が走ってゆく感覚に肝を冷やしながら、青鬼へと落ちていく。青鬼が振り返った。今度は右腰の脇差を抜こうとしている。

「大道芸じゃねえか」
「キース! 合わせるっすよ!」
「!?」

 青鬼が小さくぼやいた後、ミアが叫んだ。
 ? 合わせる?

 青鬼が脇差を抜く。
 その瞬間、俺の体が上空に引っ張られる。

 そういうことか。
 引力で落下速度を変えると。

「……くそ。大道芸人ばかりかよ」
 脇差が空振りに終わって、青鬼がもう一度ぼやいた。

 さらに、今度は俺がナイフを払う。
 青鬼はやむを得ないと、大きく後ろに跳んだ。

 そうして、俺は馬車を背に青鬼と向かい合った。
 相変わらず、その魂は真赤だった。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第四部 64話 出し惜しみなし


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「……向こうだな」
 ナタリー達がいるはずの場所に当たりを付けると、俺は小さく呟いた。
 すぐに障壁を蹴って、元来た道を戻るように駆ける。
「おーい! キースー!」
「?」
 不意に掛けられた声に振り返る。
 見れば『小惑星』ミア・クラークが俺の障壁を足場に後を追ってきた。
「ミア!?」
「キース達も来てたっすねぇ」
 ミアはへらっと笑い、俺の後ろについた。
 一瞬だけ驚いたものの、考えてみればここは組合の本拠地みたいなものだ。
 有力な組合員は優先的に動員されているのだろう。
 鉢合わせるのは不思議じゃない。
「……単独行動っすか?」
「ああ、ナタリーとアリスに合流したい」
 背後のミアに頷いた。
 相変わらず話が早いというか、勘が良いというか。
「なるほど……。あれっすか?」
「そうそう! あれだ! 良かった、ひとまず無事か」
 しばらく跳んでいると、ミアが地上の一点を指さした。
 目を向けると、確かに俺たちの馬車がこちらへ走ってくる。
「? あれ? あれって……」
「え? おい、嘘だろ!?」
 ミアと俺が慌てて声を荒げる。
 無理もないだろう、馬車の進行方向に『青鬼』が突然現れたのだ。
 相変わらず、あいつの能力だけは不意打ちすぎる。
 すでに左腰の長刀に手を伸ばしていた。
 下の馬車でナタリーとアリスがぎゃーぎゃーと何かしら喚いているのがここまで聞こえてくる。
 しかし、無理もないだろう。
 恐らくこのままでは真っ二つだということだ。
「……緊急事態っすね」
「? ミア?」
 背後から聞こえた声に首を傾げる。
 ちらり、と背後を振り返るより先に地面目掛けて俺は背中を蹴り飛ばされた。
「おい!? 何すんだ!?」
「緊急事態っす」
 俺の叫びにミアが頷いた。
 緊急事態なら何をしても良い訳じゃないぞ?
 しかもあいつ、スキル『斥力』まで使ってやがる。
 俺は青鬼の背中へと上空から突っ込んでゆく。
 ミアのせいでややこしい状況になった。
 馬車が青鬼へと突っ込み、俺も青鬼へと突っ込んでいる。
「アリス! 何とかして!?」
「無茶言わないでよ!」
「あはは、これは死んだんじゃない?」
 ナタリー、アリス、加奈、と喚いた。
 距離が近くなったのでよく聞こえた。いや、声も大きいんだけどさ。
「ははッ」
 青鬼が楽しそうに嗤い、長刀を馬車へと一閃する。
「「風よ、吹き飛ばせ!」」
「!?」
 だが、完璧なタイミングでアリスと加奈が風の魔法を放つ。
 一瞬だけ馬車が宙を浮いた。青鬼の長刀が空を切る。
 そのまま馬車が青鬼を飛び越えた。
 ナタリーが「やったー!」と叫ぶ声がする。
 さらに数舜後、真下を馬車が走ってゆく感覚に肝を冷やしながら、青鬼へと落ちていく。青鬼が振り返った。今度は右腰の脇差を抜こうとしている。
「大道芸じゃねえか」
「キース! 合わせるっすよ!」
「!?」
 青鬼が小さくぼやいた後、ミアが叫んだ。
 ? 合わせる?
 青鬼が脇差を抜く。
 その瞬間、俺の体が上空に引っ張られる。
 そういうことか。
 引力で落下速度を変えると。
「……くそ。大道芸人ばかりかよ」
 脇差が空振りに終わって、青鬼がもう一度ぼやいた。
 さらに、今度は俺がナイフを払う。
 青鬼はやむを得ないと、大きく後ろに跳んだ。
 そうして、俺は馬車を背に青鬼と向かい合った。
 相変わらず、その魂は真赤だった。