急性骨髄性白血病。
それが私の身体を蝕む病気。
それが何なのかは説明がなくても分かる。
ママと同じ病気。
ステージも一緒だ。
だからなのかな?
あまりショックじゃなかった。
むしろショックを受けていたのはパパの方だった。
パパは、泣きも嗚咽もしなかった。
ただ必死に、必死にお医者さんに私を治して欲しいと懇願した。
自分の命を差し出すから。
望むものを全て捧げるから。
お願いします……お願いします……。
その時のお医者さんの顔を見て、それが叶わない願いなのだと直ぐに分かった。
学校に休校届けを出した。
事務所にも事情を説明したら退所ではなく、休所扱いにした。映画もあるし各スポンサーの手前、そうするしかなかったがマネージャーは本気で私を心配し、「私が無茶させたせいだ。マネージャー失格だ」と自分を責めた。
私は、「そんなことない」「自分を責めないで」と月並みなことしか言うことが出来なかった。
国語……ちゃんと勉強しておけば良かったな。
それから私のパパは一縷の望みをかけて骨髄のドナーか現れるのを待ちながら、化学療法をすることになった。
ちなみにパパの骨髄とは適合しなかった。
その時もパパは絶望しながら私に謝った。
パパは、何にも悪くないんだよ。
謝らないで。
化学療法は……辛いの一言だった。
吐き気も下痢も止まらないし、口内炎が辛くてご飯も水も飲めなくてずっと点滴だ。
髪の毛もどんどん抜けていく。
金髪に染めた髪は一毛も残さず無くなり、毛糸の帽子を被った。
肌が雪のように白い。
血管が結晶のように浮かぶ。
これだったら美肌タレントとして再起出来るかな?
でも、そんなことを考える余裕はもうなかった。
辛い……辛いよぉ。
なんで私がこんな目に合わないといけないの?
どうせ治らないんでしょ?
ドナーなんて現れないんでしょ?
友達にも会えないんでしょ?
彼にも会えないんでしょ?
だったら……もう……。
「パパ……」
私は、ベッドの横でずっと手を握り続けているパパに声を掛けた。
「どうした?なにが欲しいものがあるのか?」
「パパ……」
目から涙が零れ、頬を伝ってシーツに落ちる。
「おうち帰りたいよぉ」
パパは、涙を流し、私の手を額に当てて、「分かった……おうち……帰ろう」と言ってくれた。
おうちに帰ると嘘のように身体は軽くなった。
錯覚なのは分かってる。
ただの気分の問題だと分かってる。
身体は一秒ごとに病気に食べられて、命の炎もどんどん小さくなっていってる。
それでも……私の心は凪のように落ち着いていた。
大好きなブルーベリーのトーストを食べて、紅茶を飲んで、ネットでお洋服を買って、お化粧をして、パパだけのファッションショーをした。
パパは、私の側にいてくれた。
本当はお仕事を辞めるつもりだったらしいけど、会社側に辞めないで欲しいと懇願されたのと、私の治療費を払う為に在宅での仕事を続けていた。
仕事と私のお世話。
本当に大変だと思う。
パパを楽させたい、お金を稼いで幸せにしてあげたい、そう思ってタレントになって、モデルになって、女優にもなれるはずだったのに……。
ごめんね。パパ。
親不孝な娘で本当にごめんなさい。
せめて最後までパパの側にいさせて……。
娘でいさせてね。
でも……運命と言うのは本当に残酷だった。