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来世に繋がる失恋(5)

ー/ー



 映画の撮影が終わったのは梅雨の終わりの蒸した日だった。
 スケジュール通りの綺麗な終わり方だった。
 クランクアップし、サブヒロインのイメージカラーであるオレンジの花束を貰った時は涙が出て止まらなかった。
 主人こう役の俳優さんやヒロイン役のモデル仲間とも抱き合って撮影の成功を喜び、マネージャーは自分のことのように大号泣だった。
 これからバラバラに撮った映像を編集して繋ぎ合わせて十月の興行に間に合わせる。必要に応じて追加撮影もあるかもしれないから動けるようにしておいてと監督に釘刺された。
 クランクアップの集合写真を撮った後、ホテルを貸し切っての打ち上げが行われたが私は「明日から学校なので」と断った。
 みんなから「真面目か!」と総ツッコミされ、マネージャーからも「次に繋がるから出ておこう」と言われたが、そんなのは大人の都合で私にとってはどうでもいい。
 明日は大切な約束の日なのだ。
 彼に会い、ジャンクスイーツと紅茶を飲みながらたわいもないことを話して暖かな恋の海に沈む何よりも貴重な時間なのだ。
 その為に私は早く地元に帰って……身体を休めたかった。
 撮影中も目眩は頻回に襲ってきた。
 鼻血が出たのも一回や二回ではない。
 撮影が終わる一週間前からは酷い倦怠感が身体に圧しかかって身体中が悲鳴を上げた。
 それでも私はマネージャーにもその事を告げず、撮影に挑んだ。
 みんなが一心不乱に取り組んでいる中、私のことで足を引っ張る訳にはいかない。
 彼に胸を張って会えない。
 そう思って私は文字通り歯を食い縛って、身を粉にして役に挑んだ。
 自宅に戻るとパパは大歓迎すると同時に青ざめた。
 さすがパパ。
 誰も気付かなかった私の変調に直ぐ気付いた。
 パパは、直ぐ病院に行こうと言ったが断った。
 もし、変な病気が発覚して入院にでもなったら彼に会えなくなる。
「明日、学校から戻ったら行くから……」
 私は、パパに必死に懇願する。
 パパは、ダメだ!ダメだ!と否定し、無理やり連れて行こうとする。
 しかし、私は重い身体で必死に抵抗し、「お願い……パパ……明日……ちゃんと行くから……」と泣いてお願いした。
 私の涙を見てパパは根負けし「明日、必ず連れていくからな」と言って手を離してくれた。
 その時のパパの顔は見たこともないくらい苦痛に歪んでいた。
 その後、私はパパが用意してくれたご馳走を食欲のないまま鳥が突くように食べ、念入りにお風呂に入り、そして寝た。
 目が覚めるとスマホの時計は十時をとっくに過ぎていた。私は慌てて起きて居間(リビング)に向かうと仕事に行ってるはずのパパがソファに座ってタブレットで新聞を読んでいた。
「学校には午後から登校すると連絡してある」
 パパ、そう言って朝食の準備を始める。
「少しは楽になったか?」
「うんっ昨日より全然」
 よく寝たからか身体が軽い。
 力も少しだけ戻ってる。
 それでも手は血の気がなく白く、爪の色も悪い。鏡を見てないが顔も似たようなものだろう。
「今日の夕方に病院を予約した」
 そう言って卵を溶いたお粥をテーブルに置く。
 昨日、食欲のなかった私の為に作ってくれたんだ。
 白米と卵の溶け合った湯気が鼻腔に入り込む。
「帰ったら直ぐいくからな」
「……分かった」
 私は、小さく頷きパパの用意したお粥を食べる。
 あまりに美味しくて涙が出そうになった。
 お粥を食べ終えると私は身支度を始める。
 鏡を見るとやはり頬は白く、白目も汚れていた。
 モデルをやっていて良かった。
 私は、長年培ったメイク技術を駆使して顔色を改善し、派手な濃い青のカラコンを入れて白目の汚れを誤魔化した。露出している部分にもファンデを塗って誤魔化し、爪には季節柄の紫のネイルを貼り付けた。
 よし、完璧。
 どっからどう見ても具合が悪そうに見えない。
 私は、ふうっと息を小さく吐いてからパパに行ってきますと告げた。
 パパは、何かあったら直ぐに連絡するんだぞ、玄関を出るまでずっと言い続けた。
 ごめんねパパ。
 心配かけて。
 私は……大丈夫だから。


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 映画の撮影が終わったのは梅雨の終わりの蒸した日だった。
 スケジュール通りの綺麗な終わり方だった。
 クランクアップし、サブヒロインのイメージカラーであるオレンジの花束を貰った時は涙が出て止まらなかった。
 主人こう役の俳優さんやヒロイン役のモデル仲間とも抱き合って撮影の成功を喜び、マネージャーは自分のことのように大号泣だった。
 これからバラバラに撮った映像を編集して繋ぎ合わせて十月の興行に間に合わせる。必要に応じて追加撮影もあるかもしれないから動けるようにしておいてと監督に釘刺された。
 クランクアップの集合写真を撮った後、ホテルを貸し切っての打ち上げが行われたが私は「明日から学校なので」と断った。
 みんなから「真面目か!」と総ツッコミされ、マネージャーからも「次に繋がるから出ておこう」と言われたが、そんなのは大人の都合で私にとってはどうでもいい。
 明日は大切な約束の日なのだ。
 彼に会い、ジャンクスイーツと紅茶を飲みながらたわいもないことを話して暖かな恋の海に沈む何よりも貴重な時間なのだ。
 その為に私は早く地元に帰って……身体を休めたかった。
 撮影中も目眩は頻回に襲ってきた。
 鼻血が出たのも一回や二回ではない。
 撮影が終わる一週間前からは酷い倦怠感が身体に圧しかかって身体中が悲鳴を上げた。
 それでも私はマネージャーにもその事を告げず、撮影に挑んだ。
 みんなが一心不乱に取り組んでいる中、私のことで足を引っ張る訳にはいかない。
 彼に胸を張って会えない。
 そう思って私は文字通り歯を食い縛って、身を粉にして役に挑んだ。
 自宅に戻るとパパは大歓迎すると同時に青ざめた。
 さすがパパ。
 誰も気付かなかった私の変調に直ぐ気付いた。
 パパは、直ぐ病院に行こうと言ったが断った。
 もし、変な病気が発覚して入院にでもなったら彼に会えなくなる。
「明日、学校から戻ったら行くから……」
 私は、パパに必死に懇願する。
 パパは、ダメだ!ダメだ!と否定し、無理やり連れて行こうとする。
 しかし、私は重い身体で必死に抵抗し、「お願い……パパ……明日……ちゃんと行くから……」と泣いてお願いした。
 私の涙を見てパパは根負けし「明日、必ず連れていくからな」と言って手を離してくれた。
 その時のパパの顔は見たこともないくらい苦痛に歪んでいた。
 その後、私はパパが用意してくれたご馳走を食欲のないまま鳥が突くように食べ、念入りにお風呂に入り、そして寝た。
 目が覚めるとスマホの時計は十時をとっくに過ぎていた。私は慌てて起きて|居間《リビング》に向かうと仕事に行ってるはずのパパがソファに座ってタブレットで新聞を読んでいた。
「学校には午後から登校すると連絡してある」
 パパ、そう言って朝食の準備を始める。
「少しは楽になったか?」
「うんっ昨日より全然」
 よく寝たからか身体が軽い。
 力も少しだけ戻ってる。
 それでも手は血の気がなく白く、爪の色も悪い。鏡を見てないが顔も似たようなものだろう。
「今日の夕方に病院を予約した」
 そう言って卵を溶いたお粥をテーブルに置く。
 昨日、食欲のなかった私の為に作ってくれたんだ。
 白米と卵の溶け合った湯気が鼻腔に入り込む。
「帰ったら直ぐいくからな」
「……分かった」
 私は、小さく頷きパパの用意したお粥を食べる。
 あまりに美味しくて涙が出そうになった。
 お粥を食べ終えると私は身支度を始める。
 鏡を見るとやはり頬は白く、白目も汚れていた。
 モデルをやっていて良かった。
 私は、長年培ったメイク技術を駆使して顔色を改善し、派手な濃い青のカラコンを入れて白目の汚れを誤魔化した。露出している部分にもファンデを塗って誤魔化し、爪には季節柄の紫のネイルを貼り付けた。
 よし、完璧。
 どっからどう見ても具合が悪そうに見えない。
 私は、ふうっと息を小さく吐いてからパパに行ってきますと告げた。
 パパは、何かあったら直ぐに連絡するんだぞ、玄関を出るまでずっと言い続けた。
 ごめんねパパ。
 心配かけて。
 私は……大丈夫だから。