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第四部 59話 新しい日常

ー/ー



 老婆はソニアと言うらしい。
 結局はバケット邸に住み着いて、ティアナと騒ぐようになった。

 迷惑かもと思ったが、ブラウン団長が言うには目の届く場所にいた方が良いとのことだった。そりゃそうか、この人からティアナの情報が漏れても困る。

「……あれ? ナタリーは来ていないのか?」
「うん、今日は会議だってさ」

 俺の言葉にアリスが答えた。
 今日もアリスの訓練を始めようとしたのだが、ピノがいなかったのだ。
 ナタリーもいないということだろう。

 最近は俺たちの代表として、呼び出されることが多い。
 昔のラルフさんのような立ち位置なのかもしれない。

「そっか。じゃあ、今日は俺が見てるからな。早速走れ」
「えー、ナタリーがいないならサボっても良いじゃん……」

 俺の言葉にアリスが嫌そうな顔を見せる。
 すぐに理由を付けてサボろうとするのだ。

 嫌々ながらアリスがいつもの運動を開始する。
 とにかく体力が不足しているのだ。ひたすら走らせている。

 いつも通り、文句を垂れ流しつつも走っている様子を監視していると、今度は別の声が聞こえてきた。

「だから! 私は王女様じゃないですっ!」
「いいえ、確かに王族の血筋です。ですから、きちんとした振る舞いを……」

 ティアナと老婆……ソニア婆さんだった。
 相変わらず、追いかけっこをしているようだ。

「あ、兄さんっ! 助けてください!」
「……またか?」

 ティアナが俺を見つけて走り寄ってくる。
 俺を盾のように使って、ソニア婆さんから隠れた。

「フィオネ様!」
「あの、本人が嫌がっているので……」
「そうですっ」

 ソニア婆さんがティアナを渡せと迫ってくる。
 俺が恐る恐る返すと後ろでティアナが便乗した。

「うん、その通りだね。
 本人が嫌がっていることはさせないのが一番だよ」

 アリスが強く頷く声。
 見れば……アリスは庭で寝転んで休んでいた。

「さっさと走れ!?」
「言ってることが違うじゃん!」
「ティアナとお前を一緒にするな!」

 俺の言葉で渋々とアリスは走り出した。
 全く、一瞬目を離したら寝てるとは思わなかった。

「…………」
 ティアナとソニア婆さんの様子を見る。

 どうやらティアナは本気で嫌がっているようだ。
 しかしソニア婆さんも譲らない。

 何しろブローチ一つで連合まで探しに行くような執念だ。
 生半可な気持ちではないのだろう。新国の王になるべきだと考えているのかもしれない。

 さて、どうしたものか……。

「ぴ!」
「?」

 俺が悩んでいると、不意にピノが俺の肩に止まった。
 すぐにナタリーが現れる。

「緊急の依頼だよ」
「? どうしたの?」

 ナタリーの言葉にアリスが応じる。
 軽く息は上がっているが、まだ走れそうには見える。

 しかし、ナタリーの次の言葉で俺たちは余裕を失った。

「レンブラントが襲撃された。
 急いで救援に向かうよ」



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 老婆はソニアと言うらしい。
 結局はバケット邸に住み着いて、ティアナと騒ぐようになった。
 迷惑かもと思ったが、ブラウン団長が言うには目の届く場所にいた方が良いとのことだった。そりゃそうか、この人からティアナの情報が漏れても困る。
「……あれ? ナタリーは来ていないのか?」
「うん、今日は会議だってさ」
 俺の言葉にアリスが答えた。
 今日もアリスの訓練を始めようとしたのだが、ピノがいなかったのだ。
 ナタリーもいないということだろう。
 最近は俺たちの代表として、呼び出されることが多い。
 昔のラルフさんのような立ち位置なのかもしれない。
「そっか。じゃあ、今日は俺が見てるからな。早速走れ」
「えー、ナタリーがいないならサボっても良いじゃん……」
 俺の言葉にアリスが嫌そうな顔を見せる。
 すぐに理由を付けてサボろうとするのだ。
 嫌々ながらアリスがいつもの運動を開始する。
 とにかく体力が不足しているのだ。ひたすら走らせている。
 いつも通り、文句を垂れ流しつつも走っている様子を監視していると、今度は別の声が聞こえてきた。
「だから! 私は王女様じゃないですっ!」
「いいえ、確かに王族の血筋です。ですから、きちんとした振る舞いを……」
 ティアナと老婆……ソニア婆さんだった。
 相変わらず、追いかけっこをしているようだ。
「あ、兄さんっ! 助けてください!」
「……またか?」
 ティアナが俺を見つけて走り寄ってくる。
 俺を盾のように使って、ソニア婆さんから隠れた。
「フィオネ様!」
「あの、本人が嫌がっているので……」
「そうですっ」
 ソニア婆さんがティアナを渡せと迫ってくる。
 俺が恐る恐る返すと後ろでティアナが便乗した。
「うん、その通りだね。
 本人が嫌がっていることはさせないのが一番だよ」
 アリスが強く頷く声。
 見れば……アリスは庭で寝転んで休んでいた。
「さっさと走れ!?」
「言ってることが違うじゃん!」
「ティアナとお前を一緒にするな!」
 俺の言葉で渋々とアリスは走り出した。
 全く、一瞬目を離したら寝てるとは思わなかった。
「…………」
 ティアナとソニア婆さんの様子を見る。
 どうやらティアナは本気で嫌がっているようだ。
 しかしソニア婆さんも譲らない。
 何しろブローチ一つで連合まで探しに行くような執念だ。
 生半可な気持ちではないのだろう。新国の王になるべきだと考えているのかもしれない。
 さて、どうしたものか……。
「ぴ!」
「?」
 俺が悩んでいると、不意にピノが俺の肩に止まった。
 すぐにナタリーが現れる。
「緊急の依頼だよ」
「? どうしたの?」
 ナタリーの言葉にアリスが応じる。
 軽く息は上がっているが、まだ走れそうには見える。
 しかし、ナタリーの次の言葉で俺たちは余裕を失った。
「レンブラントが襲撃された。
 急いで救援に向かうよ」