新国が宣戦布告した翌日。
俺たちのパーティは組合に呼び出された。
「? 何かあったんですか?」
「…………」
ナタリーが組合長に首を傾げて見せた。
組合長はどこか釈然としない表情を浮かべている。
「……捕虜としていた帝国兵を全て解放することが決まった」
「あ、そうなんですね」
組合長の言葉にナタリーが頷いた。
何となくだが、どこかすっとぼけた顔だった。
「それと、新国との戦いで帝国も王国側に付くそうだ。
本来なら王国から反感も出そうだが……今回はない」
「なるほど……。
では、これで帝国との一件は一段落ですか」
ナタリーはうんうんと頷いた。
おい、これってまさにエリーナから要求された内容じゃねーか。
「…………」
組合長はナタリーを軽く睨んだ。
「?」
ナタリーが可愛らしく首を傾げて微笑む。
そして、組合長は小さく溜息を吐いた。
さらに疲れた様子で続ける。
「ここまでやるか?」
「何をですか?」
ナタリーはにっこりと笑みを深める。
何をやったかは不明だが、エリーナの要望通り『可能な限り』王国に交渉したらしい。
「まあ良い。被害者は可哀そうだとは思うが、済んだことだ。
今日、お前らを呼んだのは新国についてだ」
組合長はけっと吐き捨てるように言った。
……可哀そうな被害者が出たの?
「お前らには組合からの戦力として新国と戦ってほしい。
何かと関わりがあるし、何より『悪戯娘』の適性が高いと思っている」
確かにナタリーは集団戦というか指揮官が向いている気はする。
あのエリーナが一目置いているくらいだし、ピノもいる。
「えぇ……? すみません」
ナタリーは露骨に嫌そうな表情を浮かべた。
すぐに謝罪したが、乗り気でないのは間違いない。
「仕方ないだろ! お前ら、完全に王都の英雄扱いなんだよ!
参加させないわけにはいかねえだろッ!」
組合長がキレた。
連合での一件で、俺たちの王都での評価はさらに上がっていたのだ。
連合を解放したと。
ナタリーとアリスをちらりと見る。
ナタリーは「あはは」なんて笑っているが、隣に立つ俺からすれば少し酒臭い。
昨日も宴会でも開いていたのだろう。肩の上ではピノが呆れた顔を浮かべている。
隣のアリスに至ってはうたた寝しているらしい。
たまに「すぴー」という寝息が聞こえてきた。
肉体の制御は加奈がしているようだ。
小さな声で「ほら、起きてアリス」と呟いている。
……英雄?
結局、ナタリーはこの依頼を受けた。
初めから拒否権はないし、そもそも受けるつもりだったはずだ。
エリーナとの一件もあるし、ここで逃げるタイプでもない。
そもそもティアナが狙われているんだ。こいつは身内には甘い。
いつの間にか、状況は三国と新国の争いになっていた。
一見すると戦力に差があるように見えるが、実際そうでもないと思う。
今にして思えば、ティアナを探していたのだろう。
ハーフエルフを積極的に受け入れてきた結果、有力なハーフエルフは新国に集まっている。
最低限、戦えるだけの人材はいるだろう。
さらに正式名称『エルフの大森林』は三国を囲むように広がっている。
地形を把握しているのは新国のみ。
ゲリラ戦では新国が有利になるだろう。
加えて、地下には『ドワーフの大空洞』もある。
こちらに至っては知識はほとんどなく、入る手段すら限られている。
そもそもエルフやドワーフは単体で人間という種全体に匹敵しているはずだ。
転生してハーフエルフや鬼になっているとは言え、侮れない。
人数で有利不利を語っても意味はないだろう。
……しかし、この戦いは最終的に俺たちが勝つ運命だ。
運命はティアナを新国の王にしようとするからだ。
運命がゼノを殺すのが先か。
青鬼がティアナを殺すのが先か。