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第四部 53話 参戦

ー/ー



 新国が宣戦布告した翌日。
 俺たちのパーティは組合に呼び出された。

「? 何かあったんですか?」
「…………」

 ナタリーが組合長に首を傾げて見せた。
 組合長はどこか釈然としない表情を浮かべている。

「……捕虜としていた帝国兵を全て解放することが決まった」
「あ、そうなんですね」

 組合長の言葉にナタリーが頷いた。
 何となくだが、どこかすっとぼけた顔だった。

「それと、新国との戦いで帝国も王国側に付くそうだ。
 本来なら王国から反感も出そうだが……今回はない」

「なるほど……。
 では、これで帝国との一件は一段落ですか」

 ナタリーはうんうんと頷いた。
 おい、これってまさにエリーナから要求された内容じゃねーか。

「…………」
 組合長はナタリーを軽く睨んだ。

「?」
 ナタリーが可愛らしく首を傾げて微笑む。

 そして、組合長は小さく溜息を吐いた。
 さらに疲れた様子で続ける。

「ここまでやるか?」
「何をですか?」

 ナタリーはにっこりと笑みを深める。
 何をやったかは不明だが、エリーナの要望通り『可能な限り』王国に交渉したらしい。

「まあ良い。被害者は可哀そうだとは思うが、済んだことだ。
 今日、お前らを呼んだのは新国についてだ」

 組合長はけっと吐き捨てるように言った。
 ……可哀そうな被害者が出たの?

「お前らには組合からの戦力として新国と戦ってほしい。
 何かと関わりがあるし、何より『悪戯娘』の適性が高いと思っている」

 確かにナタリーは集団戦というか指揮官が向いている気はする。
 あのエリーナが一目置いているくらいだし、ピノもいる。

「えぇ……? すみません」

 ナタリーは露骨に嫌そうな表情を浮かべた。
 すぐに謝罪したが、乗り気でないのは間違いない。

「仕方ないだろ! お前ら、完全に王都の英雄扱いなんだよ!
 参加させないわけにはいかねえだろッ!」

 組合長がキレた。
 連合での一件で、俺たちの王都での評価はさらに上がっていたのだ。

 連合を解放したと。
 ナタリーとアリスをちらりと見る。

 ナタリーは「あはは」なんて笑っているが、隣に立つ俺からすれば少し酒臭い。
 昨日も宴会でも開いていたのだろう。肩の上ではピノが呆れた顔を浮かべている。

 隣のアリスに至ってはうたた寝しているらしい。
 たまに「すぴー」という寝息が聞こえてきた。

 肉体の制御は加奈がしているようだ。
 小さな声で「ほら、起きてアリス」と呟いている。

 ……英雄?

 結局、ナタリーはこの依頼を受けた。
 初めから拒否権はないし、そもそも受けるつもりだったはずだ。

 エリーナとの一件もあるし、ここで逃げるタイプでもない。
 そもそもティアナが狙われているんだ。こいつは身内には甘い。



 いつの間にか、状況は三国と新国の争いになっていた。
 一見すると戦力に差があるように見えるが、実際そうでもないと思う。
 
 今にして思えば、ティアナを探していたのだろう。
 ハーフエルフを積極的に受け入れてきた結果、有力なハーフエルフは新国に集まっている。

 最低限、戦えるだけの人材はいるだろう。
 さらに正式名称『エルフの大森林』は三国を囲むように広がっている。

 地形を把握しているのは新国のみ。
 ゲリラ戦では新国が有利になるだろう。

 加えて、地下には『ドワーフの大空洞』もある。
 こちらに至っては知識はほとんどなく、入る手段すら限られている。

 そもそもエルフやドワーフは単体で人間という種全体に匹敵しているはずだ。
 転生してハーフエルフや鬼になっているとは言え、侮れない。
 人数で有利不利を語っても意味はないだろう。

 ……しかし、この戦いは最終的に俺たちが勝つ運命だ。
 運命はティアナを新国の王にしようとするからだ。

 運命がゼノを殺すのが先か。
 青鬼がティアナを殺すのが先か。



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 新国が宣戦布告した翌日。
 俺たちのパーティは組合に呼び出された。
「? 何かあったんですか?」
「…………」
 ナタリーが組合長に首を傾げて見せた。
 組合長はどこか釈然としない表情を浮かべている。
「……捕虜としていた帝国兵を全て解放することが決まった」
「あ、そうなんですね」
 組合長の言葉にナタリーが頷いた。
 何となくだが、どこかすっとぼけた顔だった。
「それと、新国との戦いで帝国も王国側に付くそうだ。
 本来なら王国から反感も出そうだが……今回はない」
「なるほど……。
 では、これで帝国との一件は一段落ですか」
 ナタリーはうんうんと頷いた。
 おい、これってまさにエリーナから要求された内容じゃねーか。
「…………」
 組合長はナタリーを軽く睨んだ。
「?」
 ナタリーが可愛らしく首を傾げて微笑む。
 そして、組合長は小さく溜息を吐いた。
 さらに疲れた様子で続ける。
「ここまでやるか?」
「何をですか?」
 ナタリーはにっこりと笑みを深める。
 何をやったかは不明だが、エリーナの要望通り『可能な限り』王国に交渉したらしい。
「まあ良い。被害者は可哀そうだとは思うが、済んだことだ。
 今日、お前らを呼んだのは新国についてだ」
 組合長はけっと吐き捨てるように言った。
 ……可哀そうな被害者が出たの?
「お前らには組合からの戦力として新国と戦ってほしい。
 何かと関わりがあるし、何より『悪戯娘』の適性が高いと思っている」
 確かにナタリーは集団戦というか指揮官が向いている気はする。
 あのエリーナが一目置いているくらいだし、ピノもいる。
「えぇ……? すみません」
 ナタリーは露骨に嫌そうな表情を浮かべた。
 すぐに謝罪したが、乗り気でないのは間違いない。
「仕方ないだろ! お前ら、完全に王都の英雄扱いなんだよ!
 参加させないわけにはいかねえだろッ!」
 組合長がキレた。
 連合での一件で、俺たちの王都での評価はさらに上がっていたのだ。
 連合を解放したと。
 ナタリーとアリスをちらりと見る。
 ナタリーは「あはは」なんて笑っているが、隣に立つ俺からすれば少し酒臭い。
 昨日も宴会でも開いていたのだろう。肩の上ではピノが呆れた顔を浮かべている。
 隣のアリスに至ってはうたた寝しているらしい。
 たまに「すぴー」という寝息が聞こえてきた。
 肉体の制御は加奈がしているようだ。
 小さな声で「ほら、起きてアリス」と呟いている。
 ……英雄?
 結局、ナタリーはこの依頼を受けた。
 初めから拒否権はないし、そもそも受けるつもりだったはずだ。
 エリーナとの一件もあるし、ここで逃げるタイプでもない。
 そもそもティアナが狙われているんだ。こいつは身内には甘い。
 いつの間にか、状況は三国と新国の争いになっていた。
 一見すると戦力に差があるように見えるが、実際そうでもないと思う。
 今にして思えば、ティアナを探していたのだろう。
 ハーフエルフを積極的に受け入れてきた結果、有力なハーフエルフは新国に集まっている。
 最低限、戦えるだけの人材はいるだろう。
 さらに正式名称『エルフの大森林』は三国を囲むように広がっている。
 地形を把握しているのは新国のみ。
 ゲリラ戦では新国が有利になるだろう。
 加えて、地下には『ドワーフの大空洞』もある。
 こちらに至っては知識はほとんどなく、入る手段すら限られている。
 そもそもエルフやドワーフは単体で人間という種全体に匹敵しているはずだ。
 転生してハーフエルフや鬼になっているとは言え、侮れない。
 人数で有利不利を語っても意味はないだろう。
 ……しかし、この戦いは最終的に俺たちが勝つ運命だ。
 運命はティアナを新国の王にしようとするからだ。
 運命がゼノを殺すのが先か。
 青鬼がティアナを殺すのが先か。