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第四部 54話 善意

ー/ー



 それは意外と早かった。
 午前中にピノが俺を呼びに来た。

 俺は急いで準備をすると、家を飛び出す。
 ティアナは学院に行っている。交流会も終わり、授業を再開していた。

 向かった先は組合の窓口。
 全力で走って、大きな音を立てながら中に入ると、すでにナタリーとアリスがいた。

「……来たね」
 ナタリーが苦笑交じりに言った。

「おい! 早すぎるだろ! もう来たってのか!?」
「残念ながら。ティアナがいなくて良かったよ」

 俺の剣幕にアリスが笑う。だが、その通りだ。
 出来ればティアナには聞かせたくない。

「もう追いついたってのか!?
 フットワーク軽すぎだろ、あの婆さんっ!」

 連合に置いて来たはずの老婆がティアナを追ってきたのだった。
 王女であるティアナを執拗に追い回すので、何も言わずに逃げたのに。

「ひとまず対策を立てないと。
 まず、ティアナの名前はバレてるのよね」

「あとは王立学院の生徒だってこともバレてるでしょうね。
 交流会に来ていたのは知っているはずだから」

 ナタリーの言葉にアリスが付け加える。
 まずいな、これだけ情報があれば俺の家まで来てもおかしくない。

 老婆は王女の世話をしたいらしく、ティアナに構っては失敗し続けていた。
 悪意がないのは分かるが、ティアナ本人が嫌がっているのだから良くない。

「よし、偽の情報を流そう。家名は言ってないはずだから誤魔化せるかも」
「了解。それじゃあ、私はすぐに助けを呼べるような仕組みを作るね」

 ナタリーとアリスが対策を立てていく。
 A級冒険者のやることではない気がするが黙っておいた。

 翌日には『ティアナ』という人物のガセ情報が王都中に山ほど出回った。
 さらにティアナ本人には一枚の紙が手渡される。

 そこには魔法陣が書かれており、起動すると大きな警告音が鳴る。
 恐らくこの世界初の防犯ブザーである。

 ……変質者かな?




「……執念って怖いわね」
 数日後、ナタリーは頭を抱えていた。

 老婆は『ティアナ』のガセ情報を虱潰しに確認していったのだ。
 顔は知っているのだから、会えば良いという単純な手である。

「それも、少しずつ特定していってるし。
 一昨日からは一番街に絞って、昨日はすぐ近くまで行ってたね」

 ナタリーの言葉に俺は両手で顔を覆った。

「そうなんだよ! 昨日、家の近所で見かけたんだ!
 どうやったら足だけで『ティアナ』っていう名前からここまで来れるんだ!?」

「まずいね。少しずつ近づいてる。
 このままだと、捕まるかもしれない」

 俺の肩にぽんと手を置いて、アリスが言った。
 
 三日前は王都。一昨日は一番街。
 そして、昨日は家の近所だ。

 まだ遭遇はしていないが、どんどん近づいている。
 このままでは時間の問題かもしれない。

 ……怪談かな?



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 それは意外と早かった。
 午前中にピノが俺を呼びに来た。
 俺は急いで準備をすると、家を飛び出す。
 ティアナは学院に行っている。交流会も終わり、授業を再開していた。
 向かった先は組合の窓口。
 全力で走って、大きな音を立てながら中に入ると、すでにナタリーとアリスがいた。
「……来たね」
 ナタリーが苦笑交じりに言った。
「おい! 早すぎるだろ! もう来たってのか!?」
「残念ながら。ティアナがいなくて良かったよ」
 俺の剣幕にアリスが笑う。だが、その通りだ。
 出来ればティアナには聞かせたくない。
「もう追いついたってのか!?
 フットワーク軽すぎだろ、あの婆さんっ!」
 連合に置いて来たはずの老婆がティアナを追ってきたのだった。
 王女であるティアナを執拗に追い回すので、何も言わずに逃げたのに。
「ひとまず対策を立てないと。
 まず、ティアナの名前はバレてるのよね」
「あとは王立学院の生徒だってこともバレてるでしょうね。
 交流会に来ていたのは知っているはずだから」
 ナタリーの言葉にアリスが付け加える。
 まずいな、これだけ情報があれば俺の家まで来てもおかしくない。
 老婆は王女の世話をしたいらしく、ティアナに構っては失敗し続けていた。
 悪意がないのは分かるが、ティアナ本人が嫌がっているのだから良くない。
「よし、偽の情報を流そう。家名は言ってないはずだから誤魔化せるかも」
「了解。それじゃあ、私はすぐに助けを呼べるような仕組みを作るね」
 ナタリーとアリスが対策を立てていく。
 A級冒険者のやることではない気がするが黙っておいた。
 翌日には『ティアナ』という人物のガセ情報が王都中に山ほど出回った。
 さらにティアナ本人には一枚の紙が手渡される。
 そこには魔法陣が書かれており、起動すると大きな警告音が鳴る。
 恐らくこの世界初の防犯ブザーである。
 ……変質者かな?
「……執念って怖いわね」
 数日後、ナタリーは頭を抱えていた。
 老婆は『ティアナ』のガセ情報を虱潰しに確認していったのだ。
 顔は知っているのだから、会えば良いという単純な手である。
「それも、少しずつ特定していってるし。
 一昨日からは一番街に絞って、昨日はすぐ近くまで行ってたね」
 ナタリーの言葉に俺は両手で顔を覆った。
「そうなんだよ! 昨日、家の近所で見かけたんだ!
 どうやったら足だけで『ティアナ』っていう名前からここまで来れるんだ!?」
「まずいね。少しずつ近づいてる。
 このままだと、捕まるかもしれない」
 俺の肩にぽんと手を置いて、アリスが言った。
 三日前は王都。一昨日は一番街。
 そして、昨日は家の近所だ。
 まだ遭遇はしていないが、どんどん近づいている。
 このままでは時間の問題かもしれない。
 ……怪談かな?