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【1】②

ー/ー



「同じの買えば?」
 次の日学校で悩み話した私に、仲のいいセンちゃんが秒で返して来た。
「同じ、って。どこで買ったか訊くわけにいかないし」
「いや、これ『Florey』でしょ? モールとかデパート行けば絶対あるって。まったく同じのは廃版かもしれないけど、似たテイストはあるはずだよ」
 アキも簡単に言う。

 なんでそんなのわかんの?
 確かに隅っこに小さく『Florey』って刺繍入ってるけど、これブランド名? 初めて聞いた。すごいな、ってか私が疎すぎるのか。
「あたしなら色違いのが欲しいけど、先輩の気持ちはわかんないから。無難に同じピンクがいいよ」
「じゃあさぁ、今日一緒に探しに行こうよ。モール」
 協力してくれる二人に感謝して、放課後三人で買いに行くことにしたんだ。
 幸い定番商品だったらしくて、同じものがすぐに見つかる。店員さんに買うって伝えて、プレゼント包装頼もうとしたら二人に止められた。「普通のがいい! 逆に気ぃ遣わせるでしょ」って、確かにそうかも。
 ついて来てもらってよかったよ。私、ホントに何もできないんだ……。

「こんなのどうでもよかったのに。ちゃんと言っておけばよかった。──かえってごめんなさいね」
「いえ、そんな。当然ですから! ありがとうございました」
 翌日洗って乾かしたのと買ったものと両方を渡してお詫びとお礼する私に、屋敷先輩は戸惑ってた。これでさえそうなんだから、プレゼント用の派手な包みにしなくて正解だった!
 ありがと、アキとセンちゃん!
 それ以来、私は屋敷先輩と仲良くなったんだ。
 ……後輩なのに『仲良く』なんて失礼かもしれないけど。
 ときどき昼休みに教室にお邪魔して、お時間ありそうだったらお話したりとか、その程度なんだけどね。

「あの、お名前で、……『あゆ()先輩』ってお呼びしても構いませんか!?」
「え? ええ、いいわよ」
 いきなり訊いた私に、先輩はちょっとびっくりしたみたいだけどすぐに頷いてくれた。よかった。ずっとお願いしてみたかったんだけど、なかなか切り出せなかったんだ。私には『やっと』だけど、先輩にとっては『突然』だもんね。

「『あゆ美先輩』って呼んでいいって言ってもらったの! やった! なんか距離近くなった気がする~」
「行動力あんね。ノッコってそういうタイプだと思わなかったよ、あたし」
「あたしはそこまで意外でもないかな。ノッコって一生懸命でそういうとこ好き」
 興奮したままの勢いで報告した私に、センちゃんとアキはなんか薄い反応だった。
 だけどこの二人は私のヘンなとこも嘲笑ったりしないから。思うことあったらはっきり口にするよ、きっと。

「お姉さま〜、ってやつぅ? ホントにいるんだな」
 三人で喋ってた私たちの横通ったクラスの男子が揶揄ってきた。
 ちょっとふざけただけだって、それくらいわかってる。私が笑って流せば済むことくらい。
 だけど、自分でもなんでと思うくらいイラッとした。わりと短気なセンちゃんが口開く前に、自分で反撃に出る。
「だったら何? なんか悪い?」
 私の極限まで低い声に、彼は目に見えるくらい顔色変えた。
「あ、あ! ゴメン、俺ちょっとした冗談で。悪かった」
 真顔で返されて向こうも焦ったみたい。「……別に」ってどっかで聞いたみたいな言葉だけで、私はふ横向いた。
 女子の先輩相手で何が悪いの!?
 誰も応援しろとか喜べとか言わないし思ってもないんだからさ。人のことは放っといてよ!
 私はあゆ美先輩がなのかな。おかしいよね。女の子なのに女の人が好きだなんて。自分でも自分の心が見えない。
 私は恋したことないの。
 だから「初恋はいつ?」って訊かれんの超困る。……笑って誤魔化すしかないもん。
 あの日から少しずつ増えて行く不思議な気持ち。これって何?
 先輩には好きな人がいると思う。……たぶんあの人かも、っていう心当たりはあるんだ。たま~に先輩がぼんやりと目で追ってる先生。

 もちろん訊く気なんかないよ。もし合ってたら余計に訊けないし、全力で気づかない振りする以外ないじゃない。私の学年は受け持ってないからよく知らないけど独身なのかな? 結構おじさんだよね?
 先輩はちゃんと男の人が好きなんだ。もしあの先生じゃなかったとしても。
 私が告白しても先輩は撥ねつけたりしないはず。受け入れてはくれないだろうけど、そのあとも避けたりしないしできない人だわ。
 ──だからこそ絶対に知られちゃいけない。好きな人を困らせるなんて自分が許せないもん

「屋敷先輩ってさ、背も高くて美人でモデルさんみたいだよねー」
「うん。あの明るい色のショートヘアもめっちゃカッコいい! なのにうちの制服(セーラー服)似合うの凄くね? これってどー見ても『可愛い』タイプじゃん?」
 あゆ美先輩は二人も言うように大人びた美人で目立つけど、実はおとなしい人なんだよね。
 お顔立ちがシャープで長身だし、「男役みたいでカッコイイ!」とか言われてんの何度も聞いた。
 それはまだしも、「そのへんの男より男っぽくて素敵」ってのは違う気がする。あゆ美先輩はむしろ「女らしい」人だと思うんだけど。
 ……「らしい」とかも今はあんまり良くないのかな。
 でも本当に、このブルーグレーのセーラー服も凄くお似合いなの。
 制服ってみんなが同じもの着るから『素材』の差が出る、なんて意地悪な人もいるけど、まあ実際その通りだよね。

 やっぱり美人でスタイルいいとなんでも着こなせるんだなぁ。



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「同じの買えば?」
 次の日学校で悩み話した私に、仲のいいセンちゃんが秒で返して来た。
「同じ、って。どこで買ったか訊くわけにいかないし」
「いや、これ『Florey』でしょ? モールとかデパート行けば絶対あるって。まったく同じのは廃版かもしれないけど、似たテイストはあるはずだよ」
 アキも簡単に言う。
 なんでそんなのわかんの?
 確かに隅っこに小さく『Florey』って刺繍入ってるけど、これブランド名? 初めて聞いた。すごいな、ってか私が疎すぎるのか。
「あたしなら色違いのが欲しいけど、先輩の気持ちはわかんないから。無難に同じピンクがいいよ」
「じゃあさぁ、今日一緒に探しに行こうよ。モール」
 協力してくれる二人に感謝して、放課後三人で買いに行くことにしたんだ。
 幸い定番商品だったらしくて、同じものがすぐに見つかる。店員さんに買うって伝えて、プレゼント包装頼もうとしたら二人に止められた。「普通のがいい! 逆に気ぃ遣わせるでしょ」って、確かにそうかも。
 ついて来てもらってよかったよ。私、ホントに何もできないんだ……。
「こんなのどうでもよかったのに。ちゃんと言っておけばよかった。──かえってごめんなさいね」
「いえ、そんな。当然ですから! ありがとうございました」
 翌日洗って乾かしたのと買ったものと両方を渡してお詫びとお礼する私に、屋敷先輩は戸惑ってた。これでさえそうなんだから、プレゼント用の派手な包みにしなくて正解だった!
 ありがと、アキとセンちゃん!
 それ以来、私は屋敷先輩と仲良くなったんだ。
 ……後輩なのに『仲良く』なんて失礼かもしれないけど。
 ときどき昼休みに教室にお邪魔して、お時間ありそうだったらお話したりとか、その程度なんだけどね。
「あの、お名前で、……『あゆ|美《み》先輩』ってお呼びしても構いませんか!?」
「え? ええ、いいわよ」
 いきなり訊いた私に、先輩はちょっとびっくりしたみたいだけどすぐに頷いてくれた。よかった。ずっとお願いしてみたかったんだけど、なかなか切り出せなかったんだ。私には『やっと』だけど、先輩にとっては『突然』だもんね。
「『あゆ美先輩』って呼んでいいって言ってもらったの! やった! なんか距離近くなった気がする~」
「行動力あんね。ノッコってそういうタイプだと思わなかったよ、あたし」
「あたしはそこまで意外でもないかな。ノッコって一生懸命でそういうとこ好き」
 興奮したままの勢いで報告した私に、センちゃんとアキはなんか薄い反応だった。
 だけどこの二人は私のヘンなとこも嘲笑ったりしないから。思うことあったらはっきり口にするよ、きっと。
「お姉さま〜、ってやつぅ? ホントにいるんだな」
 三人で喋ってた私たちの横通ったクラスの男子が揶揄ってきた。
 ちょっとふざけただけだって、それくらいわかってる。私が笑って流せば済むことくらい。
 だけど、自分でもなんでと思うくらいイラッとした。わりと短気なセンちゃんが口開く前に、自分で反撃に出る。
「だったら何? なんか悪い?」
 私の極限まで低い声に、彼は目に見えるくらい顔色変えた。
「あ、あ! ゴメン、俺ちょっとした冗談で。悪かった」
 真顔で返されて向こうも焦ったみたい。「……別に」ってどっかで聞いたみたいな言葉だけで、私はふ横向いた。
 女子の先輩相手で何が悪いの!?
 誰も応援しろとか喜べとか言わないし思ってもないんだからさ。人のことは放っといてよ!
 私はあゆ美先輩が《《好き》》なのかな。おかしいよね。女の子なのに女の人が好きだなんて。自分でも自分の心が見えない。
 私は恋したことないの。
 だから「初恋はいつ?」って訊かれんの超困る。……笑って誤魔化すしかないもん。
 あの日から少しずつ増えて行く不思議な気持ち。これって何?
 先輩には好きな人がいると思う。……たぶんあの人かも、っていう心当たりはあるんだ。たま~に先輩がぼんやりと目で追ってる先生。
 もちろん訊く気なんかないよ。もし合ってたら余計に訊けないし、全力で気づかない振りする以外ないじゃない。私の学年は受け持ってないからよく知らないけど独身なのかな? 結構おじさんだよね?
 先輩はちゃんと男の人が好きなんだ。もしあの先生じゃなかったとしても。
 私が告白しても先輩は撥ねつけたりしないはず。受け入れてはくれないだろうけど、そのあとも避けたりしないしできない人だわ。
 ──だからこそ絶対に知られちゃいけない。好きな人を困らせるなんて自分が許せないもん
「屋敷先輩ってさ、背も高くて美人でモデルさんみたいだよねー」
「うん。あの明るい色のショートヘアもめっちゃカッコいい! なのにうちの|制服《セーラー服》似合うの凄くね? これってどー見ても『可愛い』タイプじゃん?」
 あゆ美先輩は二人も言うように大人びた美人で目立つけど、実はおとなしい人なんだよね。
 お顔立ちがシャープで長身だし、「男役みたいでカッコイイ!」とか言われてんの何度も聞いた。
 それはまだしも、「そのへんの男より男っぽくて素敵」ってのは違う気がする。あゆ美先輩はむしろ「女らしい」人だと思うんだけど。
 ……「らしい」とかも今はあんまり良くないのかな。
 でも本当に、このブルーグレーのセーラー服も凄くお似合いなの。
 制服ってみんなが同じもの着るから『素材』の差が出る、なんて意地悪な人もいるけど、まあ実際その通りだよね。
 やっぱり美人でスタイルいいとなんでも着こなせるんだなぁ。