翌日。
ナタリーとアリスはすっかりだらけきっていた。
昼食後、ナタリーは宿の広間でだらだらと椅子に座っていた。
アリスに至ってはすぐ隣でテーブルに突っ伏して眠っている。
昨日は夜遅くまで飲んでいたらしい。きっと二日酔いだ。
仕事終わりの一杯だとほざいていた。
ティアナの教育に悪いので、本当にやめてほしい。
ちなみに仕事はまだ終わっていない。
しかし、しばらくするとジークとフレアが宿に飛び込んできた。
フレアはジークの護衛をしているらしい。扱いは客人だが。
「大変だよ! 新国が連合に宣戦布告した!」
「え!?」
フレアの言葉に俺は思わず声を漏らす。ジークは顔をしかめている。
連合のトップが変わったからと言って、いきなり戦争を吹っ掛けるものか?
「……それはおかしいな」
「やっぱり変か?」
ナタリーが呟いた。先ほどまでのだらけた空気は消えていた。
俺が訊き直すと、ナタリーは首を横に振る。
「ううん、変ではない。でも、早すぎるのよ。
こうなる可能性を事前に考えていたとしか思えない……?」
ナタリーはそう言って考え込んでしまった。
「新国が攻撃を仕掛けてくるなら、急いで王国に戻った方が良いのでは?」
代わりにジークが口を開いた。
そうか。王国側の人間が関わってるとなれば、ややこしいことになる。
「そうだね。今夜には出発した方が良いかな。
でも、新国が急いで攻める理由がないような? ……ひょっとして」
ナタリーは出発を早めながら、何かに気が付いたようだった。
随分と長い付き合いになるが、この切り替えの速さには未だ慣れない。
「では、これでお別れですね」
「そっか……静かになっちゃうな」
「はは、またすぐに会うと思うけど」
フレアとジークの言葉にナタリーは軽く笑う。
まあ、実際すぐに会うだろう。
俺たちは挨拶を済ませると、夜を待った。
元々準備していた連合から王国への親書をジークから受け取ると、闇に紛れてエイク市を発った。鬼が残っている可能性を考慮したようだ。ジークの手回しで検問を素通り同然で抜けると、明け方には王国へと入った。
続けてベックリンのフェリスとガロシュ三兄弟への挨拶もあっさりと済ませて、ナタリーはとにかく王都への到着を最優先させた。結局、最初にエイク市を出発する予定だった日には王都の門を通ることが出来た。
のんびり帰る予定だった俺たちは疲労困憊しながら、どうにか王都まで戻って来たのだった。
急いだ理由を訊いてもナタリーは「確かめたいことがある」の一点張りで、詳しいことは言わない。
ただ、ナタリーのティアナに対する視線が気になった。