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第四部 47話 残った大問題

ー/ー



 青鬼がいなくなると、鬼たちは一斉に撤退を始めた。
 暴動の鎮圧に向かった鬼も散っていくだろう。

 ジークは追わないことを決めた。というより、追えない。
 まずは連合を掌握することが先決だった。

 しかしコルネリウスが倒れたと分かれば、連合側は驚くほどに協力的だった。
 ……都市の鬼たちには思うところがあったのだろう。

 ジークは夜通し働いて、ナタリーはそのサポートに回っていた。
 ティアナも一生懸命に手伝っては褒められ、俺とグレイは馬鹿面を並べて眺めていた。あ、もちろん罵られた。

 白鬼に意識を奪われたフレアは一晩の間、目を覚まさなかった。
 いつの間にかアリスも隣ですやすや眠っており、どれだけナタリーが叩き起こそうとしても目を覚まさなかった。



 結局、全員で話ができるようになったのは翌日の早朝だった。
 ひとまず泊まっていた宿に集合することになった。
 
「……これで一段落ですかね?」
「そうだね。あとは国境付近の軍にコルネリウス派がいなければ大丈夫そう」
 
 ジークとナタリーが帰って来た。
 ティアナがちょこんと後ろを付いてくる。
 
「……ごめんね、白鬼は倒したんだけど」
「あはは、おかえりー。遅かったね?」
 
 フレアが申し訳なさそうに頭を下げる。すでに男装は解いている。
 隣でアリスがひらひらと手を振った。明らかに起き抜けだった。
 
 この差は何だろう。
 どちらも英雄の血筋になるはずだが?
 
 先ほどまで二人とも眠っていた。目を覚ましたから、折角だからと集まったのだ。
 俺とグレイは「邪魔だから」と眠る二人の護衛に回されたのだった。

 通りすがりにナタリーはアリスの頭をスパン、と叩く。
 頭を押さえるアリスをよそに話を切り出した。

「ひとまず、状況は落ち着いたと思う。
 とにかく今は暴動を起こした協力者と合流するべきね」

「ええ、そこまで行けば僕たちで対処できます。
 皆さん、本当にありがとうございました。この恩は必ず」

「うん、ありがとね」

 ジークとフレアが頭を下げる。
 王国としては連合との敵対関係を解消できたことになる。

「それじゃあ、いったん休むことに……」
「あ、あの!」

 俺はナタリーの言葉を遮る。
 でも、言わないわけにはいかないだろう。
 ……何せ王女様である。

「何? 大事な話?」

 ナタリーが少し不機嫌に応じた。
 流石に疲れているのだろう。

 俺は何度も頷いて、懐からブローチを取り出した。
 俺がこれを持っていることはナタリーとピノは知っている。

「? そのブローチ、まだ持ってたの?
 さっさと返して来れば良いんじゃない?」

 ナタリーの声にはやはり棘がある。
 ……珍しい。

「あ! あの時のブローチじゃない?
 ちょっと借りても良いかな?」

 フレアが目を丸くした。
 お前はまだ諦めてないのか。

「? なんだ? ブローチ?」

 グレイだけは首を傾げる。
 そうか、見たことがないか。

 メンバーが一斉に話し始めた。
 俺は面倒臭くなってしまい、ブローチをティアナに渡す。

「……ティアナ、頼む」
「? はい」

 ティアナはブローチを受け取ると、魔力を流した。
 すぐにブローチが蒼く光る。ティアナは魔力を流すと光ることだけ知っている。

「だから! さっさと要件を……?」

 ナタリーが首を傾げる。
 すぐに目をまん丸に見開いた。

「ちょっと貸してって。ひょっとしたら……?」

 フレアがティアナの手からブローチを奪う。
 光が消えたのを見て、首を傾げた。混乱もするだろう。

「? そのブローチは何なんだ?」

 グレイが首を傾げる。
 こいつは必ず何も分かっていないのだ。

 冷静になったナタリーと話す。事の重大さを理解してくれたようだ。
 すぐに老婆の元へと向かうことになった。
 
 考えてみれば、これほど条件を満たしている人物もいないだろう。
 ナタリーが後悔し始めたほどだ。

 ハーフエルフ。王都の孤児院出身。両親の顔も知らない。幼い王女が消息を絶ったのはおよそ二十年弱ほど前。ティアナは推定十八歳である。

「あと……それっぽいだろう?」

 俺が最後にそう言ってティアナを示す。
 すぐに頷きが返って来た。

「私の時と違う!」
 フレアは叫んだが相手にされなかった。

「? 結局、この光るブローチは何なんですか?」
 しかし本人も何も分かっていないのだった。



「ブローチを見つけてくださったのですね。
 助かりました、これで王女様を探せます」

 ひとまず俺がブローチを見せると、老婆はすぐにお礼を言ってきた。
 俺は同じ要領でティアナにブローチを光らせた。

「そんな……フィオネ様」

 そう言って、老婆はティアナの顔をまじまじと見つめる。
 初対面のはずだ。そして瞳を潤ませた。

「白髪は王妃様に似たのですね。ですが、顔立ちは……あぁ。
 姉君であるミーシャ姫と瓜二つでございます」

「……フィオネ」

 ティアナが小さく呟く。
 宝石のような蒼い瞳が輝いていた。



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 青鬼がいなくなると、鬼たちは一斉に撤退を始めた。
 暴動の鎮圧に向かった鬼も散っていくだろう。
 ジークは追わないことを決めた。というより、追えない。
 まずは連合を掌握することが先決だった。
 しかしコルネリウスが倒れたと分かれば、連合側は驚くほどに協力的だった。
 ……都市の鬼たちには思うところがあったのだろう。
 ジークは夜通し働いて、ナタリーはそのサポートに回っていた。
 ティアナも一生懸命に手伝っては褒められ、俺とグレイは馬鹿面を並べて眺めていた。あ、もちろん罵られた。
 白鬼に意識を奪われたフレアは一晩の間、目を覚まさなかった。
 いつの間にかアリスも隣ですやすや眠っており、どれだけナタリーが叩き起こそうとしても目を覚まさなかった。
 結局、全員で話ができるようになったのは翌日の早朝だった。
 ひとまず泊まっていた宿に集合することになった。
「……これで一段落ですかね?」
「そうだね。あとは国境付近の軍にコルネリウス派がいなければ大丈夫そう」
 ジークとナタリーが帰って来た。
 ティアナがちょこんと後ろを付いてくる。
「……ごめんね、白鬼は倒したんだけど」
「あはは、おかえりー。遅かったね?」
 フレアが申し訳なさそうに頭を下げる。すでに男装は解いている。
 隣でアリスがひらひらと手を振った。明らかに起き抜けだった。
 この差は何だろう。
 どちらも英雄の血筋になるはずだが?
 先ほどまで二人とも眠っていた。目を覚ましたから、折角だからと集まったのだ。
 俺とグレイは「邪魔だから」と眠る二人の護衛に回されたのだった。
 通りすがりにナタリーはアリスの頭をスパン、と叩く。
 頭を押さえるアリスをよそに話を切り出した。
「ひとまず、状況は落ち着いたと思う。
 とにかく今は暴動を起こした協力者と合流するべきね」
「ええ、そこまで行けば僕たちで対処できます。
 皆さん、本当にありがとうございました。この恩は必ず」
「うん、ありがとね」
 ジークとフレアが頭を下げる。
 王国としては連合との敵対関係を解消できたことになる。
「それじゃあ、いったん休むことに……」
「あ、あの!」
 俺はナタリーの言葉を遮る。
 でも、言わないわけにはいかないだろう。
 ……何せ王女様である。
「何? 大事な話?」
 ナタリーが少し不機嫌に応じた。
 流石に疲れているのだろう。
 俺は何度も頷いて、懐からブローチを取り出した。
 俺がこれを持っていることはナタリーとピノは知っている。
「? そのブローチ、まだ持ってたの?
 さっさと返して来れば良いんじゃない?」
 ナタリーの声にはやはり棘がある。
 ……珍しい。
「あ! あの時のブローチじゃない?
 ちょっと借りても良いかな?」
 フレアが目を丸くした。
 お前はまだ諦めてないのか。
「? なんだ? ブローチ?」
 グレイだけは首を傾げる。
 そうか、見たことがないか。
 メンバーが一斉に話し始めた。
 俺は面倒臭くなってしまい、ブローチをティアナに渡す。
「……ティアナ、頼む」
「? はい」
 ティアナはブローチを受け取ると、魔力を流した。
 すぐにブローチが蒼く光る。ティアナは魔力を流すと光ることだけ知っている。
「だから! さっさと要件を……?」
 ナタリーが首を傾げる。
 すぐに目をまん丸に見開いた。
「ちょっと貸してって。ひょっとしたら……?」
 フレアがティアナの手からブローチを奪う。
 光が消えたのを見て、首を傾げた。混乱もするだろう。
「? そのブローチは何なんだ?」
 グレイが首を傾げる。
 こいつは必ず何も分かっていないのだ。
 冷静になったナタリーと話す。事の重大さを理解してくれたようだ。
 すぐに老婆の元へと向かうことになった。
 考えてみれば、これほど条件を満たしている人物もいないだろう。
 ナタリーが後悔し始めたほどだ。
 ハーフエルフ。王都の孤児院出身。両親の顔も知らない。幼い王女が消息を絶ったのはおよそ二十年弱ほど前。ティアナは推定十八歳である。
「あと……それっぽいだろう?」
 俺が最後にそう言ってティアナを示す。
 すぐに頷きが返って来た。
「私の時と違う!」
 フレアは叫んだが相手にされなかった。
「? 結局、この光るブローチは何なんですか?」
 しかし本人も何も分かっていないのだった。
「ブローチを見つけてくださったのですね。
 助かりました、これで王女様を探せます」
 ひとまず俺がブローチを見せると、老婆はすぐにお礼を言ってきた。
 俺は同じ要領でティアナにブローチを光らせた。
「そんな……フィオネ様」
 そう言って、老婆はティアナの顔をまじまじと見つめる。
 初対面のはずだ。そして瞳を潤ませた。
「白髪は王妃様に似たのですね。ですが、顔立ちは……あぁ。
 姉君であるミーシャ姫と瓜二つでございます」
「……フィオネ」
 ティアナが小さく呟く。
 宝石のような蒼い瞳が輝いていた。