第四部 45話 キースと赤鬼2
ー/ー
俺は内心で舌打ちしながら、さらに踏み込んだ。
右の長剣を払い、左の小剣を袈裟に斬り下ろす。
赤鬼は長剣の方を鉄棒で受けると、小剣は半歩下がって避ける。
さらに左手を鉄棒から放して裏拳に俺の顔を殴ろうとした。
「……ち」
俺は舌打ちを漏らしながら、赤鬼の拳を屈んで躱す。
途端に赤鬼は鉄棒を突き込んできた。
受けてはいけない。その瞬間に吹き飛ぶ。
最悪、剣が砕けてもおかしくない。
咄嗟に障壁を張る。
まともに張っても砕けてしまうだろう。
「……器用だな」
赤鬼が感心したように呟いた。
俺は障壁を斜めに張っていた。
屈んだ俺を下に隠す形だ。赤鬼の鉄棒が上に弾かれる。
その赤鬼の顔目掛けて魔弾を放つ。
狙い通り、赤鬼が左腕で顔を庇った。
その隙に俺は横に飛び出す。
魔弾を目くらましにして、赤鬼の死角へと潜り込む。
「ああ、鬱陶しいな!」
「……それはお互い様じゃないか?」
赤鬼の叫びに小さく応じた。
さらに赤鬼は左腕を大きく振り回した。
俺は青い幻の予測に従って、姿勢を低くしてやり過ごす。
さらにその首を狙って飛び出した。
ガキン、という金属がぶつかる音。内心で舌打ちを繰り返す。
赤鬼は首を狙われることを予想して、鉄棒で首を守っていた。
「……ッ!」
その瞬間、赤鬼の目を見て寒気が走った。
真っ直ぐに俺を見て笑っていた。
直後、赤鬼の左手が俺の首へと伸びた。
空中の俺を掴もうとする。捕まったら終わりだ。
急いで俺は足元に障壁を張ると、赤鬼の頭上へと跳び上がる。
今度は赤鬼の舌打ちが鳴った。
俺は頭上から多数の魔弾剣を放つ。
ダメージはないだろうが、これも目くらましだ。
俺は赤鬼の脳天から長剣を振り下ろす。
やはり、赤鬼は魔弾剣には目もくれない。
致命傷以外は無視するつもりだろう。鉄棒で長剣を受けた。
――ここだ。
俺は左の小剣を逆手に握り直す。
鉄棒と長剣がぶつかった瞬間、目の前にある赤鬼の首を掻き切るように小剣を払う。
「あっぶねえなぁ! おい!」
「勘が良すぎだろ」
だが、赤鬼は左腕で首を庇っていた。
三代目まで来て、身体能力だけではなく、赤鬼は技術も身に着けるようになったようだ。
俺は危機感を覚える。だが、状況はこちらが有利だったらしい。
コルネリウスの暗い叫びが聞こえてきた。
ちらりと目を向ければ、ジークが目的を果たしたようだ。
時間稼ぎは成功ということになる。
「あーくそ、もう少し遊びたかったんだがな。
……せっかくだ。相打ちにでもするか」
赤鬼は足を止めて、残念そうな顔をしながら言った。
しかし、言っていることは好戦的にもほどがある。
相手にしたくはないが、他のメンバーを襲われては堪らない。
それに逃げられるのも嫌だ。コイツはここで殺しておきたい。
「いやいや、もう少し遊ぼうぜ?」
「はは、さっきと言ってることが真逆じゃねぇか」
「ほら、お友達になったから」
俺の軽口に小さく笑い、赤鬼は鉄棒を構えた。
全身から出ていた湯気がさらに多くなる。
「エル、全力だ」
「分かったわ。あの鉄棒が私に掠ったりしないでよ」
俺の言葉にエルは心配そうな声を出した。
掠っただけでも痛いじゃ済まなそうだ。
そして、赤鬼が踏み込んだ。
青い幻が俺の予測を描き出す。
赤鬼が鉄棒を突き出す。速い。
エルがいなければ見えてもいないだろう。
狙われた右肩を引いて、そのまま時計回りに回転する。
同時にしゃがみ込んだ。頭上で赤鬼の左手が空を切った。
さらに横へと転がる。鉄棒が床に叩きつけられた。
大きな音を立てて、床がひび割れる。
受け身を取った瞬間、横に跳んだ。今度は赤鬼の蹴りが空振る。
右足を突き出すように俺の首を狙っていた。
――ここだ。
ここまで防戦一方だった俺はすぐさま踏み込んだ。
赤鬼はすぐさま再度左手を伸ばしてきた。左の小剣を振り下ろして手首を切り落とす。
「……!」
赤鬼が小さく毒づいた。
しかしすぐに回復するだろう。
右の長剣を払いながら、さらに一歩踏み込む。
赤鬼が鉄棒で長剣を受けた。一際高い金属音。
今度は左の小剣を首へと突き込む。
赤鬼は手首から先のない左腕で防いだ。
その瞬間、俺は長剣から手を離した。
赤鬼が訝しむような声を出す。
俺は赤鬼の左側へと飛び込んだ。受け身も考えずに右腕を伸ばす。
その掌を赤鬼の首へと向けた。ありったけの魔力を叩き込む。
「――――ッ!」
両手を使い終わった赤鬼が驚いた顔で俺の掌を眺めている。
至近距離から放った魔弾剣が赤鬼の首を刈り取った。
赤鬼と俺が同時に倒れ込む。
しかし俺は肩で息をしながら立ち上がった。
やがて、転がった首は残念そうに口を開いた。
「あーあ、結局駄目かぁ……。
ま、楽しかったから良いか」
赤鬼はそう言うと、細かい粒子のように崩れていく。
その姿は今までの鬼の最期とは違っていた。
――まさか、命数を使い切ったのか?
――もう赤鬼は現れない? だとすれば、命数は三か?
俺が意識を割いた瞬間。
赤鬼は意表を突くように叫んだ。
「青! ブローチはそいつのポケットだ!
あの婆さんの匂いがする、奪え!」
赤鬼は首だけになりながら、そんなことを叫んだ。
「……何?」
カタ、という小さな音。
見れば、上着のポケットに入れていたはずのブローチが落ちていた。
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右の長剣を払い、左の小剣を袈裟に斬り下ろす。
赤鬼は長剣の方を鉄棒で受けると、小剣は半歩下がって避ける。
さらに左手を鉄棒から放して裏拳に俺の顔を殴ろうとした。
「……ち」
俺は舌打ちを漏らしながら、赤鬼の拳を屈んで躱す。
途端に赤鬼は鉄棒を突き込んできた。
受けてはいけない。その瞬間に吹き飛ぶ。
最悪、剣が砕けてもおかしくない。
咄嗟に障壁を張る。
まともに張っても砕けてしまうだろう。
「……器用だな」
赤鬼が感心したように呟いた。
俺は障壁を斜めに張っていた。
屈んだ俺を下に隠す形だ。赤鬼の鉄棒が上に弾かれる。
その赤鬼の顔目掛けて魔弾を放つ。
狙い通り、赤鬼が左腕で顔を庇った。
その隙に俺は横に飛び出す。
魔弾を目くらましにして、赤鬼の死角へと潜り込む。
「ああ、鬱陶しいな!」
「……それはお互い様じゃないか?」
赤鬼の叫びに小さく応じた。
さらに赤鬼は左腕を大きく振り回した。
俺は青い幻の予測に従って、姿勢を低くしてやり過ごす。
さらにその首を狙って飛び出した。
ガキン、という金属がぶつかる音。内心で舌打ちを繰り返す。
赤鬼は首を狙われることを予想して、鉄棒で首を守っていた。
「……ッ!」
その瞬間、赤鬼の目を見て寒気が走った。
真っ直ぐに俺を見て笑っていた。
直後、赤鬼の左手が俺の首へと伸びた。
空中の俺を掴もうとする。捕まったら終わりだ。
急いで俺は足元に障壁を張ると、赤鬼の頭上へと跳び上がる。
今度は赤鬼の舌打ちが鳴った。
俺は頭上から多数の魔弾剣を放つ。
ダメージはないだろうが、これも目くらましだ。
俺は赤鬼の脳天から長剣を振り下ろす。
やはり、赤鬼は魔弾剣には目もくれない。
致命傷以外は無視するつもりだろう。鉄棒で長剣を受けた。
――ここだ。
俺は左の小剣を逆手に握り直す。
鉄棒と長剣がぶつかった瞬間、目の前にある赤鬼の首を掻き切るように小剣を払う。
「あっぶねえなぁ! おい!」
「勘が良すぎだろ」
だが、赤鬼は左腕で首を庇っていた。
三代目まで来て、身体能力だけではなく、赤鬼は技術も身に着けるようになったようだ。
俺は危機感を覚える。だが、状況はこちらが有利だったらしい。
コルネリウスの暗い叫びが聞こえてきた。
ちらりと目を向ければ、ジークが目的を果たしたようだ。
時間稼ぎは成功ということになる。
「あーくそ、もう少し遊びたかったんだがな。
……せっかくだ。相打ちにでもするか」
赤鬼は足を止めて、残念そうな顔をしながら言った。
しかし、言っていることは好戦的にもほどがある。
相手にしたくはないが、他のメンバーを襲われては堪らない。
それに逃げられるのも嫌だ。コイツはここで殺しておきたい。
「いやいや、もう少し遊ぼうぜ?」
「はは、さっきと言ってることが真逆じゃねぇか」
「ほら、お友達になったから」
俺の軽口に小さく笑い、赤鬼は鉄棒を構えた。
全身から出ていた湯気がさらに多くなる。
「エル、全力だ」
「分かったわ。あの鉄棒が私に掠ったりしないでよ」
俺の言葉にエルは心配そうな声を出した。
掠っただけでも痛いじゃ済まなそうだ。
そして、赤鬼が踏み込んだ。
青い幻が俺の予測を描き出す。
赤鬼が鉄棒を突き出す。速い。
エルがいなければ見えてもいないだろう。
狙われた右肩を引いて、そのまま時計回りに回転する。
同時にしゃがみ込んだ。頭上で赤鬼の左手が空を切った。
さらに横へと転がる。鉄棒が床に叩きつけられた。
大きな音を立てて、床がひび割れる。
受け身を取った瞬間、横に跳んだ。今度は赤鬼の蹴りが空振る。
右足を突き出すように俺の首を狙っていた。
――ここだ。
ここまで防戦一方だった俺はすぐさま踏み込んだ。
赤鬼はすぐさま再度左手を伸ばしてきた。左の小剣を振り下ろして手首を切り落とす。
「……!」
赤鬼が小さく毒づいた。
しかしすぐに回復するだろう。
右の長剣を払いながら、さらに一歩踏み込む。
赤鬼が鉄棒で長剣を受けた。一際高い金属音。
今度は左の小剣を首へと突き込む。
赤鬼は手首から先のない左腕で防いだ。
その瞬間、俺は長剣から手を離した。
赤鬼が訝しむような声を出す。
俺は赤鬼の左側へと飛び込んだ。受け身も考えずに右腕を伸ばす。
その掌を赤鬼の首へと向けた。ありったけの魔力を叩き込む。
「――――ッ!」
両手を使い終わった赤鬼が驚いた顔で俺の掌を眺めている。
至近距離から放った魔弾剣が赤鬼の首を刈り取った。
赤鬼と俺が同時に倒れ込む。
しかし俺は肩で息をしながら立ち上がった。
やがて、転がった首は残念そうに口を開いた。
「あーあ、結局駄目かぁ……。
ま、楽しかったから良いか」
赤鬼はそう言うと、細かい粒子のように崩れていく。
その姿は今までの鬼の最期とは違っていた。
――まさか、命数を使い切ったのか?
――もう赤鬼は現れない? だとすれば、命数は三か?
俺が意識を割いた瞬間。
赤鬼は意表を突くように叫んだ。
「青! ブローチはそいつのポケットだ!
あの婆さんの匂いがする、奪え!」
赤鬼は首だけになりながら、そんなことを叫んだ。
「……何?」
カタ、という小さな音。
見れば、上着のポケットに入れていたはずのブローチが落ちていた。