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第四部 43話 ジークとコルネリウス

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 ジークはコルネリウスの長剣を受ける。
 すでに剣戟は十合や二十合では足りない。

 その度に体格で劣るジークは小さく後退する。
 それでも一瞬で立て直しては向かい合う。

 ずっと、その繰り返しだった。

 ――負けるわけにはいかない。
 ――無理を言って、直接戦うようにしてもらったんだ。

 当然、ナタリーは反対した。直接戦う必要はない。
 グレイとティアナを使うこともできると言っていた。

 それでもジークは譲らなかった。
 いや、どうしても譲れなかったのだ。

「……ぐ」

 コルネリウスが長剣を横に払う。
 ジークは両手で何とか弾き飛ばす。

「…………」
 コルネリウスが何か呟いた。

 コルネリウスの技量は決して高くはない。
 達人とは程遠いと言えるだろう。

 それでも一般の兵士とは比べ物にならない。
 腐ってもサンデル家の次男である。いや、そもそも優秀だった。

 兄であるジークの父とは年が離れていたため、後継ぎにはなりえなかった。
 だが、もし年齢が近かったら、後継者候補だったはずだ。

「……っ!」

 コルネリウスの一突きをどうにか弾く。
 さらに首を傾けて、ジークは必死に避けた。

 ジークは防戦一方になっていた。
 どうにか耐えているが、体格の差が大きい。

 ――サンデル家が取り戻す必要があるのだ。
 ――王国の力を借りても良い。騙し討ちでも良い。

 ――ただ、コイツだけは僕が殺さなければならない。
 ――だって、そうでなければ変わらない。

 ――鬼の力で父上を殺したコイツと同じだろう?

「…………!」
 コルネリウスがまた何かを呟いた。

 さらに袈裟に斬り下ろす。
 ジークは受け流すが、勢いを殺しきれずにたたらを踏む。

 どさ、と後ろで何かが倒れるような音。
 振り返ると、フレアが倒れ込んでいた。

「……フレア」

 すぐ近くに白鬼の首がある。
 外傷はなさそうだから意識を奪われたか。

 ジークはサンデル領を追い出された後、フレアを訪ねた。
 祖父の死後、彼女は一人で技を磨いていた。

 ジークは彼女に頼み込んで、自分に同行してもらったのだ。
 全ては今、この瞬間のために。

「……!」

 視線を戻すと同時に息を呑む。
 見れば、コルネリウスは一際大きく長剣を振り上げていた。

「お前さえ、生まれなければ――!」
 コルネリウスが叫ぶ。

 ――ああ、そうか。父上と母上は長く子供を授からなかった。
 ――だから、僕が生まれなければ領主になれると思ったのか。

 それはきっと事実だろう。
 だからこそ、鬼に付け込まれたのだ。

 コルネリウスの上段が振り下ろされる。
 今までとは違う。全力の一撃。

 ――今だ。

 ジークはそこに踏み込んだ。
 長剣を頭上で斜めに構える。その腹に左手を添えた。

 ジークハルトがフレアに頼んだことは一つ。
 剣術を教えてほしい、と。コルネリウスを討ち取りたい、と。

 あの日からずっと鍛錬を続けてきた。
 フレアはそれ以上の働きをしてくれたが、彼女は間違っても従者ではない。
 どちらかと言えば師匠に近い。

「――!」
「くっ……」

 コルネリウスの驚いた顔。
 ジークは真上からの振り下ろしを剣の腹で左に受け流す。
 支える左手に力を入れた。

 がんっ、とコルネリウスの一撃は床に叩きつけられた。
 ジークはさらに一歩踏み込む。

 上段からの斬り下ろしを受け流した体勢から左手を放す。
 それは右手一本の上段に他ならない。

「あ……」
 コルネリウスが恐怖から剣を手放して、後ろに下がる。

 ジークはさらに一歩踏み込みながら、長剣を振り下ろす。
 コルネリウスの右肩から左腰を切り裂いた。

「…………」

 ジークは肩で息をしながら、動きを止めていた。
 その手には確かに手応えがあった。

「あぁ……」

 コルネリウスは納得したような声を出しながら、うつ伏せに倒れ込む。
 大広間の床に大量の血が広がっていった。



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 ジークはコルネリウスの長剣を受ける。
 すでに剣戟は十合や二十合では足りない。
 その度に体格で劣るジークは小さく後退する。
 それでも一瞬で立て直しては向かい合う。
 ずっと、その繰り返しだった。
 ――負けるわけにはいかない。
 ――無理を言って、直接戦うようにしてもらったんだ。
 当然、ナタリーは反対した。直接戦う必要はない。
 グレイとティアナを使うこともできると言っていた。
 それでもジークは譲らなかった。
 いや、どうしても譲れなかったのだ。
「……ぐ」
 コルネリウスが長剣を横に払う。
 ジークは両手で何とか弾き飛ばす。
「…………」
 コルネリウスが何か呟いた。
 コルネリウスの技量は決して高くはない。
 達人とは程遠いと言えるだろう。
 それでも一般の兵士とは比べ物にならない。
 腐ってもサンデル家の次男である。いや、そもそも優秀だった。
 兄であるジークの父とは年が離れていたため、後継ぎにはなりえなかった。
 だが、もし年齢が近かったら、後継者候補だったはずだ。
「……っ!」
 コルネリウスの一突きをどうにか弾く。
 さらに首を傾けて、ジークは必死に避けた。
 ジークは防戦一方になっていた。
 どうにか耐えているが、体格の差が大きい。
 ――サンデル家が取り戻す必要があるのだ。
 ――王国の力を借りても良い。騙し討ちでも良い。
 ――ただ、コイツだけは僕が殺さなければならない。
 ――だって、そうでなければ変わらない。
 ――鬼の力で父上を殺したコイツと同じだろう?
「…………!」
 コルネリウスがまた何かを呟いた。
 さらに袈裟に斬り下ろす。
 ジークは受け流すが、勢いを殺しきれずにたたらを踏む。
 どさ、と後ろで何かが倒れるような音。
 振り返ると、フレアが倒れ込んでいた。
「……フレア」
 すぐ近くに白鬼の首がある。
 外傷はなさそうだから意識を奪われたか。
 ジークはサンデル領を追い出された後、フレアを訪ねた。
 祖父の死後、彼女は一人で技を磨いていた。
 ジークは彼女に頼み込んで、自分に同行してもらったのだ。
 全ては今、この瞬間のために。
「……!」
 視線を戻すと同時に息を呑む。
 見れば、コルネリウスは一際大きく長剣を振り上げていた。
「お前さえ、生まれなければ――!」
 コルネリウスが叫ぶ。
 ――ああ、そうか。父上と母上は長く子供を授からなかった。
 ――だから、僕が生まれなければ領主になれると思ったのか。
 それはきっと事実だろう。
 だからこそ、鬼に付け込まれたのだ。
 コルネリウスの上段が振り下ろされる。
 今までとは違う。全力の一撃。
 ――今だ。
 ジークはそこに踏み込んだ。
 長剣を頭上で斜めに構える。その腹に左手を添えた。
 ジークハルトがフレアに頼んだことは一つ。
 剣術を教えてほしい、と。コルネリウスを討ち取りたい、と。
 あの日からずっと鍛錬を続けてきた。
 フレアはそれ以上の働きをしてくれたが、彼女は間違っても従者ではない。
 どちらかと言えば師匠に近い。
「――!」
「くっ……」
 コルネリウスの驚いた顔。
 ジークは真上からの振り下ろしを剣の腹で左に受け流す。
 支える左手に力を入れた。
 がんっ、とコルネリウスの一撃は床に叩きつけられた。
 ジークはさらに一歩踏み込む。
 上段からの斬り下ろしを受け流した体勢から左手を放す。
 それは右手一本の上段に他ならない。
「あ……」
 コルネリウスが恐怖から剣を手放して、後ろに下がる。
 ジークはさらに一歩踏み込みながら、長剣を振り下ろす。
 コルネリウスの右肩から左腰を切り裂いた。
「…………」
 ジークは肩で息をしながら、動きを止めていた。
 その手には確かに手応えがあった。
「あぁ……」
 コルネリウスは納得したような声を出しながら、うつ伏せに倒れ込む。
 大広間の床に大量の血が広がっていった。