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第四部 39話 情報の断片たち

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 しばらく小屋で待った後、グレイはピノの案内で戻って来た。
 フィンにお礼を言って、エイク市の宿に戻って来たのは夜になってしまった。

 当然、すぐさま会議である。外で話せる内容ではない。
 大峡谷へと行ったメンバーも詳しい話はまだ聞いていなかった。

「さて、それじゃあ聞かせて。
 大峡谷から落ちて、一体何があったの?」

 全員が揃ったことを確認すると、ナタリーはそう言った。

「ああ、黒鬼に会った」
 グレイはそう切り出して、話し始めたのだった。



「お前、何でそんなことになってるんだよ!」
「俺が知りたいよ! 何故か俺が触ると扉が開くんだよ!」

 俺の言葉にグレイが叫んだ。もっともである。
 扉を開けられるから来い、と大峡谷から落とされては堪らない。
 ……ちなみに地上の扉は巧妙に隠されていたらしい。

 それにしても、グレイは今回の任務で一番割りを食っているかも知れない。
 この後、またメンテナンス……いや、台詞の覚え直しである。

「……今からでも、黒鬼を襲撃したらどうだろ?」
「!」

 フレアが軽い調子で言った。へらっと笑っている。
 感覚で話している癖に、ふと切れ味が鋭いことを言う。剣士らしいというか。

「いや、止めた方が良いですね」
「そうかな?」

 ジークがすぐに答えた。
 椅子に浅く腰掛けて、フレアを横目で見る。

「相手の陣地に攻め込むには情報が足りない。
 入った後、相手に扉を押さえられたら、僕たちは他の出口すら知らない」

「うん、私もそう思う」
「うーん、ジークに賛成かな」

「……む」

 ジークの言葉にアリスと加奈が応じた。
 フレアは納得したらしく、引き下がっていった。

 フレアが感覚派だとしたら、ジーク達は理論派かな。

「そうですよっ!
 せっかく教えてくれたのに酷いじゃないですかっ」

 ティアナが元気に言った。これは何派だろう?
 とりあえず理論派ではなさそうだ。論点がずれてる。

「まあ、本来の目的とは違うからな。
 ひとまずは放っておいて良いかな、ナタリー?」

 俺はそう言って、ナタリーを振り返る。
 すぐに息を呑んだ。

「青鬼は王都を二回襲撃した。
 七年ほどの間隔が空いていた。
 その間、青鬼の目撃情報は全くなかった。
 二度目の襲撃でお兄ちゃんを殺して自分も死んだ」

 ナタリーは目を閉じて、ぶつぶつと呟いていた。

「それから分かることは?
 七年間、青鬼は存在を消していたのかもしれない。
 一度目は赤鬼を『行かせた』後、青鬼自身は存在を消したことになる」

 俺はその言葉に耳を傾けていた。

「なぜ?
 存在を消している間は『魂』を使わずに済むのかもしれない。
 あるいは他にも何か……?」

 少しの間、考えてからナタリーは首を横に振る。
 判断材料がないという結論だろう。

「他は?
 死ぬことで存在座標のずれはリセットされるかもしれない。
 そっか……存在座標とは『魂』の座標なんだ。
 だとすれば 次の『魂』に移ればリセットされるのは当然か」

 ナタリーはこちらの視線は気にもせず、うんうんと何度か頷いた。

「他は?
 直接触れていなければ、他人を『帰す』ことはできないはずだ。
 それができるなら、二度目も青鬼と一緒に赤鬼は王都に現れたはず。
 三匹いるなら、正面から戦えた。やらない理由はない」

 そこまで思考を進めると、ナタリーは目を開けた。

「青鬼が捨て身でお兄ちゃんを殺しに来たのは、残り寿命が少なかったからか。
 きっと……七年間、存在を消して潜伏した後、残り少ない命を使い切ったんだ」

 そう結論付けた後、ナタリーは不意に首を傾げた。

「? じゃあ、ソフィアちゃんの時は?
 あの時、青鬼は自殺した。まだ寿命はあったはずなのに」

「――!」

 俺は知っている。この目で見たんだ。
 あの真赤の魂は見間違いじゃあなかった。

 あの黒い短刀……きっと魔道具だ。
 ああ、くそ。『黒鬼印』ということか。

 あの短刀を使って、ソフィアの――兄さんの魂を取り込んだ。
 空いていた命数を埋めたんだ。



「……森の中の扉?」

 呆然とした声を聞いた気がした。
 誰が言ったのか分からなかった。

 ……きっと気のせいだろう。



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 しばらく小屋で待った後、グレイはピノの案内で戻って来た。
 フィンにお礼を言って、エイク市の宿に戻って来たのは夜になってしまった。
 当然、すぐさま会議である。外で話せる内容ではない。
 大峡谷へと行ったメンバーも詳しい話はまだ聞いていなかった。
「さて、それじゃあ聞かせて。
 大峡谷から落ちて、一体何があったの?」
 全員が揃ったことを確認すると、ナタリーはそう言った。
「ああ、黒鬼に会った」
 グレイはそう切り出して、話し始めたのだった。
「お前、何でそんなことになってるんだよ!」
「俺が知りたいよ! 何故か俺が触ると扉が開くんだよ!」
 俺の言葉にグレイが叫んだ。もっともである。
 扉を開けられるから来い、と大峡谷から落とされては堪らない。
 ……ちなみに地上の扉は巧妙に隠されていたらしい。
 それにしても、グレイは今回の任務で一番割りを食っているかも知れない。
 この後、またメンテナンス……いや、台詞の覚え直しである。
「……今からでも、黒鬼を襲撃したらどうだろ?」
「!」
 フレアが軽い調子で言った。へらっと笑っている。
 感覚で話している癖に、ふと切れ味が鋭いことを言う。剣士らしいというか。
「いや、止めた方が良いですね」
「そうかな?」
 ジークがすぐに答えた。
 椅子に浅く腰掛けて、フレアを横目で見る。
「相手の陣地に攻め込むには情報が足りない。
 入った後、相手に扉を押さえられたら、僕たちは他の出口すら知らない」
「うん、私もそう思う」
「うーん、ジークに賛成かな」
「……む」
 ジークの言葉にアリスと加奈が応じた。
 フレアは納得したらしく、引き下がっていった。
 フレアが感覚派だとしたら、ジーク達は理論派かな。
「そうですよっ!
 せっかく教えてくれたのに酷いじゃないですかっ」
 ティアナが元気に言った。これは何派だろう?
 とりあえず理論派ではなさそうだ。論点がずれてる。
「まあ、本来の目的とは違うからな。
 ひとまずは放っておいて良いかな、ナタリー?」
 俺はそう言って、ナタリーを振り返る。
 すぐに息を呑んだ。
「青鬼は王都を二回襲撃した。
 七年ほどの間隔が空いていた。
 その間、青鬼の目撃情報は全くなかった。
 二度目の襲撃でお兄ちゃんを殺して自分も死んだ」
 ナタリーは目を閉じて、ぶつぶつと呟いていた。
「それから分かることは?
 七年間、青鬼は存在を消していたのかもしれない。
 一度目は赤鬼を『行かせた』後、青鬼自身は存在を消したことになる」
 俺はその言葉に耳を傾けていた。
「なぜ?
 存在を消している間は『魂』を使わずに済むのかもしれない。
 あるいは他にも何か……?」
 少しの間、考えてからナタリーは首を横に振る。
 判断材料がないという結論だろう。
「他は?
 死ぬことで存在座標のずれはリセットされるかもしれない。
 そっか……存在座標とは『魂』の座標なんだ。
 だとすれば 次の『魂』に移ればリセットされるのは当然か」
 ナタリーはこちらの視線は気にもせず、うんうんと何度か頷いた。
「他は?
 直接触れていなければ、他人を『帰す』ことはできないはずだ。
 それができるなら、二度目も青鬼と一緒に赤鬼は王都に現れたはず。
 三匹いるなら、正面から戦えた。やらない理由はない」
 そこまで思考を進めると、ナタリーは目を開けた。
「青鬼が捨て身でお兄ちゃんを殺しに来たのは、残り寿命が少なかったからか。
 きっと……七年間、存在を消して潜伏した後、残り少ない命を使い切ったんだ」
 そう結論付けた後、ナタリーは不意に首を傾げた。
「? じゃあ、ソフィアちゃんの時は?
 あの時、青鬼は自殺した。まだ寿命はあったはずなのに」
「――!」
 俺は知っている。この目で見たんだ。
 あの真赤の魂は見間違いじゃあなかった。
 あの黒い短刀……きっと魔道具だ。
 ああ、くそ。『黒鬼印』ということか。
 あの短刀を使って、ソフィアの――兄さんの魂を取り込んだ。
 空いていた命数を埋めたんだ。
「……森の中の扉?」
 呆然とした声を聞いた気がした。
 誰が言ったのか分からなかった。
 ……きっと気のせいだろう。