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第四部 37話 『エルフの大森林』と『ドワーフの大空洞』

ー/ー



「……俺をここに呼んだのはあんたか?」
 グレイは慎重に口を開く。

「ああ、そうだ。もっとも扉の前までじゃが。
 あの扉は誰でも開けるものじゃない」

 そう言って黒鬼はカーン、とまた鉄を打った。

「? だから俺だけだったのか……?
 いや、待て。どうして俺なら扉が開くんだ?」

 グレイは首を傾げる。
 崖上で風が逆巻いた時、その場にいた他のメンバーとグレイの間に差が見つからない。

「扉が開くのはドワーフの王族だけじゃ」
「……?」

 確かにあの場にハーフドワーフはグレイだけだった。

 ――さらに王族だから呼ばれたのか? 
 ――つーか、俺は本当に王族だったのか?

 新国の使者が実家に来た時のことをグレイは思い出す。
 確かにグレイが王族だと言っていた。すなわちドワーフの直系だと。

「ここは『ドワーフの大空洞』じゃ。
 広大な『エルフの大森林』の地下に広がる空間」

 黒鬼はそう言って、ちらりとだけグレイを上目に見た。

「ドワーフの大空洞……」
「かつて、エルフとドワーフが人間に対抗するために築いた拠点じゃ」

 グレイの呟きに小さく応じる。
 ハーフではない。エルフとドワーフ。

 創世記についてはニナを通してグレイも聞いている。
 人間相手にエルフとドワーフが大きな戦いを仕掛けたことも。

「……あんたは?」
 グレイは反射的に訊いていた。

「儂か? ははは! 儂はただの『黒鬼』じゃが……。
 それでも、強いて言えば『ドワーフ』の生まれ変わりじゃよ」

「……は?」
「……ぴ?」

 グレイが口を大きく開けたまま、呆然と声を出す。
 肩の上ではピノがそっくりの顔をしていた。

 ドワーフの大空洞にいるのだ。
 ドワーフの関係者だとはグレイも考えていた。

 だが、本人だとは考えていなかった。
 そもそもグレイは生まれ変わりの概念自体も良く分かっていない。
 あくまでもこの世界の一般的な話しか聞いていない。

「元が不老だからかのぅ。
 儂らは記憶を引き継いで生まれ変わった」

 しかし気にした風もなく、黒鬼は勝手に続ける。

「しかし、何度転生しても儂らが表舞台に立つことはなかった。
 エルフとドワーフの時代は来ない。分岐点はもう過ぎたのじゃ」

 黒鬼は言葉の合間にカーンと相槌を入れる。
 戦斧を握って立ち尽くすグレイを忘れたように、さらに続けた。

「それでも記憶がある以上、あいつは簡単には諦めきれん。
 幸い、儂の魂と血でここ『ドワーフの大空洞』の扉は開く。
 今は鬼の拠点としているわけじゃ。さらに言えば……」

「待った!」
「?」

 グレイが叫ぶ。
 黒鬼が不思議そうに首を傾げた。

「すまん。本当に申し訳ない。
 これは全面的に俺が悪いんだが……」

 グレイの物言いに黒鬼は片眉を吊り上げた。
 一方のグレイは余裕もなく続ける。

「……さっぱりわからん」

 何やら重要なことを言われているのは分かる。それは分かる。
 逆に言えば、分かるのはそれだけである。

「はっはっは!」
「?」

 黒鬼が楽しそうに笑う。グレイは首を傾げるだけだ。
 最後に黒鬼は「血筋じゃな」と笑い終える。

「何、儂が伝えたいのは二つ。
 一つ目は儂がお前の先祖だ、ということ。
 二つ目はお前の質問に一つだけ答えよう、ということ」

 黒鬼がにっと笑った。

「え、ご先祖様なのか?」
「ぴっ」

 グレイが惚けたような声を出す。
 堪えきれずにピノがグレイの頭を蹴り付けた。



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「……俺をここに呼んだのはあんたか?」
 グレイは慎重に口を開く。
「ああ、そうだ。もっとも扉の前までじゃが。
 あの扉は誰でも開けるものじゃない」
 そう言って黒鬼はカーン、とまた鉄を打った。
「? だから俺だけだったのか……?
 いや、待て。どうして俺なら扉が開くんだ?」
 グレイは首を傾げる。
 崖上で風が逆巻いた時、その場にいた他のメンバーとグレイの間に差が見つからない。
「扉が開くのはドワーフの王族だけじゃ」
「……?」
 確かにあの場にハーフドワーフはグレイだけだった。
 ――さらに王族だから呼ばれたのか? 
 ――つーか、俺は本当に王族だったのか?
 新国の使者が実家に来た時のことをグレイは思い出す。
 確かにグレイが王族だと言っていた。すなわちドワーフの直系だと。
「ここは『ドワーフの大空洞』じゃ。
 広大な『エルフの大森林』の地下に広がる空間」
 黒鬼はそう言って、ちらりとだけグレイを上目に見た。
「ドワーフの大空洞……」
「かつて、エルフとドワーフが人間に対抗するために築いた拠点じゃ」
 グレイの呟きに小さく応じる。
 ハーフではない。エルフとドワーフ。
 創世記についてはニナを通してグレイも聞いている。
 人間相手にエルフとドワーフが大きな戦いを仕掛けたことも。
「……あんたは?」
 グレイは反射的に訊いていた。
「儂か? ははは! 儂はただの『黒鬼』じゃが……。
 それでも、強いて言えば『ドワーフ』の生まれ変わりじゃよ」
「……は?」
「……ぴ?」
 グレイが口を大きく開けたまま、呆然と声を出す。
 肩の上ではピノがそっくりの顔をしていた。
 ドワーフの大空洞にいるのだ。
 ドワーフの関係者だとはグレイも考えていた。
 だが、本人だとは考えていなかった。
 そもそもグレイは生まれ変わりの概念自体も良く分かっていない。
 あくまでもこの世界の一般的な話しか聞いていない。
「元が不老だからかのぅ。
 儂らは記憶を引き継いで生まれ変わった」
 しかし気にした風もなく、黒鬼は勝手に続ける。
「しかし、何度転生しても儂らが表舞台に立つことはなかった。
 エルフとドワーフの時代は来ない。分岐点はもう過ぎたのじゃ」
 黒鬼は言葉の合間にカーンと相槌を入れる。
 戦斧を握って立ち尽くすグレイを忘れたように、さらに続けた。
「それでも記憶がある以上、あいつは簡単には諦めきれん。
 幸い、儂の魂と血でここ『ドワーフの大空洞』の扉は開く。
 今は鬼の拠点としているわけじゃ。さらに言えば……」
「待った!」
「?」
 グレイが叫ぶ。
 黒鬼が不思議そうに首を傾げた。
「すまん。本当に申し訳ない。
 これは全面的に俺が悪いんだが……」
 グレイの物言いに黒鬼は片眉を吊り上げた。
 一方のグレイは余裕もなく続ける。
「……さっぱりわからん」
 何やら重要なことを言われているのは分かる。それは分かる。
 逆に言えば、分かるのはそれだけである。
「はっはっは!」
「?」
 黒鬼が楽しそうに笑う。グレイは首を傾げるだけだ。
 最後に黒鬼は「血筋じゃな」と笑い終える。
「何、儂が伝えたいのは二つ。
 一つ目は儂がお前の先祖だ、ということ。
 二つ目はお前の質問に一つだけ答えよう、ということ」
 黒鬼がにっと笑った。
「え、ご先祖様なのか?」
「ぴっ」
 グレイが惚けたような声を出す。
 堪えきれずにピノがグレイの頭を蹴り付けた。