第四部 33話 伝言の意味
ー/ー 馬車を降りると、すぐ目の前には深い森が広がっていた。
ここから先はエルフ以外には正確な地形も把握できていない。
言い換えれば、新国の領土ということになる。
新国とは戦争中ではないが、帝国との一件で王国からの心証は良くない。
「! あなたは……」
森の中から姿を現した人物に俺は目を見開いた。
数人のハーフエルフだった。
「お久しぶりです」
それはエリーナ・コルトとの戦いに割って入った男だった。
鎧に身を包んで一礼する。イリオス新王国騎士団だったか。
「私たちが大峡谷までご案内します。
騎士団長のフィンと申します」
なるほど。このご時世だ。
王国から来た俺たちを監視する必要はあるだろう。
俺はこっそりと森の一部へと意識を向ける。
ナタリーの采配でピノが一緒に来ているはずだ。
「まさか学院から来ているメンバーの一人があなただとは……」
「はは……俺もまた会うとは思っていませんでしたよ」
フィンの言葉に俺は頷く。
少なくとも、このような形で再会するとは考えていなかった。
「……この辺りは騎士団の管轄なのですか?」
「そうですね。ただ、滅多に人は来ませんよ」
そりゃそうだ。この先は大峡谷があるだけだろう。
このフィンという人も地位は高そうだ。交流会のために来たということか。
「そもそも、この辺りは一般の立ち入りを禁止していますので……。
ただ、そのことを知らずにここまで来る人はいます」
「ああ、新国ではハーフエルフを広く受け入れていましたね。
そうか。ここはエイク市に近いから……」
新国を目指してやって来たハーフエルフが立ち入り禁止だと知らずに立ち寄るということか。で、そういう人のために人員を割いていると。
「兄さん兄さんっ」
「……どうした?」
ティアナの少し焦ったような声に小声で返す。
俺たちは森の中を歩いている。すでに視界も悪くなってきた。
「私、方向音痴なんですよ……」
「はぐれなければ大丈夫だよ! つーか、この森で方向が分かるか」
「あはは……実は私も」
隣を歩くフレアが急に手を上げた。
「いや、だから……」
「俺もだぞ?」
当たり前のように後ろでグレイが言った。
他に生徒がいないから油断してやがる。
「おい、どうして遠出したメンバーに方向音痴しかいないんだ!?」
「あ、キースも方向音痴なんだね」
俺が声を荒げると、フレアが割り込んだ。
す、と目を逸らす。
「……まあ、人より遠回りを選ぶことは多いかも知れない」
「詩的な言い訳ね。まずは地図を読めるようになりなさい」
頭上でエルが言った。
流石に読めるわ!
ティアナが気にしているのは、はぐれた場合だろう。
まあ、いざとなればピノがいる。最悪、全員を回収してくれるはずだ。
その時、小さな声が聞こえた。
直後、肩に重さを感じる。
「……!」
「ぴ」
ピノだ。おかしい。
直接、接触はしない予定だ。
「?」
フィンが一度だけこちらを見た。
しかし、大きな違和感はなかったのだろう。すぐに前を向き直す。
その時、ピノは隠すように小さな両足で掴んでいたものを俺の背に触れさせた。手を伸ばして掴む。
それを確認すると、ピノは俺の肩から飛んで行った。
「…………」
自分の手の中をちらっと確認する。
「嘘だろ」
口の中だけで呟いた。
俺の手には小さなブローチが握られていた。
豪華な装飾が施された、白と蒼を基調とする品の良いブローチだった。
先日の伝言を思い出す。
証拠はないが……間違いなく、あのブローチだろう。
老婆がブローチを探していたことはピノも知っている。
森の中を飛び回っている内に見つけたのか。
「兄さん? どうかしましたか?」
「……いや、大丈夫だ」
ティアナの心配そうな声に上の空で返事した。
どうする? 老婆に返しておくべきか?
……いや『確保しろ』ということは逆だ。
このブローチを手放すな、と言っているのだ。
ここから先はエルフ以外には正確な地形も把握できていない。
言い換えれば、新国の領土ということになる。
新国とは戦争中ではないが、帝国との一件で王国からの心証は良くない。
「! あなたは……」
森の中から姿を現した人物に俺は目を見開いた。
数人のハーフエルフだった。
「お久しぶりです」
それはエリーナ・コルトとの戦いに割って入った男だった。
鎧に身を包んで一礼する。イリオス新王国騎士団だったか。
「私たちが大峡谷までご案内します。
騎士団長のフィンと申します」
なるほど。このご時世だ。
王国から来た俺たちを監視する必要はあるだろう。
俺はこっそりと森の一部へと意識を向ける。
ナタリーの采配でピノが一緒に来ているはずだ。
「まさか学院から来ているメンバーの一人があなただとは……」
「はは……俺もまた会うとは思っていませんでしたよ」
フィンの言葉に俺は頷く。
少なくとも、このような形で再会するとは考えていなかった。
「……この辺りは騎士団の管轄なのですか?」
「そうですね。ただ、滅多に人は来ませんよ」
そりゃそうだ。この先は大峡谷があるだけだろう。
このフィンという人も地位は高そうだ。交流会のために来たということか。
「そもそも、この辺りは一般の立ち入りを禁止していますので……。
ただ、そのことを知らずにここまで来る人はいます」
「ああ、新国ではハーフエルフを広く受け入れていましたね。
そうか。ここはエイク市に近いから……」
新国を目指してやって来たハーフエルフが立ち入り禁止だと知らずに立ち寄るということか。で、そういう人のために人員を割いていると。
「兄さん兄さんっ」
「……どうした?」
ティアナの少し焦ったような声に小声で返す。
俺たちは森の中を歩いている。すでに視界も悪くなってきた。
「私、方向音痴なんですよ……」
「はぐれなければ大丈夫だよ! つーか、この森で方向が分かるか」
「あはは……実は私も」
隣を歩くフレアが急に手を上げた。
「いや、だから……」
「俺もだぞ?」
当たり前のように後ろでグレイが言った。
他に生徒がいないから油断してやがる。
「おい、どうして遠出したメンバーに方向音痴しかいないんだ!?」
「あ、キースも方向音痴なんだね」
俺が声を荒げると、フレアが割り込んだ。
す、と目を逸らす。
「……まあ、人より遠回りを選ぶことは多いかも知れない」
「詩的な言い訳ね。まずは地図を読めるようになりなさい」
頭上でエルが言った。
流石に読めるわ!
ティアナが気にしているのは、はぐれた場合だろう。
まあ、いざとなればピノがいる。最悪、全員を回収してくれるはずだ。
その時、小さな声が聞こえた。
直後、肩に重さを感じる。
「……!」
「ぴ」
ピノだ。おかしい。
直接、接触はしない予定だ。
「?」
フィンが一度だけこちらを見た。
しかし、大きな違和感はなかったのだろう。すぐに前を向き直す。
その時、ピノは隠すように小さな両足で掴んでいたものを俺の背に触れさせた。手を伸ばして掴む。
それを確認すると、ピノは俺の肩から飛んで行った。
「…………」
自分の手の中をちらっと確認する。
「嘘だろ」
口の中だけで呟いた。
俺の手には小さなブローチが握られていた。
豪華な装飾が施された、白と蒼を基調とする品の良いブローチだった。
先日の伝言を思い出す。
証拠はないが……間違いなく、あのブローチだろう。
老婆がブローチを探していたことはピノも知っている。
森の中を飛び回っている内に見つけたのか。
「兄さん? どうかしましたか?」
「……いや、大丈夫だ」
ティアナの心配そうな声に上の空で返事した。
どうする? 老婆に返しておくべきか?
……いや『確保しろ』ということは逆だ。
このブローチを手放すな、と言っているのだ。
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