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【3】

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「よっし、保存。で、……公開、っと」 
 新規登録したサイト。
 利用法は佳織に訊いたり、自分でもガイドラインを見たりした。覚悟していたほど難しくないのもある。
 もうあとは使いながら手探りで行くつもりだ。。
 ──あたしの小説を、これで初めて「人に見せる」ことになるんだ。
 自分の作品を投稿して、他の作家の作品も少しずつ読んで行った。
 まずはランキング上位から手を付けたこともあり、やはりどれも上手い。これでプロじゃないんだ!? と、ただでさえなけなしの自信がさらに揺らいだ。
 穂香の作品など、小説になっているのかも怪しい気がしてしまう。
 それでも、コミュニティに参加して「読んでください!」と勇気を出した効果もあってか、ほんの僅かずつでもPV(ページビュー)が増えて行く。
 ぽつぽつと、応援やブックマークもしてもらえるようになって来た。
 読んでもらっている! というのをモチベーションに次の作品も書き始めた。まだまだ書いては消しての繰り返しで、本当に完成するのか自分でもわからないくらいの状態ではあっても。
 もう少し書き慣れたら、他の作家のように連載もしてみたい。……穂香にとっては壮大過ぎる目標だとわかってはいた。
 しかしのろのろと亀の歩み同然でも、何事も一歩踏み出すところから始まるのだから。

「わ! コメントだ!」
 学校からの帰り道、理央と早織とも別れたあとでスマートフォンで覗いたサイトのマイページ。
 メッセージ着信を知らせる赤いマークが点灯していた。タップして見た「○○さんからコメントが来ています」の文字に、穂香は胸の高鳴りが抑えられない。
 作品への反応そのものは、もうそこまで珍しくなくなっていた。しかしコメントもらうのは実は初めてなのだ。ドキドキしながら開いたコメント欄には──。
『なんか程度低いね。女子高生のお遊びならこんなもの?』
「……」
 スマートフォンを持つ手が小刻みに震え出す。
 佳織が忠告してくれたのは、こういうことなのか……?
 穂香も自分の『小説』が、他の人たちに比べて大したものではないくらい認識している。きちんと整った小説を読み慣れている人にとっては、それこそ「女子高生のお遊び」と受け取られても仕方ないのかもしれない。
 ──だったらこのコメントは、中傷なんかじゃなくて真実を伝えてくれてるんじゃない……?
 これで「小説家になりたい」とほざくこと自体、無謀だとしか思えなくなって来た。穂香の小説なんて程度の低い、読むに耐えないどうしようもないものなのだろうか。
 それ以上何も考えられずに、穂香はサイトを閉じてスマートフォンを鞄に仕舞った。

「穂香!? どした、その顔!」
 次の日、重い気分のまま学校に行った穂香に理央がいきなり驚いた声を上げる。
「……あー、昨夜あんまり寝らんなくって」
 確かに、家で鏡を見た際にも「ヒドイ顔だな~」と感じてはいた。
「寝るの大好きな穂香が珍しいね。……なんかあった?」
 探るような早織の声に、思わず瞳が潤みそうになる。どうやら自分で思う以上に弱っているようだ。
「うん、まあ。……小説に、ちょっとキッツーいコメントもらっちゃってね」
 二人とも口先だけの「何もない」で通じる相手ではないため、それだけを正直に告げた。
「どういう──」
 心配そうな理央の言葉を遮るように、始業のチャイムが鳴る。穂香がぎりぎりに登校したからだ。
「穂香、あとで! 休み時間じゃ慌しいから、お昼にゆっくり聞かせて!」
 自分の席に向かいながら、早織が心配そうに告げてくれた。
「なんだそれ、バカにしてんじゃん! そんなのマジに取って悩む必要ないって!」
 昼休みの食堂。
 穂香の大まかな説明を聞いた理央が、我が事のように険しい表情で口にする。食事してる場合じゃないといった勢いで。
 友人が穂香のために怒ってくれている、それだけでも嬉しかった。
「穂香、それお姉ちゃんに相談してみたら? ……まだ言ってないんだよね?」
 そこへ早織が横か言い添えて来る。
「うん。なんか昨日は、もうそのコメントで頭いっぱいになっちゃって」
 あのコメントがまた頭を過って、穂香はぐっと歯を食いしばった。ここで泣きたくない。友人に弱味を見せたくないとかそうではなく。
 ──今泣いたら、あたしはに負ける気がする。
「じゃあ打ち明けた方がいいよ。お姉ちゃん私たちよりは大人だし、そういうサイトのこともきっと詳しいからさ」
「そうする。帰ったら連絡するよ。ホント、佳織さん紹介してもらってよかった」
 なんとか笑顔を作った穂香に、早織も理央も黙って頷いてくれた。



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 もうあとは使いながら手探りで行くつもりだ。。
 ──あたしの小説を、これで初めて「人に見せる」ことになるんだ。
 自分の作品を投稿して、他の作家の作品も少しずつ読んで行った。
 まずはランキング上位から手を付けたこともあり、やはりどれも上手い。これでプロじゃないんだ!? と、ただでさえなけなしの自信がさらに揺らいだ。
 穂香の作品など、小説になっているのかも怪しい気がしてしまう。
 それでも、コミュニティに参加して「読んでください!」と勇気を出した効果もあってか、ほんの僅かずつでも|PV《ページビュー》が増えて行く。
 ぽつぽつと、応援やブックマークもしてもらえるようになって来た。
 読んでもらっている! というのをモチベーションに次の作品も書き始めた。まだまだ書いては消しての繰り返しで、本当に完成するのか自分でもわからないくらいの状態ではあっても。
 もう少し書き慣れたら、他の作家のように連載もしてみたい。……穂香にとっては壮大過ぎる目標だとわかってはいた。
 しかしのろのろと亀の歩み同然でも、何事も一歩踏み出すところから始まるのだから。
「わ! コメントだ!」
 学校からの帰り道、理央と早織とも別れたあとでスマートフォンで覗いたサイトのマイページ。
 メッセージ着信を知らせる赤いマークが点灯していた。タップして見た「○○さんからコメントが来ています」の文字に、穂香は胸の高鳴りが抑えられない。
 作品への反応そのものは、もうそこまで珍しくなくなっていた。しかしコメントもらうのは実は初めてなのだ。ドキドキしながら開いたコメント欄には──。
『なんか程度低いね。女子高生のお遊びならこんなもの?』
「……」
 スマートフォンを持つ手が小刻みに震え出す。
 佳織が忠告してくれたのは、こういうことなのか……?
 穂香も自分の『小説』が、他の人たちに比べて大したものではないくらい認識している。きちんと整った小説を読み慣れている人にとっては、それこそ「女子高生のお遊び」と受け取られても仕方ないのかもしれない。
 ──だったらこのコメントは、中傷なんかじゃなくて真実を伝えてくれてるんじゃない……?
 これで「小説家になりたい」とほざくこと自体、無謀だとしか思えなくなって来た。穂香の小説なんて程度の低い、読むに耐えないどうしようもないものなのだろうか。
 それ以上何も考えられずに、穂香はサイトを閉じてスマートフォンを鞄に仕舞った。
「穂香!? どした、その顔!」
 次の日、重い気分のまま学校に行った穂香に理央がいきなり驚いた声を上げる。
「……あー、昨夜あんまり寝らんなくって」
 確かに、家で鏡を見た際にも「ヒドイ顔だな~」と感じてはいた。
「寝るの大好きな穂香が珍しいね。……なんかあった?」
 探るような早織の声に、思わず瞳が潤みそうになる。どうやら自分で思う以上に弱っているようだ。
「うん、まあ。……小説に、ちょっとキッツーいコメントもらっちゃってね」
 二人とも口先だけの「何もない」で通じる相手ではないため、それだけを正直に告げた。
「どういう──」
 心配そうな理央の言葉を遮るように、始業のチャイムが鳴る。穂香がぎりぎりに登校したからだ。
「穂香、あとで! 休み時間じゃ慌しいから、お昼にゆっくり聞かせて!」
 自分の席に向かいながら、早織が心配そうに告げてくれた。
「なんだそれ、バカにしてんじゃん! そんなのマジに取って悩む必要ないって!」
 昼休みの食堂。
 穂香の大まかな説明を聞いた理央が、我が事のように険しい表情で口にする。食事してる場合じゃないといった勢いで。
 友人が穂香のために怒ってくれている、それだけでも嬉しかった。
「穂香、それお姉ちゃんに相談してみたら? ……まだ言ってないんだよね?」
 そこへ早織が横か言い添えて来る。
「うん。なんか昨日は、もうそのコメントで頭いっぱいになっちゃって」
 あのコメントがまた頭を過って、穂香はぐっと歯を食いしばった。ここで泣きたくない。友人に弱味を見せたくないとかそうではなく。
 ──今泣いたら、あたしは《《自分》》に負ける気がする。
「じゃあ打ち明けた方がいいよ。お姉ちゃん私たちよりは大人だし、そういうサイトのこともきっと詳しいからさ」
「そうする。帰ったら連絡するよ。ホント、佳織さん紹介してもらってよかった」
 なんとか笑顔を作った穂香に、早織も理央も黙って頷いてくれた。