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【2】

ー/ー



「穂香! いいこと聞いて来たよ~」
 翌日、教室で顔合わせた途端に早織が穂香の腕を掴むようにして話し出した。
「あのね、なんか『投稿サイト』ってのがあるんだって! お姉ちゃんもそこで他の人が書いたもの読んでるんだってさ」
「『投稿サイト』? って小説の?」
「そうそう」
 携帯小説等、素人が書いて掲載できるサイトがあるらしいのはもちろん穂香も知っているが、ハードルが高そうで想定外だった。
 第一、作品を完成させたのも今回が初めてなのだから、不特定多数に読んでもらう、発表する、ということを考えていなかったのだ。
 しかし仮にも作家として『仕事』にすることを目標にするのなら、まずは読んでもらうことから始めるのが道理だろう。
「あたしもそんな詳しくないけど、ラノベとかで○○サイト発! ってよくあるよ。そっからアニメ化したりもするから。前クール観てた深夜アニメ、元は投稿作だったって聞いた」
 いつの間にかすぐ横まで来ていた理央の言葉に、穂香は思わず唸らされた。さすがはアニメ好きというだけはある。
「理央が言ったみたいな大きい有名サイトもあるけど、お姉ちゃんが利用してるのはもっと地味目なとこなんだって」
「そんないろいろあるんだね」
 派手も地味も穂香は何もわからないため、些細な情報でも助かる。
「サイトによってジャンルとか特徴あるから、穂香の書いてる小説のタイプで選べばいいよって。わかんなかったらどこがおススメかアドバイスしてくれるってさ」
 早織の、というか彼女の姉の話さえ、半分も理解できているか怪しいほどだ。
 とりあえず自分に合うサイトを見極めるのが大切、ということでいいのだろうか?
「ありがとう! お姉さんにもお礼言っといてよ。で、ついでに甘えてもいいかなぁ? あたしが書いてるのはわりと普通の話なんだけど。等身大の女の子の恋と友情と~みたいな?」
 さすがに厚かましいか? と声がだんだん小さくはなったけれど、穂香は早織に持ち掛けてみる。
「OK! 帰ったら訊いとく」
「頼むね~」
 快諾してくれた友人に感謝しつつ笑顔を向けた。

「あのね、こことかここがいいんじゃないかって。読んでないからはっきりは言えないけど、たぶん穂香のはこのサイトが合うと思うってお姉ちゃんが」
 翌日の放課後。
 スマートフォンを取り出した穂香に早織が教えてくれる。
「うわ、ありがと早織! えー、みんなキレイな表紙ついてる。すごい、こんなのできるんだ!」
 早織が姉から訊いて来てくれたサイトを開いてみて、穂香は思わず声を上げていた。
 ──小説書く人ってこんなたくさんいるんだなぁ。うわ、賑やかで楽しそう!
「それでお姉ちゃんがね、もしよかったらSNSで繋がらない? って。もちろん穂香が嫌じゃなかったら、だけど」
「えー! イヤな筈ないじゃん! メッチャ嬉しい! お姉さんのアカ教えて、フォローするから」
「私のフォロワーの『まりりん』ってのがそう。……えっと、あ、コレ!」
 穂香のスマートフォンを間に、早織に聞いた彼女の姉のアカウントをフォローする。
 突然に、いろいろなものが動き出した感じがした。

『はじめまして、早織ちゃんの友達の須藤(すとう) 穂香です。サイトの事とか教えてくださってありがとうございました。いろいろ訊きたいこともあるのでよろしくお願いします。』
 早織の姉にDM(ダイレクトメッセージ)を書いて送信する。
 失礼な文面ではないだろうか。年上の人にメッセージを送ることなどないので心配だ。
『こんにちは~。早織の姉の真野(まの) 佳織(かおり)です。小説は書けないけど、それ以外わかる範囲なら何でも答えるから気軽に訊いてね! よかったらメッセージアプリでやり取りしない?』
 しばらくして穂香のスマートフォンにDMのプッシュ通知が来た。
 佳織は穂香たちより六歳上で、今大学四年生だという。もう就職の内定も出ていて、残り少ない学生生活を趣味全開で楽しんでいるそうだ。
《ありがとうございます! あの、教えてもらったサイトのうち、どっちがあたしに合ってるでしょうか。》
 早速教わったアプリの方にメッセージを送る。
《普通の日常の恋愛とかなんだよね? で、短編?》
《はい、短編です。長いのはまだまだ無理で。》
《じゃあやっぱりこっちのサイトがいいと思う。》
 佳織が、サイトのアドレス付きで返して来てくれる。迷わずそこにすることに決定した。
《ずっと書きたいとは思ってたんですけど、なかなかまとまらなくて。初めて一つ書けたんです。他の人に読んでもらえるような立派なのじゃないんですけど。》
《読み専の私からしたら、小説書けるってだけで凄いから! しかもまだ高校生なのに。才能ある人ってホント羨ましい~。》
《全然そんなんじゃないです。でも、ありがとうございます。》
 単なるお世辞だとしても、佳織の言葉は穂香にとって力になる。初めての、趣味を同じくする他者からの前向きな応援。
《あ、あと、最初から脅かしてごめんね。ネットって顔見えないし、本当にいろんな人いるのよ。穂香ちゃんに薦めたサイトは平和な方だとは思うんだけど、それでも中には絡んでくる人もいるらしいわ。私は読み専だから経験ないけど、書き手さんとお付き合いさせてもらってるからあれこれ聞いてるんだ。》
 ネットは怖いとよく聞きはするが、穂香は実際に体験したことはなかった。あまりSNSに熱心な方ではないからかもしれない。
《そうなんですね。ちょっと不安です。》
《もしそういう人に当たっても気にし過ぎる必要ないよ。さっさとブロックして忘れるのが一番、って私の知ってる書き手さんは言ってたわ》
 楽しいことばかりではないのだ、と少し沈み掛けて、それでも穂香は前もって教えてもらえてよかったと考えることにした。


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「穂香! いいこと聞いて来たよ~」
 翌日、教室で顔合わせた途端に早織が穂香の腕を掴むようにして話し出した。
「あのね、なんか『投稿サイト』ってのがあるんだって! お姉ちゃんもそこで他の人が書いたもの読んでるんだってさ」
「『投稿サイト』? って小説の?」
「そうそう」
 携帯小説等、素人が書いて掲載できるサイトがあるらしいのはもちろん穂香も知っているが、ハードルが高そうで想定外だった。
 第一、作品を完成させたのも今回が初めてなのだから、不特定多数に読んでもらう、発表する、ということを考えていなかったのだ。
 しかし仮にも作家として『仕事』にすることを目標にするのなら、まずは読んでもらうことから始めるのが道理だろう。
「あたしもそんな詳しくないけど、ラノベとかで○○サイト発! ってよくあるよ。そっからアニメ化したりもするから。前クール観てた深夜アニメ、元は投稿作だったって聞いた」
 いつの間にかすぐ横まで来ていた理央の言葉に、穂香は思わず唸らされた。さすがはアニメ好きというだけはある。
「理央が言ったみたいな大きい有名サイトもあるけど、お姉ちゃんが利用してるのはもっと地味目なとこなんだって」
「そんないろいろあるんだね」
 派手も地味も穂香は何もわからないため、些細な情報でも助かる。
「サイトによってジャンルとか特徴あるから、穂香の書いてる小説のタイプで選べばいいよって。わかんなかったらどこがおススメかアドバイスしてくれるってさ」
 早織の、というか彼女の姉の話さえ、半分も理解できているか怪しいほどだ。
 とりあえず自分に合うサイトを見極めるのが大切、ということでいいのだろうか?
「ありがとう! お姉さんにもお礼言っといてよ。で、ついでに甘えてもいいかなぁ? あたしが書いてるのはわりと普通の話なんだけど。等身大の女の子の恋と友情と~みたいな?」
 さすがに厚かましいか? と声がだんだん小さくはなったけれど、穂香は早織に持ち掛けてみる。
「OK! 帰ったら訊いとく」
「頼むね~」
 快諾してくれた友人に感謝しつつ笑顔を向けた。
「あのね、こことかここがいいんじゃないかって。読んでないからはっきりは言えないけど、たぶん穂香のはこのサイトが合うと思うってお姉ちゃんが」
 翌日の放課後。
 スマートフォンを取り出した穂香に早織が教えてくれる。
「うわ、ありがと早織! えー、みんなキレイな表紙ついてる。すごい、こんなのできるんだ!」
 早織が姉から訊いて来てくれたサイトを開いてみて、穂香は思わず声を上げていた。
 ──小説書く人ってこんなたくさんいるんだなぁ。うわ、賑やかで楽しそう!
「それでお姉ちゃんがね、もしよかったらSNSで繋がらない? って。もちろん穂香が嫌じゃなかったら、だけど」
「えー! イヤな筈ないじゃん! メッチャ嬉しい! お姉さんのアカ教えて、フォローするから」
「私のフォロワーの『まりりん』ってのがそう。……えっと、あ、コレ!」
 穂香のスマートフォンを間に、早織に聞いた彼女の姉のアカウントをフォローする。
 突然に、いろいろなものが動き出した感じがした。
『はじめまして、早織ちゃんの友達の|須藤《すとう》 穂香です。サイトの事とか教えてくださってありがとうございました。いろいろ訊きたいこともあるのでよろしくお願いします。』
 早織の姉に|DM《ダイレクトメッセージ》を書いて送信する。
 失礼な文面ではないだろうか。年上の人にメッセージを送ることなどないので心配だ。
『こんにちは~。早織の姉の|真野《まの》 |佳織《かおり》です。小説は書けないけど、それ以外わかる範囲なら何でも答えるから気軽に訊いてね! よかったらメッセージアプリでやり取りしない?』
 しばらくして穂香のスマートフォンにDMのプッシュ通知が来た。
 佳織は穂香たちより六歳上で、今大学四年生だという。もう就職の内定も出ていて、残り少ない学生生活を趣味全開で楽しんでいるそうだ。
《ありがとうございます! あの、教えてもらったサイトのうち、どっちがあたしに合ってるでしょうか。》
 早速教わったアプリの方にメッセージを送る。
《普通の日常の恋愛とかなんだよね? で、短編?》
《はい、短編です。長いのはまだまだ無理で。》
《じゃあやっぱりこっちのサイトがいいと思う。》
 佳織が、サイトのアドレス付きで返して来てくれる。迷わずそこにすることに決定した。
《ずっと書きたいとは思ってたんですけど、なかなかまとまらなくて。初めて一つ書けたんです。他の人に読んでもらえるような立派なのじゃないんですけど。》
《読み専の私からしたら、小説書けるってだけで凄いから! しかもまだ高校生なのに。才能ある人ってホント羨ましい~。》
《全然そんなんじゃないです。でも、ありがとうございます。》
 単なるお世辞だとしても、佳織の言葉は穂香にとって力になる。初めての、趣味を同じくする他者からの前向きな応援。
《あ、あと、最初から脅かしてごめんね。ネットって顔見えないし、本当にいろんな人いるのよ。穂香ちゃんに薦めたサイトは平和な方だとは思うんだけど、それでも中には絡んでくる人もいるらしいわ。私は読み専だから経験ないけど、書き手さんとお付き合いさせてもらってるからあれこれ聞いてるんだ。》
 ネットは怖いとよく聞きはするが、穂香は実際に体験したことはなかった。あまりSNSに熱心な方ではないからかもしれない。
《そうなんですね。ちょっと不安です。》
《もしそういう人に当たっても気にし過ぎる必要ないよ。さっさとブロックして忘れるのが一番、って私の知ってる書き手さんは言ってたわ》
 楽しいことばかりではないのだ、と少し沈み掛けて、それでも穂香は前もって教えてもらえてよかったと考えることにした。