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【3】

ー/ー



「心葉さん?」
 いつも通りの大学からの帰り道。
 心葉の家の最寄駅で別れを告げようとしたとき、男が突然話し掛けて来た。待ち伏せしてたのか?
「あ、……三沢(みさわ)さん」
 写真は見せてもらってたし名前も聞いてた。三沢淳一(じゅんいち)。心葉の見合い相手だ。
「そちらの方は?」
 俺を目線で指しながら、彼が心葉に訊いた。
「わ、私がお付き合いしてる方、です」
 嚙みながらも答えた心葉に相手の男は片眉を上げた。
 なんかいちいちカッコつけだな。
 顔はちょっと、……かなりイケてるけど。

「あなたは僕と結婚するんですよ? 一体どういうおつもりですか?」
「お見合い、はしますけど。結婚するなんて決まってません」
 訊かれて呟くように反論する彼女に、三沢って男が笑う。こういうの、冷笑っていうのか? 感じ悪いな。
「そんなこと言っていいんですか? ──まあ本当に交際相手がいるようなふしだらな人なら願い下げですけど。『本当なら』ね」
 思わせ振りな台詞。なんだ、コイツ。
「本当、です」
「ココ、心葉は俺と付き合ってます。恋人なんです!」
 心葉のか細い声に、俺は思わず二人の間に割って入った。
 やっちゃったかもしれない。もしかしたら、これで彼女の家に不利になったりする?
 いまさら内心焦る俺の腕を、心葉がぎゅっと掴んだ。
「ふぅん。まあ僕にとっても一生の問題ですから、もう少し確かめさせていただきますよ」
 意味深な笑みを浮かべて片手をひらひらさせながら去って行く男。

 あんな男と見合いして結婚なんてしちゃダメだ。
 ホンモノじゃないって、……「見合いを壊すため」の仮初めの関係とまで見抜いてるかは知らないけど、少なくとも三沢は俺たちのことを疑ってる。
「俊樹くん、ごめんね。いやな思いさせちゃって……」
「俺は平気だよ。ココ、結婚なんてやめろ。アイツとじゃ絶対幸せになれない!」
 もっと俺にできることないか? 彼が、自分の入る隙なんかないって納得して諦めるまで。
 いや、諦めるとかそういうんじゃないか。
 さっきも言ってたもんな。「本当に俺と付き合ってる」って信じさせたら、それだけで見合いは無くなるんだ。
 あっちの方から断ってくるから。
 一緒に帰るだけじゃなくて、もっと出掛けるの増やしたほうがいいよな。わかりやすいデートスポットとか? 友達で詳しい奴誰かいたっけ。
 心葉を安心させようと笑顔を向けながら、俺は必死でこれからすべきことを考えてた。




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「心葉さん?」
 いつも通りの大学からの帰り道。
 心葉の家の最寄駅で別れを告げようとしたとき、男が突然話し掛けて来た。待ち伏せしてたのか?
「あ、……|三沢《みさわ》さん」
 写真は見せてもらってたし名前も聞いてた。三沢|淳一《じゅんいち》。心葉の見合い相手だ。
「そちらの方は?」
 俺を目線で指しながら、彼が心葉に訊いた。
「わ、私がお付き合いしてる方、です」
 嚙みながらも答えた心葉に相手の男は片眉を上げた。
 なんかいちいちカッコつけだな。
 顔はちょっと、……かなりイケてるけど。
「あなたは僕と結婚するんですよ? 一体どういうおつもりですか?」
「お見合い、はしますけど。結婚するなんて決まってません」
 訊かれて呟くように反論する彼女に、三沢って男が笑う。こういうの、冷笑っていうのか? 感じ悪いな。
「そんなこと言っていいんですか? ──まあ本当に交際相手がいるようなふしだらな人なら願い下げですけど。『本当なら』ね」
 思わせ振りな台詞。なんだ、コイツ。
「本当、です」
「ココ、心葉は俺と付き合ってます。恋人なんです!」
 心葉のか細い声に、俺は思わず二人の間に割って入った。
 やっちゃったかもしれない。もしかしたら、これで彼女の家に不利になったりする?
 いまさら内心焦る俺の腕を、心葉がぎゅっと掴んだ。
「ふぅん。まあ僕にとっても一生の問題ですから、もう少し確かめさせていただきますよ」
 意味深な笑みを浮かべて片手をひらひらさせながら去って行く男。
 あんな男と見合いして結婚なんてしちゃダメだ。
 ホンモノじゃないって、……「見合いを壊すため」の仮初めの関係とまで見抜いてるかは知らないけど、少なくとも三沢は俺たちのことを疑ってる。
「俊樹くん、ごめんね。いやな思いさせちゃって……」
「俺は平気だよ。ココ、結婚なんてやめろ。アイツとじゃ絶対幸せになれない!」
 もっと俺にできることないか? 彼が、自分の入る隙なんかないって納得して諦めるまで。
 いや、諦めるとかそういうんじゃないか。
 さっきも言ってたもんな。「本当に俺と付き合ってる」って信じさせたら、それだけで見合いは無くなるんだ。
 あっちの方から断ってくるから。
 一緒に帰るだけじゃなくて、もっと出掛けるの増やしたほうがいいよな。わかりやすいデートスポットとか? 友達で詳しい奴誰かいたっけ。
 心葉を安心させようと笑顔を向けながら、俺は必死でこれからすべきことを考えてた。