「ねーねー、長谷部くん! ココと付き合ってんの?」
「いや。ただの友達だよ」
クラスメイトの
上野 夏海が揶揄うように訊いて来る。心葉がよく話してる「お友達」だ。
このバイトももう十日経った。
いつも一緒に帰るのはもちろん、学内でも話すことが多いからな。待ち合わせの関係とかで。他人から見たら誤解されてもしょーがないか。
でもこれはきっちり否定しとかないと。『バイト』が終わってから、心葉が誰かと本当に付き合うとき邪魔にならないように。
「なーんだ。ようやくココにも春が来たかと思ったのになぁ。でも違ったとしてもココが楽しそうだからいいや。……ありがとね」
「何が?」
彼女の礼の意味が理解できなくて尋ねた俺に、夏海が真顔になった。
「あの子ってさ、結構なお嬢様じゃん? あ、長谷部くん知ってた!?」
「……まあ、一応」
「よかったぁ! バラしちゃった? って焦ったよ」
夏海がわざとらしく胸を撫で下ろすしぐさを見せる。
「秘密なわけ?」
「『極秘』ってほどじゃないよ。見てたら育ちがいいのなんかすぐわかるでしょ?」
それは確かにその通りだ。
特別高いもの持ってるわけじゃなさそうだし、夏海の言葉からは心葉の家のことなんか知らない子も多いんだろう。
でも所作に自然と出るって感じでさ。立ち居振る舞いなんて大袈裟なもんじゃないけど、優雅なんだよな。
一緒に食事行っても食べ方が綺麗なんだ。そんな大した店行かないけど、それでもすぐ気づく。
「はっきり言っちゃうと『金目当て』の連中に纏わりつかれて苦労したみたいだから隠したいんじゃないかな。あたしは偶然知っちゃったから話してくれたんだけど」
「あー、そういうことか」
具体的にはともかく、想像くらいはつく。
そういう連中、俺の周りにはいないけど情けなくないのかね。
金ないことでは学内でも右に出るものは少ない俺でさえ、そんな惨めな真似しないぞ。
だけど、この夏海みたいに真の意味で心配して親身になってくれる友達もいるんだ。人間関係って大きな財産だと俺は思ってる。それこそ金では買えない、すごく大事なもの。
一緒にいたら実感するけど、心葉はホントにいい子なんだよ。顔が可愛いだけじゃなくて。
──だから、ちゃんとわかってくれてる友達もいてよかった。