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第四部 25話 五歩十歩

ー/ー



 翌日の朝。
 明日からは『王立学院』と『統一学舎』の交流会が始まる。

 今日一日は各自休むように言われていた。
 もちろん、単独行動だけは厳禁だ。

「……あのさ」
「?」

 朝食の後、グレイが神妙に口を開いた。
 その場の全員が首を傾げる。

「俺、話についていけるか?」
「……何だ。本気で気にしてたのか? 大丈夫だろ」
「そうよ。五日間だけ取り繕うくらいなら何とでもなるわ」

 どうやら交流会を上手くこなせるかどうかを気にしているようだ。
 グレイの言葉に俺が安心しろと笑いかけた。ナタリーも心配するなと続く。

「だけど……」
「そんなに心配なら小テストでもやる?」
「あ、それは良いかもね」

 食い下がろうとするグレイ。
 そこにアリスと加奈が提案した。

「あはは! それは良いねっ!
 全員でテストを受けようか! あたしが問題を作ってあげる」

 ナタリーが手を叩いて喜んでいた。
 え? 俺も受けるの?



「……嘘でしょ?」

 ナタリーが呆然と呟いた。
 ナタリーはテストの結果を何度も何度も確認している。

「ま、流石にね」

 まず、一位はアリス。
 流石は元学院主席だけはある。満点だった。

「学院代表ですからねっ」

 次はティアナ。
 三年生を差し置いて選ばれるくらいだ。順当だろう。

「まぁ、これくらいであれば」

 その次はジーク。
 連合の名家『サンデル家』の次期当主だ。教育は受けているということか。

「…………」
「…………」

 その次は俺とグレイ。
 完全に同点。ただしジークの遥か下である。

「? 良く分からなかったけど……」

 最後はフレア。
 こいつは剣だけ振って来たらしい。

「はっはっは! フレアが最下位か!」
「残念だったな! いやー、腐っても王立学院を卒業してるからな!」

 俺とグレイが調子に乗って叫ぶ。
 何しろ自分たちよりもテストの点が悪い人などいなかったのだ。

「? まあ、私は全然わからなかったけど……。
 というより、知らないことばかり聞かれた感じ」

 フレアが首を傾げる。
 あまり気にしていない風である。

「ばっかじゃないの!?」
 ナタリーが叫んだ。

「これじゃあ、交流会に参加なんて無理よ!」
「……あちゃあ、これはまずいね」
「あはは、こんな点数は初めて見た」

 ナタリーが愕然と続ける。
 さらにテスト結果をアリスと加奈が覗き込んで苦笑した。

「でも、難しかったし……」
「そうそう」

 グレイが口ごもる。
 俺が小さく援護した。

「そんなわけないでしょう!?
 自信を付けてあげようと思ってバカクソ簡単にしたわよ!?」

 ナタリーが頭を抱えた。
 アリスとティアナが小さく笑っていたのはそういうことだろう。

「……学院のレベルはこんなに低いのですか?」
 ジークがテスト結果を見て、心配そうな表情を浮かべる。

「そんなことない! こいつらが例外なだけよっ!」
 ナタリーが俺とグレイを指さした。

「いや、そんな……」
「黙れっ! どうしてフレアとそんなに変わらないのよ!?」

 俺たちが口を挟もうとした瞬間、ナタリーがさらに叫ぶ。
 こんなにも取り乱したナタリーも珍しい。

 ……よほど予想外だったのか。
 ……そんなに酷いかなぁ。

「ほら、キース。こんなところを間違えるから……」
「グレイこそ、何を言ってるんだよ? ここは簡単だろ?」

 グレイと俺が互いの間違いを指摘し始める。
 ……点数は全くの同点である。

「やかましい! どちらも同じレベルよ!
 よく学院を卒業……いや、そもそも入学できたわね!?」

「うーん、この学力だと、千回に一回の奇跡としか思えないかも。
 卒業は不正を疑うレベルだねぇ……」

 ナタリーがさらに声を荒げてアリスは首を傾げる。
 学院の卒業生だからと、最低限の学力はあると踏んでいたらしい。

「……昔から運は良くて」
「運で合格しちゃダメなの!」

 グレイが苦笑すると、ナタリーは改めて頭を抱える。

「……今日一日で詰め込むわよ」
「ま、それしかないかぁ」
「あはは、入るかな?」

 ナタリーとアリスと加奈が笑う。
 そして、グレイの肩をがしっと掴んだ。

 さらに――グレイが俺の肩を掴む。

「待て……俺は関係ないだろ!?」
「逃がすかよ……!」

 そうして、俺たちはナタリーアリスのしごきを受けたのだった。



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 翌日の朝。
 明日からは『王立学院』と『統一学舎』の交流会が始まる。
 今日一日は各自休むように言われていた。
 もちろん、単独行動だけは厳禁だ。
「……あのさ」
「?」
 朝食の後、グレイが神妙に口を開いた。
 その場の全員が首を傾げる。
「俺、話についていけるか?」
「……何だ。本気で気にしてたのか? 大丈夫だろ」
「そうよ。五日間だけ取り繕うくらいなら何とでもなるわ」
 どうやら交流会を上手くこなせるかどうかを気にしているようだ。
 グレイの言葉に俺が安心しろと笑いかけた。ナタリーも心配するなと続く。
「だけど……」
「そんなに心配なら小テストでもやる?」
「あ、それは良いかもね」
 食い下がろうとするグレイ。
 そこにアリスと加奈が提案した。
「あはは! それは良いねっ!
 全員でテストを受けようか! あたしが問題を作ってあげる」
 ナタリーが手を叩いて喜んでいた。
 え? 俺も受けるの?
「……嘘でしょ?」
 ナタリーが呆然と呟いた。
 ナタリーはテストの結果を何度も何度も確認している。
「ま、流石にね」
 まず、一位はアリス。
 流石は元学院主席だけはある。満点だった。
「学院代表ですからねっ」
 次はティアナ。
 三年生を差し置いて選ばれるくらいだ。順当だろう。
「まぁ、これくらいであれば」
 その次はジーク。
 連合の名家『サンデル家』の次期当主だ。教育は受けているということか。
「…………」
「…………」
 その次は俺とグレイ。
 完全に同点。ただしジークの遥か下である。
「? 良く分からなかったけど……」
 最後はフレア。
 こいつは剣だけ振って来たらしい。
「はっはっは! フレアが最下位か!」
「残念だったな! いやー、腐っても王立学院を卒業してるからな!」
 俺とグレイが調子に乗って叫ぶ。
 何しろ自分たちよりもテストの点が悪い人などいなかったのだ。
「? まあ、私は全然わからなかったけど……。
 というより、知らないことばかり聞かれた感じ」
 フレアが首を傾げる。
 あまり気にしていない風である。
「ばっかじゃないの!?」
 ナタリーが叫んだ。
「これじゃあ、交流会に参加なんて無理よ!」
「……あちゃあ、これはまずいね」
「あはは、こんな点数は初めて見た」
 ナタリーが愕然と続ける。
 さらにテスト結果をアリスと加奈が覗き込んで苦笑した。
「でも、難しかったし……」
「そうそう」
 グレイが口ごもる。
 俺が小さく援護した。
「そんなわけないでしょう!?
 自信を付けてあげようと思ってバカクソ簡単にしたわよ!?」
 ナタリーが頭を抱えた。
 アリスとティアナが小さく笑っていたのはそういうことだろう。
「……学院のレベルはこんなに低いのですか?」
 ジークがテスト結果を見て、心配そうな表情を浮かべる。
「そんなことない! こいつらが例外なだけよっ!」
 ナタリーが俺とグレイを指さした。
「いや、そんな……」
「黙れっ! どうしてフレアとそんなに変わらないのよ!?」
 俺たちが口を挟もうとした瞬間、ナタリーがさらに叫ぶ。
 こんなにも取り乱したナタリーも珍しい。
 ……よほど予想外だったのか。
 ……そんなに酷いかなぁ。
「ほら、キース。こんなところを間違えるから……」
「グレイこそ、何を言ってるんだよ? ここは簡単だろ?」
 グレイと俺が互いの間違いを指摘し始める。
 ……点数は全くの同点である。
「やかましい! どちらも同じレベルよ!
 よく学院を卒業……いや、そもそも入学できたわね!?」
「うーん、この学力だと、千回に一回の奇跡としか思えないかも。
 卒業は不正を疑うレベルだねぇ……」
 ナタリーがさらに声を荒げてアリスは首を傾げる。
 学院の卒業生だからと、最低限の学力はあると踏んでいたらしい。
「……昔から運は良くて」
「運で合格しちゃダメなの!」
 グレイが苦笑すると、ナタリーは改めて頭を抱える。
「……今日一日で詰め込むわよ」
「ま、それしかないかぁ」
「あはは、入るかな?」
 ナタリーとアリスと加奈が笑う。
 そして、グレイの肩をがしっと掴んだ。
 さらに――グレイが俺の肩を掴む。
「待て……俺は関係ないだろ!?」
「逃がすかよ……!」
 そうして、俺たちはナタリーアリスのしごきを受けたのだった。