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第四部 22話 白鬼の心配

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 白鬼は赤鬼と並んで路地を進んでいた。
 つい先ほどキース達とすれ違ったが、気が付いてはいない。

 というのも、もともと尾行を付けていたにも関わらず撒かれたのだ。
 何でも『青い小鳥が邪魔をした』らしい。

 そのせいで、白鬼でさえも居場所を把握できていない。
 その状態で遭遇しそうになったのだった。
 
 キース達からすれば、幸運に尽きる。
 すでに何とか離脱した後だ。
 
「おお! 青じゃねえかっ!」
「……こちらに来たのですね?」

 赤鬼の言葉に顔を上げる。
 視線の先には青鬼が立っていた。

「ああ。黒が言うには、どうやら『ここ』らしい」
「!? ここにいるのですか?」

 青鬼の言葉に白鬼は思わず一歩詰め寄った。
 それほどの力がある言葉だった。

「……おい、何すんだ!」
「お前こそ何のつもりだ!?」

 不意にあさっての方角から叫びが飛んできた。
 見れば、鬼たちが争っている。

 同じ鬼とは言え、もともと仲間意識は低い。
 一緒に生活していれば、揉め事は日常茶飯事だった。

「……まったく」
「ははは! こういうところは人間と変わらんな!」

 白鬼が溜息を吐いたのに対して、赤鬼は豪快に笑い飛ばした。
 白鬼は赤鬼のこういう屈折しない物言いを評価していた。

 良い悪いは知らない。
 ただ、自分にはないものだと。

「ん……」

 しかし、鬼の一匹が剣を抜いた。
 流石に白鬼の顔色が変わる。

 ――止めに入るべきか?

 一瞬迷った間に、もう一方も剣を抜いた。
 互いに一歩踏み込んだ。

 ガキン、という鋭い音。
 青鬼が二匹の鬼の剣を止めていた。

 右の長刀が上段からの振り下ろしを。
 左の脇差が横の薙ぎ払いを。

「何だ、お前……?」
「邪魔するな!」

 幹部だとは知らないのだろう。二匹は剣を斬り返す。
 今度は青鬼目掛けて剣を振るった。

「う……?」
 青鬼は一匹の腹を蹴とばすと『帰る』。

「え?」
 残る一匹の剣が空を切った。

 青鬼は戻った後、元の位置で二刀を振るう。
 両方を外側へと真横に払い――途中で止めた。

「……ぁ」
「…………」

 同時に、もう一度相手の元へと『行った』。
 剣を振り切った状態で止まった鬼の首を、長刀と脇差の刀身が挟んでいた。
 どちらも首の皮一枚の距離で寸止めされている。
 
「お前が先に抜いた。お前が先に納めろ」
「……わ、分かった」

 二刀を首筋に突き付けられて、鬼は何度も頷いた。
 がくがくと震えながら、剣を納める。

「っ…………」
 白鬼は息を呑む。

 青鬼の能力はここまで制御できていたか?
 また、身のこなしは? 判断の速度は? 反射の速度は?

 三代目になってから、動きが別人のように見える。
 自分が青鬼の姿をコピーして、同じ動きができるだろうか?

 ――だからこそ、私は心配です。

「……『鬼』を殺すな、それはダメだ」

 その真赤の魂が一際強く輝いた。
 ……生憎、見える者はいなかったが。

 らしくない青鬼を見ながら、白鬼は考える。

 ――レン・クーガー。
 ――彼がやったことはいくつかある。

 ――一つはアルバート王子を殺したこと。
 ――これは良い。私たちが仕向けた。

 ――もう一つは第二王女を逃がしたこと。
 ――これが未だに私たちの不安の種になっている。

 ――アルバート王子とミーシャ姫。
 ――この二人のどちらかが生き残る運命だった。

 ――アルバート王子が第二王女を殺害。
 ――それをきっかけに王子と姫が争い、どちらかが勝つはずだった。

 ――その運命を捻じ曲げて、両方殺した。
 ――レン・クーガーの力で捻じ曲げたのだ。

 ――だが、レン・クーガーは人知れず第二王女を生かした。
 ――ミーシャ姫が死んだ後、真っ先に第二王女を旅立たせた。

 ――あの殺人鬼はアルバート王子を殺した。
 ――だが、代わりに未だ幼い第二王女を生かしたのだ!

 ――私たちはイリオス新王国の玉座を手に入れた。
 ――座るべき人物を全て排除して奪った椅子だ。

 ――だが、別の座るべき人物が生まれた。
 ――何としても、第二王女を殺す必要がある。

 ――運命の強制力は絶対だ。
 ――玉座に座るべき『鍵』があるなら、必ず座らせるだろう。

「……そのために、どうしてもその魂が必要なのです」
 白鬼が呟いた。内心の心配を押し殺して。

 あと一人、殺さなければならない。
 新たに生まれた最後の『鍵』を。

 青鬼が言うには――王女はここにいるらしい。



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 白鬼は赤鬼と並んで路地を進んでいた。
 つい先ほどキース達とすれ違ったが、気が付いてはいない。
 というのも、もともと尾行を付けていたにも関わらず撒かれたのだ。
 何でも『青い小鳥が邪魔をした』らしい。
 そのせいで、白鬼でさえも居場所を把握できていない。
 その状態で遭遇しそうになったのだった。
 キース達からすれば、幸運に尽きる。
 すでに何とか離脱した後だ。
「おお! 青じゃねえかっ!」
「……こちらに来たのですね?」
 赤鬼の言葉に顔を上げる。
 視線の先には青鬼が立っていた。
「ああ。黒が言うには、どうやら『ここ』らしい」
「!? ここにいるのですか?」
 青鬼の言葉に白鬼は思わず一歩詰め寄った。
 それほどの力がある言葉だった。
「……おい、何すんだ!」
「お前こそ何のつもりだ!?」
 不意にあさっての方角から叫びが飛んできた。
 見れば、鬼たちが争っている。
 同じ鬼とは言え、もともと仲間意識は低い。
 一緒に生活していれば、揉め事は日常茶飯事だった。
「……まったく」
「ははは! こういうところは人間と変わらんな!」
 白鬼が溜息を吐いたのに対して、赤鬼は豪快に笑い飛ばした。
 白鬼は赤鬼のこういう屈折しない物言いを評価していた。
 良い悪いは知らない。
 ただ、自分にはないものだと。
「ん……」
 しかし、鬼の一匹が剣を抜いた。
 流石に白鬼の顔色が変わる。
 ――止めに入るべきか?
 一瞬迷った間に、もう一方も剣を抜いた。
 互いに一歩踏み込んだ。
 ガキン、という鋭い音。
 青鬼が二匹の鬼の剣を止めていた。
 右の長刀が上段からの振り下ろしを。
 左の脇差が横の薙ぎ払いを。
「何だ、お前……?」
「邪魔するな!」
 幹部だとは知らないのだろう。二匹は剣を斬り返す。
 今度は青鬼目掛けて剣を振るった。
「う……?」
 青鬼は一匹の腹を蹴とばすと『帰る』。
「え?」
 残る一匹の剣が空を切った。
 青鬼は戻った後、元の位置で二刀を振るう。
 両方を外側へと真横に払い――途中で止めた。
「……ぁ」
「…………」
 同時に、もう一度相手の元へと『行った』。
 剣を振り切った状態で止まった鬼の首を、長刀と脇差の刀身が挟んでいた。
 どちらも首の皮一枚の距離で寸止めされている。
「お前が先に抜いた。お前が先に納めろ」
「……わ、分かった」
 二刀を首筋に突き付けられて、鬼は何度も頷いた。
 がくがくと震えながら、剣を納める。
「っ…………」
 白鬼は息を呑む。
 青鬼の能力はここまで制御できていたか?
 また、身のこなしは? 判断の速度は? 反射の速度は?
 三代目になってから、動きが別人のように見える。
 自分が青鬼の姿をコピーして、同じ動きができるだろうか?
 ――だからこそ、私は心配です。
「……『鬼』を殺すな、それはダメだ」
 その真赤の魂が一際強く輝いた。
 ……生憎、見える者はいなかったが。
 らしくない青鬼を見ながら、白鬼は考える。
 ――レン・クーガー。
 ――彼がやったことはいくつかある。
 ――一つはアルバート王子を殺したこと。
 ――これは良い。私たちが仕向けた。
 ――もう一つは第二王女を逃がしたこと。
 ――これが未だに私たちの不安の種になっている。
 ――アルバート王子とミーシャ姫。
 ――この二人のどちらかが生き残る運命だった。
 ――アルバート王子が第二王女を殺害。
 ――それをきっかけに王子と姫が争い、どちらかが勝つはずだった。
 ――その運命を捻じ曲げて、両方殺した。
 ――レン・クーガーの力で捻じ曲げたのだ。
 ――だが、レン・クーガーは人知れず第二王女を生かした。
 ――ミーシャ姫が死んだ後、真っ先に第二王女を旅立たせた。
 ――あの殺人鬼はアルバート王子を殺した。
 ――だが、代わりに未だ幼い第二王女を生かしたのだ!
 ――私たちはイリオス新王国の玉座を手に入れた。
 ――座るべき人物を全て排除して奪った椅子だ。
 ――だが、別の座るべき人物が生まれた。
 ――何としても、第二王女を殺す必要がある。
 ――運命の強制力は絶対だ。
 ――玉座に座るべき『鍵』があるなら、必ず座らせるだろう。
「……そのために、どうしてもその魂が必要なのです」
 白鬼が呟いた。内心の心配を押し殺して。
 あと一人、殺さなければならない。
 新たに生まれた最後の『鍵』を。
 青鬼が言うには――王女はここにいるらしい。