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第四部 18話 連合の前

ー/ー



 フェリス達に連れてこられたのは大きな屋敷だった。
 聞けば、今はここを拠点にしてるらしい。

 ……まあ『S級』だ。
 これくらいでもおかしくはないか。

「……さて、念のため身元確認させて」
「?」

 屋敷に入る前にフェリスはそう言って、俺たち全員に一度触れた。
 一通り終わると、フェリスは頷いた。

「大丈夫。入って良いわ」
「……?」

 結局はよく分からないままで屋敷へと通される。
 さらに大広間のような部屋に入ると、フェリス達は説明を始めた。

「ごめんね。念のため、スキルを使わせてもらったわ」
「スキルですか?」

 フェリスの言葉にナタリーが首を傾げた。
 身元確認と言っていたが……。

「今『白鬼部隊』が連合からの諜報員として紛れているの」
「白鬼!?」

 フェリスがそう言うと、俺たちは皆で目を丸くした。
 白鬼って、あの白鬼か? 部隊って……。

「そっちは幹部だ」
「それとは別に下っ端がいるんだよ」
「幹部よりも条件は厳しいようだが、そいつらも化けることが出来る」

 ガロシュ三兄弟が次々と口を開いた。
 なるほど、それで身元確認か。

「……あたしたちは大丈夫だったと考えて良いですか?」

 ナタリーが注意深く訊き直す。
 むしろ味方に白鬼が混ざっていて困るのは俺たちの方だ。

「ええ、保証するわ。外見に対して、最上位の状態異常回復をかけたの。
 スキルや魔法などが姿を偽っているなら例外なく解除してる。
 ……例え神々の呪いで姿を変えられていても、すでに解かれてるわ」

 あの一瞬で、そんな高度なことが行われたのか。
 それも空振りを前提に。聖女と言われるわけだ。

 頭上でエルがぶるりと震えた。
 もしも幻覚で姿を変えていたら大事だったな。

「なるほど……ちなみに『白鬼部隊』ということは」
「ええ。他もいるわ」

 ナタリーの言葉にフェリスは大きく頷く。
 今までは一人だったが、ここからは集団で動くということか?

「『赤鬼部隊』は身体能力が優れているな」
「『青鬼部隊』はそれぞれがスキルに近い能力を持っているようだ」
「……『黒鬼』だけは一匹も確認できていない」

 ガロシュ三兄弟が補足していく。
 俺たちは聞きながら唸るしかない。

『黒鬼』の話題が出たということは、ブラウン団長が『創世記』の件を伝えてくれたということでもあるのだろう。しかし、未だ姿が見えないのはどういうことか。

「じゃあ、本題よ。まず、私たちは数年前からこの都市を拠点にしていたの」
「帝国との戦いの間もな!」「暇だったんだよ」「活躍したらしいなぁ?」

 そうか。キースになってから姿を見ないとは思ったが……。
 ラルフさんとは別行動を取っていたということか。

「……なるほど。連合への抑止力ですね?」
「ええ。私と『お調子者達』がいれば、軍を大幅に強化できる」

 ナタリーがすぐに意図を察して訊いた。
 聖女の強化と回復か。自軍に使えば百人力どころじゃないな。
 
「それは私たちがここから動けないという意味でもある。
 連合に入ってからは手助けできないわ」

 フェリスが真剣な表情で言った後、にやりと笑った。

「ま、ここまで戻ってくれば助けるわ。
 ……死んでなければ元通りにしてあげる」

「それは頼もしいですね」
 ナタリーが笑い返した。

「今、連合は『鬼』が勢力を伸ばしている。
 市民連合とは名ばかりで『鬼』の国と言っても良いくらい」

「!?」

 フェリスの口から出たのは予想以上に酷い内容だった。
 てっきり、鬼と協力していると思っていたのに。

「何それ!?」
「……フレア」

 思わず声を荒げたフレアをジークが窘めた。
 しかし、ジークも心中穏やかとはいかないだろう。

「流石に学院の生徒にまで手を出すとは思わない。
 でも『連合』を取り戻すなら『サンデル家』というより『鬼』が相手だと思いなさい」

「ありがとうございます。覚えておきます」

 フェリスの忠告にジークが神妙に頷いた。
 さらにフェリスは「次に」と続けた。

「『市民連合』というか『鬼』と戦う動きは連合各地で見られる。
 でも、突発的と言えば良いのかしら、組織立った動きはない」

 フェリスも良く分かった上で言っているのだろう。
 その組織のトップが目の前にいるんだ。動けるはずもない。

 しかし旗印として機能してしまえば、戦えるとも言っているように見えた。
 火種はあちこちで燻っているぞ、と。

「はい。ありがとうございます」

 ジークも正しく意図を読み取ったらしい。
 穏やかな笑みと一緒に頷いた。

「頼むぞ、連合を取り戻してくれ!」
「連合の酒は旨くてなぁ……俺たちはあれがないと駄目なんだ!」
「鬼が作っても、ああはならんだろうなぁ」

 ガロシュ三兄弟が豪快に笑って、ジークの背中をばしばしと叩いた。
 ジークは苦笑いしながらも「分かりました」と答えている。

「……これからどうするの? しばらくここで滞在する?
 この都市なら、ある程度は面倒みれるわよ」

 フェリスはナタリーを見つめる。
 ナタリーは顎に手を当てて考えた後、首を横に振った。

「なるべく早く連合に入ります。
 できるだけこの目で見た方が良いでしょ」

 ナタリーの返事に納得した様子でフェリスが頷く。



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 フェリス達に連れてこられたのは大きな屋敷だった。
 聞けば、今はここを拠点にしてるらしい。
 ……まあ『S級』だ。
 これくらいでもおかしくはないか。
「……さて、念のため身元確認させて」
「?」
 屋敷に入る前にフェリスはそう言って、俺たち全員に一度触れた。
 一通り終わると、フェリスは頷いた。
「大丈夫。入って良いわ」
「……?」
 結局はよく分からないままで屋敷へと通される。
 さらに大広間のような部屋に入ると、フェリス達は説明を始めた。
「ごめんね。念のため、スキルを使わせてもらったわ」
「スキルですか?」
 フェリスの言葉にナタリーが首を傾げた。
 身元確認と言っていたが……。
「今『白鬼部隊』が連合からの諜報員として紛れているの」
「白鬼!?」
 フェリスがそう言うと、俺たちは皆で目を丸くした。
 白鬼って、あの白鬼か? 部隊って……。
「そっちは幹部だ」
「それとは別に下っ端がいるんだよ」
「幹部よりも条件は厳しいようだが、そいつらも化けることが出来る」
 ガロシュ三兄弟が次々と口を開いた。
 なるほど、それで身元確認か。
「……あたしたちは大丈夫だったと考えて良いですか?」
 ナタリーが注意深く訊き直す。
 むしろ味方に白鬼が混ざっていて困るのは俺たちの方だ。
「ええ、保証するわ。外見に対して、最上位の状態異常回復をかけたの。
 スキルや魔法などが姿を偽っているなら例外なく解除してる。
 ……例え神々の呪いで姿を変えられていても、すでに解かれてるわ」
 あの一瞬で、そんな高度なことが行われたのか。
 それも空振りを前提に。聖女と言われるわけだ。
 頭上でエルがぶるりと震えた。
 もしも幻覚で姿を変えていたら大事だったな。
「なるほど……ちなみに『白鬼部隊』ということは」
「ええ。他もいるわ」
 ナタリーの言葉にフェリスは大きく頷く。
 今までは一人だったが、ここからは集団で動くということか?
「『赤鬼部隊』は身体能力が優れているな」
「『青鬼部隊』はそれぞれがスキルに近い能力を持っているようだ」
「……『黒鬼』だけは一匹も確認できていない」
 ガロシュ三兄弟が補足していく。
 俺たちは聞きながら唸るしかない。
『黒鬼』の話題が出たということは、ブラウン団長が『創世記』の件を伝えてくれたということでもあるのだろう。しかし、未だ姿が見えないのはどういうことか。
「じゃあ、本題よ。まず、私たちは数年前からこの都市を拠点にしていたの」
「帝国との戦いの間もな!」「暇だったんだよ」「活躍したらしいなぁ?」
 そうか。キースになってから姿を見ないとは思ったが……。
 ラルフさんとは別行動を取っていたということか。
「……なるほど。連合への抑止力ですね?」
「ええ。私と『お調子者達』がいれば、軍を大幅に強化できる」
 ナタリーがすぐに意図を察して訊いた。
 聖女の強化と回復か。自軍に使えば百人力どころじゃないな。
「それは私たちがここから動けないという意味でもある。
 連合に入ってからは手助けできないわ」
 フェリスが真剣な表情で言った後、にやりと笑った。
「ま、ここまで戻ってくれば助けるわ。
 ……死んでなければ元通りにしてあげる」
「それは頼もしいですね」
 ナタリーが笑い返した。
「今、連合は『鬼』が勢力を伸ばしている。
 市民連合とは名ばかりで『鬼』の国と言っても良いくらい」
「!?」
 フェリスの口から出たのは予想以上に酷い内容だった。
 てっきり、鬼と協力していると思っていたのに。
「何それ!?」
「……フレア」
 思わず声を荒げたフレアをジークが窘めた。
 しかし、ジークも心中穏やかとはいかないだろう。
「流石に学院の生徒にまで手を出すとは思わない。
 でも『連合』を取り戻すなら『サンデル家』というより『鬼』が相手だと思いなさい」
「ありがとうございます。覚えておきます」
 フェリスの忠告にジークが神妙に頷いた。
 さらにフェリスは「次に」と続けた。
「『市民連合』というか『鬼』と戦う動きは連合各地で見られる。
 でも、突発的と言えば良いのかしら、組織立った動きはない」
 フェリスも良く分かった上で言っているのだろう。
 その組織のトップが目の前にいるんだ。動けるはずもない。
 しかし旗印として機能してしまえば、戦えるとも言っているように見えた。
 火種はあちこちで燻っているぞ、と。
「はい。ありがとうございます」
 ジークも正しく意図を読み取ったらしい。
 穏やかな笑みと一緒に頷いた。
「頼むぞ、連合を取り戻してくれ!」
「連合の酒は旨くてなぁ……俺たちはあれがないと駄目なんだ!」
「鬼が作っても、ああはならんだろうなぁ」
 ガロシュ三兄弟が豪快に笑って、ジークの背中をばしばしと叩いた。
 ジークは苦笑いしながらも「分かりました」と答えている。
「……これからどうするの? しばらくここで滞在する?
 この都市なら、ある程度は面倒みれるわよ」
 フェリスはナタリーを見つめる。
 ナタリーは顎に手を当てて考えた後、首を横に振った。
「なるべく早く連合に入ります。
 できるだけこの目で見た方が良いでしょ」
 ナタリーの返事に納得した様子でフェリスが頷く。