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第四部 15話 密会

ー/ー



 ……どうしてこうなった。

 俺は急にバケット邸に呼び出されて、客間に通された。
 まあ、そこまでは良い。何度も入っているしな。

 会議などで使う部屋であることも知っている。
 問題はそこにいたメンバーだった。

 まずは当然ながらブラウン団長。
 椅子に座りながら腕を組んでいた。

 その左側にはナタリーとアリスが立っている。
 まあ、想定通りだ。呼びに来たのはピノだしな。

 ブラウン団長の正面にはジークとフレア。
 食い倒れからブラウン団長の客人となっている。
 ……仕事は続けてるらしいがな。

 問題はここからだ。組合長が座っている。
 ブラウン団長の左隣だ。不機嫌そうに荒々しく椅子に座っていた。

 もう一方の椅子には騎士団長のニナさんが座っていた。
 ブラウン団長の右隣である。忙しいだろうに。

 すぐ後ろには義妹のティアナ。不機嫌そうに俯いている。
 ……何でお前がいるんだよ!?

「あの、これは?」

 扉を開けたままで固まっていた俺だが、何とか質問を絞り出した。
 最初に返事をしたのは、意外にもニナだった。

「ティアナに泣きつかれてね」
「……? まさか、昨日の?」

 ニナが小さく苦笑した。
 ティアナが俺から目を逸らすようにそっぽを向いた。

「……はあ。私はアリスに突然書斎から連れてこられただけだ。
 いつの間にか私の家がこうなっていた。被害者の側だと思うが」

 ブラウン団長が大きく溜息を吐いた。
 アリスは楽しそうに笑っている。

 思わず感心しそうになる。
 この人を簡単に動かしすぎではないだろうか。

「? 俺は騎士団長と魔術師団長も参加する会議があると聞いたが?
 おい『悪戯娘』? どういうことだ?」

 組合長がナタリーを振り返った。
 これは完全に俺と同じパターンだな。

 フレアは明らかに笑いを堪えていた。
 ジークは苦笑い。

 無理もない。
 これが謁見以来、初めての顔合わせだろう。

「まあまあ、話を聞いて下さいよ」

 ナタリーはそう切り出すと、ティアナの話を始めた。
 俺とティアナのやり取りは散々面白おかしくやってくれた。

「キース、これは酷い」
「後で謝っておきなさい」
「……嘘だろ?」
 騎士団長、魔術師団長、組合長の三人から苦言を呈された。
 
 流石にへこむ。
 その後、ナタリーは雰囲気をがらりと変える。

「つまり、こちらの『ティアナ・クロス』が交流会のメンバーです」
「なるほどな。話を通しておこうということか」
 組合長の言葉に、ナタリーが大きく頷いた。

 確かに、今回の交流会はいつもとは違う。
 メンバーに対してもどう接するか決める必要があるだろう。

「ふむ。ちなみに、行く予定だった生徒の数は?」
「? 二人ですが……実はもう一人は選考中で」

 ティアナが首を傾げながら答える。
 未だにジークの身元も知らないのだから無理もない。

「君だけは決まったんだな?」
「はい。男女一名ずつなのですが、もう一人は辞退しました」

 ブラウン団長の念押しにティアナは答える。
 一人は辞退。それで今は再選考中か。

「なるほどな。王国と連合の関係悪化を気にしたんだろうよ」
「で、選ばれた一人は組合員の身内ですか」

 ティアナの答えに、組合長とニナは大きく頷いた。
 確かにかなり都合が良い状況だ。

「……ならば、もう一人はこちらから用意するのが良いだろうな」
「…………」

 ブラウン団長が言いながらナタリーを見る。
 おそらくは初めからこの着地点まで見据えていたのだろう。

 それからナタリーはティアナに事情を説明した。
 ティアナはジークの身分に驚いていたが、ジークは「今まで通りで」と笑っている。

「そうそう、そんな畏まらないで」
「お前は偉くないだろ」
 フレアの言葉に思わず返してしまう。
 
「話を戻すぞ。男子生徒の方はこちらで用意する、で良いな?」
 組合長が言うと、ブラウン団長とニナが頷いた。

「……今回は騎士団があまり関わっていない。
 団員から見繕っておきましょう」
 ニナの言葉に今度は他二人が頷く。

「あの、待ってください」
 そこに俺は口を挟んだ。

「? どうした」
 組合長が俺を見る。

「……ティアナが行く必要はないのではないですか。
 代理を立てるなら、ティアナの代理も用意できるでしょう?」

 緊張しながらもなんとか言い切った。
 そもそも、昨日はこれですれ違ったのだ。

「……ふむ。それは一理ある」
「確かに。学生の代わりに戦力を増やせるのはメリットです」
「俺は反対だ。本物の学生が一人もいなければボロが出るぞ」
 三人がそれぞれに意見を告げる。

「ティアナは?」
 ナタリーの小さいが良く通る声。
 
「ティアナはどうしたい?」
 全員がティアナを見る。

「……行きたいです。
 二人のために出来ることがあるのなら」

 ジークとフレアを見ながら、ティアナが言い切った。
 それが決め手だった。



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 ……どうしてこうなった。
 俺は急にバケット邸に呼び出されて、客間に通された。
 まあ、そこまでは良い。何度も入っているしな。
 会議などで使う部屋であることも知っている。
 問題はそこにいたメンバーだった。
 まずは当然ながらブラウン団長。
 椅子に座りながら腕を組んでいた。
 その左側にはナタリーとアリスが立っている。
 まあ、想定通りだ。呼びに来たのはピノだしな。
 ブラウン団長の正面にはジークとフレア。
 食い倒れからブラウン団長の客人となっている。
 ……仕事は続けてるらしいがな。
 問題はここからだ。組合長が座っている。
 ブラウン団長の左隣だ。不機嫌そうに荒々しく椅子に座っていた。
 もう一方の椅子には騎士団長のニナさんが座っていた。
 ブラウン団長の右隣である。忙しいだろうに。
 すぐ後ろには義妹のティアナ。不機嫌そうに俯いている。
 ……何でお前がいるんだよ!?
「あの、これは?」
 扉を開けたままで固まっていた俺だが、何とか質問を絞り出した。
 最初に返事をしたのは、意外にもニナだった。
「ティアナに泣きつかれてね」
「……? まさか、昨日の?」
 ニナが小さく苦笑した。
 ティアナが俺から目を逸らすようにそっぽを向いた。
「……はあ。私はアリスに突然書斎から連れてこられただけだ。
 いつの間にか私の家がこうなっていた。被害者の側だと思うが」
 ブラウン団長が大きく溜息を吐いた。
 アリスは楽しそうに笑っている。
 思わず感心しそうになる。
 この人を簡単に動かしすぎではないだろうか。
「? 俺は騎士団長と魔術師団長も参加する会議があると聞いたが?
 おい『悪戯娘』? どういうことだ?」
 組合長がナタリーを振り返った。
 これは完全に俺と同じパターンだな。
 フレアは明らかに笑いを堪えていた。
 ジークは苦笑い。
 無理もない。
 これが謁見以来、初めての顔合わせだろう。
「まあまあ、話を聞いて下さいよ」
 ナタリーはそう切り出すと、ティアナの話を始めた。
 俺とティアナのやり取りは散々面白おかしくやってくれた。
「キース、これは酷い」
「後で謝っておきなさい」
「……嘘だろ?」
 騎士団長、魔術師団長、組合長の三人から苦言を呈された。
 流石にへこむ。
 その後、ナタリーは雰囲気をがらりと変える。
「つまり、こちらの『ティアナ・クロス』が交流会のメンバーです」
「なるほどな。話を通しておこうということか」
 組合長の言葉に、ナタリーが大きく頷いた。
 確かに、今回の交流会はいつもとは違う。
 メンバーに対してもどう接するか決める必要があるだろう。
「ふむ。ちなみに、行く予定だった生徒の数は?」
「? 二人ですが……実はもう一人は選考中で」
 ティアナが首を傾げながら答える。
 未だにジークの身元も知らないのだから無理もない。
「君だけは決まったんだな?」
「はい。男女一名ずつなのですが、もう一人は辞退しました」
 ブラウン団長の念押しにティアナは答える。
 一人は辞退。それで今は再選考中か。
「なるほどな。王国と連合の関係悪化を気にしたんだろうよ」
「で、選ばれた一人は組合員の身内ですか」
 ティアナの答えに、組合長とニナは大きく頷いた。
 確かにかなり都合が良い状況だ。
「……ならば、もう一人はこちらから用意するのが良いだろうな」
「…………」
 ブラウン団長が言いながらナタリーを見る。
 おそらくは初めからこの着地点まで見据えていたのだろう。
 それからナタリーはティアナに事情を説明した。
 ティアナはジークの身分に驚いていたが、ジークは「今まで通りで」と笑っている。
「そうそう、そんな畏まらないで」
「お前は偉くないだろ」
 フレアの言葉に思わず返してしまう。
「話を戻すぞ。男子生徒の方はこちらで用意する、で良いな?」
 組合長が言うと、ブラウン団長とニナが頷いた。
「……今回は騎士団があまり関わっていない。
 団員から見繕っておきましょう」
 ニナの言葉に今度は他二人が頷く。
「あの、待ってください」
 そこに俺は口を挟んだ。
「? どうした」
 組合長が俺を見る。
「……ティアナが行く必要はないのではないですか。
 代理を立てるなら、ティアナの代理も用意できるでしょう?」
 緊張しながらもなんとか言い切った。
 そもそも、昨日はこれですれ違ったのだ。
「……ふむ。それは一理ある」
「確かに。学生の代わりに戦力を増やせるのはメリットです」
「俺は反対だ。本物の学生が一人もいなければボロが出るぞ」
 三人がそれぞれに意見を告げる。
「ティアナは?」
 ナタリーの小さいが良く通る声。
「ティアナはどうしたい?」
 全員がティアナを見る。
「……行きたいです。
 二人のために出来ることがあるのなら」
 ジークとフレアを見ながら、ティアナが言い切った。
 それが決め手だった。