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第百六十五話

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 長い、長いコンクリート製の通路。いつ舗装されたのかは不明であるが、最近できたものとは思えないほどに、じっとりと湿っていた。苔むしていた場所もあるほどであった。明かりはまばらにしか存在しておらず、不気味な通路であった。
「――こんな場所を、子供たちが……?」
「かもね。通ってどこに行ったか……そこが問題なんだけど」
 しかし、先がなかなか見えなくなるほどに距離が開いている通路は、エヴァの心配を煽っていくものであった。しのびの里から歩き続けて、すでに体感二キロ以上は経過している。どこに繋がっているかは知らないものの、ほんのり焼き菓子のような甘い香りが漂ってきていた。
「――なーんか、思惑を感じざるを得ないんだよね。こうして長い通路を歩かせて、『時間稼ぎ』をしているような、そして私たちがそれに加担させられている気がしてさ」
「……敢えて、隠し通路のありかを分かりやすくしたうえで、ってことですか」
「そゆことよ」
 忍術には、いくつかの種類がある。創作作品上では突飛な技もあるだろうが、実際の忍者が使用したとされる忍術は、大まかに分けると六つ存在する。
 体術や剣術、手裏剣術等を内包した『武術』。
 世間で有名な「読唇術」もここに含まれる、変装し必要な情報を相手から入手する『情報収集術』。
 携帯食や非常食である兵糧丸等を、自分で作る上で必須の『薬学』。
 変装の項目に片足を入れるものの、諜報に役立つ『遊芸』。
 戦術や情報戦の技術である『兵法』。
 今となっては少々眉唾に近いものもあるが、敵に錯覚を起こさせる『呪術』が存在するのだ。
「今回は、その内の『呪術』に近いものだろう。ほら、よくNARUTOで幻術とかって言われている奴だね」
「そうですか――やっぱり。以前使った『もの』に近しい香りを感知していました」
 そう、この場で二人を陥れようとしている存在こそ。現状最も近しい場所にいる存在。それは『教会』やそれ以外の要因ではない。
 二人とも、ノールックで後ろにソバットを叩き込み、すぐさま五人の『忍者』から距離を取る。
 しかし、五人いたはずの忍者は、すでに一人いなくなっていたのだ。
「――どうして、一人いないんですか」
「簡単だよエヴァちゃん。忍者といえば何かな」
 すぐさま懐からデュアルムラマサを取り出し、振り下ろされる忍び刀と頭上で交差させる。人間のものとは思えないほどに強い力であったが、本当の怪人よりは劣るもの。すぐさまはじき返し、信一郎と二人背中合わせの状態になった。
「――どうして、邪魔をするのかな、忍者諸君? 御庭番衆になれない不満があったのかな」
「そんなんじゃあない。私たちは……今の平穏を乱そうとする、貴様ら危険因子が許せないのだ」
「危険因子、ねえ。そんなに山梨の地に、いや……山梨の根幹に存在するシステムに介入されたくないと」
 部外者が介入してはならない、何かしらのムーブメント。現状、エヴァには推理材料がなかったものの、信一郎は一つアテがあるようであった。
「……以前から、英雄学園に所属する者が、情報を嗅ぎまわっているとの情報があった。それは……貴様と……もう二人存在するのだろう」
「ご明察、流石忍者。まあもう二人の正体は……まだ掴めてないだろうけど、私が関わっていることを知っているだけ、『教会』よりも情報察知能力が高いよ」
「――やっぱり、貴方の思惑には絶対裏がある。でも……今回もまた悪い目的ではなかったようですね」
「仮にも英雄学園東京本校の学園長やってないからね。悪事あるところに英雄は現れる。山梨で語り継がれる、『義賊伝説』のようにね」
 しかし、そこでエヴァには一つの疑問が生じた。当然といえば当然、一切の納得ができない部分であった。
「……なぜ、こんなことをするまで英雄の介入を拒むんですか? 現状、もし問題があるのなら……それを私たちで協力してどうにかすれば――」
「いや、エヴァちゃん。問題はそういう次元の話じゃあないんだ。この山梨に渦巻く問題は……正直他県の人間に知れた瞬間に――――次元の違う損害を被ることになるんだ」
 その発言の意図が分からないまま、エヴァは信一郎と共に迫りくる忍者に立ち向かうのだった。



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 長い、長いコンクリート製の通路。いつ舗装されたのかは不明であるが、最近できたものとは思えないほどに、じっとりと湿っていた。苔むしていた場所もあるほどであった。明かりはまばらにしか存在しておらず、不気味な通路であった。
「――こんな場所を、子供たちが……?」
「かもね。通ってどこに行ったか……そこが問題なんだけど」
 しかし、先がなかなか見えなくなるほどに距離が開いている通路は、エヴァの心配を煽っていくものであった。しのびの里から歩き続けて、すでに体感二キロ以上は経過している。どこに繋がっているかは知らないものの、ほんのり焼き菓子のような甘い香りが漂ってきていた。
「――なーんか、思惑を感じざるを得ないんだよね。こうして長い通路を歩かせて、『時間稼ぎ』をしているような、そして私たちがそれに加担させられている気がしてさ」
「……敢えて、隠し通路のありかを分かりやすくしたうえで、ってことですか」
「そゆことよ」
 忍術には、いくつかの種類がある。創作作品上では突飛な技もあるだろうが、実際の忍者が使用したとされる忍術は、大まかに分けると六つ存在する。
 体術や剣術、手裏剣術等を内包した『武術』。 世間で有名な「読唇術」もここに含まれる、変装し必要な情報を相手から入手する『情報収集術』。
 携帯食や非常食である兵糧丸等を、自分で作る上で必須の『薬学』。
 変装の項目に片足を入れるものの、諜報に役立つ『遊芸』。
 戦術や情報戦の技術である『兵法』。
 今となっては少々眉唾に近いものもあるが、敵に錯覚を起こさせる『呪術』が存在するのだ。
「今回は、その内の『呪術』に近いものだろう。ほら、よくNARUTOで幻術とかって言われている奴だね」
「そうですか――やっぱり。以前使った『もの』に近しい香りを感知していました」
 そう、この場で二人を陥れようとしている存在こそ。現状最も近しい場所にいる存在。それは『教会』やそれ以外の要因ではない。
 二人とも、ノールックで後ろにソバットを叩き込み、すぐさま五人の『忍者』から距離を取る。
 しかし、五人いたはずの忍者は、すでに一人いなくなっていたのだ。
「――どうして、一人いないんですか」
「簡単だよエヴァちゃん。忍者といえば何かな」
 すぐさま懐からデュアルムラマサを取り出し、振り下ろされる忍び刀と頭上で交差させる。人間のものとは思えないほどに強い力であったが、本当の怪人よりは劣るもの。すぐさまはじき返し、信一郎と二人背中合わせの状態になった。
「――どうして、邪魔をするのかな、忍者諸君? 御庭番衆になれない不満があったのかな」
「そんなんじゃあない。私たちは……今の平穏を乱そうとする、貴様ら危険因子が許せないのだ」
「危険因子、ねえ。そんなに山梨の地に、いや……山梨の根幹に存在するシステムに介入されたくないと」
 部外者が介入してはならない、何かしらのムーブメント。現状、エヴァには推理材料がなかったものの、信一郎は一つアテがあるようであった。
「……以前から、英雄学園に所属する者が、情報を嗅ぎまわっているとの情報があった。それは……貴様と……もう二人存在するのだろう」
「ご明察、流石忍者。まあもう二人の正体は……まだ掴めてないだろうけど、私が関わっていることを知っているだけ、『教会』よりも情報察知能力が高いよ」
「――やっぱり、貴方の思惑には絶対裏がある。でも……今回もまた悪い目的ではなかったようですね」
「仮にも英雄学園東京本校の学園長やってないからね。悪事あるところに英雄は現れる。山梨で語り継がれる、『義賊伝説』のようにね」
 しかし、そこでエヴァには一つの疑問が生じた。当然といえば当然、一切の納得ができない部分であった。
「……なぜ、こんなことをするまで英雄の介入を拒むんですか? 現状、もし問題があるのなら……それを私たちで協力してどうにかすれば――」
「いや、エヴァちゃん。問題はそういう次元の話じゃあないんだ。この山梨に渦巻く問題は……正直他県の人間に知れた瞬間に――――次元の違う損害を被ることになるんだ」
 その発言の意図が分からないまま、エヴァは信一郎と共に迫りくる忍者に立ち向かうのだった。