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第四部 6話 主人と使い魔

ー/ー



 二日後の夜。
 俺は時計塔公園近くの酒場に入った。

「おー、本当に働いてるな」
「いらっしゃいませー!」

 フレアが店内を元気に走り回っていた。
 エプロン姿で愛想よく声を張り上げている。

 ナタリーから連絡があって、フレアが働き始めたというのだ。
 せっかくだからと様子を見に行くことになった。

「あ、キース! こっちだよー!」
「お」

 ナタリーの声に顔を向けると、同じテーブルにはジークもいた。
 留守番させるわけにもいかないから当然か。
 ……まだ席に着いたばかりのようだ。

「ははは、結構馴染んでるな」
「まあ、もともと目立つ顔立ちだからね」
「……そうですね。黙れば黙るほど評価が上がります」

 ジークの言葉にナタリーがけらけらと笑った。
 ……お前、他人のこと言えるのか?

「はい! ご注文は? ……なんだ、ご飯と寝床じゃん! 違う違う。
 串焼きとベッド……違う、キースとナタリーじゃん! よく来たね! 何食べる!?」

 俺たちのテーブルに来ると、フレアは嬉しそうに笑った。
 失礼極まりない言い草だった。お前、俺とナタリーを人以外の何かだと思ってるだろ。

 それからしばらく俺たちは軽く食事を取った。
 フレアは給仕しながら時々大声で加わって来た。

「……それにしても、使い魔って良いですね」
「ぴ?」

 ジークがピノの頭を軽く撫でながら言った。
 ピノは首を傾げて見せた。

「私たちのパーティは三人……二人が使い魔持ちだからねぇ」
「…………」

 ナタリーが言い間違えた。珍しい。
 ……あの後、いつの間にかリックはどこかに消えていた。
 役目は終わったと考えているのだろう。

「いや、エルは俺の使い魔じゃないぞ」
「あはは! そう言えば私の村で拾ったんだっけ?」
「そうなんですか?」

 俺は頷いた。
 実際、俺が召喚したわけじゃない。

「ああ、こいつは俺のペッ……」
 ぺし。

 ペット、と続けようとする。
 その瞬間、エルが俺の頭を叩いた。

「発言に気をつけなさい。
 一歩間違えれば血を見るわよ」

 脅された。
 しかも声は俺にしか聞こえないから性質が悪い。

「友達……」
 ぺし。

「相棒……」
 ぺし。

「協力者……」
 ぺし。

 俺が答えるたびにエルが俺の頭を叩く。
 ……降参だ。正解を教えてくれ。

「私はあんたの主人よ」
「!?」

 お前、そう思ってたのか!?
 関係性が噛み合わないわけだ。お互いが自分を主人だと思っているんだから。

「……主人」
 なでなで。

 そうか、俺……躾けられてたのか。



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 二日後の夜。
 俺は時計塔公園近くの酒場に入った。
「おー、本当に働いてるな」
「いらっしゃいませー!」
 フレアが店内を元気に走り回っていた。
 エプロン姿で愛想よく声を張り上げている。
 ナタリーから連絡があって、フレアが働き始めたというのだ。
 せっかくだからと様子を見に行くことになった。
「あ、キース! こっちだよー!」
「お」
 ナタリーの声に顔を向けると、同じテーブルにはジークもいた。
 留守番させるわけにもいかないから当然か。
 ……まだ席に着いたばかりのようだ。
「ははは、結構馴染んでるな」
「まあ、もともと目立つ顔立ちだからね」
「……そうですね。黙れば黙るほど評価が上がります」
 ジークの言葉にナタリーがけらけらと笑った。
 ……お前、他人のこと言えるのか?
「はい! ご注文は? ……なんだ、ご飯と寝床じゃん! 違う違う。
 串焼きとベッド……違う、キースとナタリーじゃん! よく来たね! 何食べる!?」
 俺たちのテーブルに来ると、フレアは嬉しそうに笑った。
 失礼極まりない言い草だった。お前、俺とナタリーを人以外の何かだと思ってるだろ。
 それからしばらく俺たちは軽く食事を取った。
 フレアは給仕しながら時々大声で加わって来た。
「……それにしても、使い魔って良いですね」
「ぴ?」
 ジークがピノの頭を軽く撫でながら言った。
 ピノは首を傾げて見せた。
「私たちのパーティは三人……二人が使い魔持ちだからねぇ」
「…………」
 ナタリーが言い間違えた。珍しい。
 ……あの後、いつの間にかリックはどこかに消えていた。
 役目は終わったと考えているのだろう。
「いや、エルは俺の使い魔じゃないぞ」
「あはは! そう言えば私の村で拾ったんだっけ?」
「そうなんですか?」
 俺は頷いた。
 実際、俺が召喚したわけじゃない。
「ああ、こいつは俺のペッ……」
 ぺし。
 ペット、と続けようとする。
 その瞬間、エルが俺の頭を叩いた。
「発言に気をつけなさい。
 一歩間違えれば血を見るわよ」
 脅された。
 しかも声は俺にしか聞こえないから性質が悪い。
「友達……」
 ぺし。
「相棒……」
 ぺし。
「協力者……」
 ぺし。
 俺が答えるたびにエルが俺の頭を叩く。
 ……降参だ。正解を教えてくれ。
「私はあんたの主人よ」
「!?」
 お前、そう思ってたのか!?
 関係性が噛み合わないわけだ。お互いが自分を主人だと思っているんだから。
「……主人」
 なでなで。
 そうか、俺……躾けられてたのか。